富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十月十三日(水)晴。朦霧。来月の関西での旅行につきいくつか通常の旅行では訪れられぬ場所あり畏友らのツテでどうにか参観許可得るべく手を打つ。来年の旧正月の旅行も先日フィリピンのあるリゾートホテルに予約入れたが今回は日本より両親招こうかと手続きしたものの父の養生要しこの親孝行の真似事は頓挫、予約満杯のリゾートにてすでに前金どころか宿泊費全額の支払いも済ませており取消し変更はいかなる理由であり返金なしと念押されていたが事情をばメールで説明し取消しをば請えば返事あり取消し承認の上に“We wish your father well”とあり忝き上にその言葉に思わず感無量。早晩にジムで鍛錬。帰宅してチゲ鍋。『世界』十一月号の特集「ブッシュか、反ブッシュか」の特集で佐藤学氏(沖縄国際大法学部教授)の民主党の誤謬の分析が秀逸。民主党は今回の大統領選挙が2000年のイカサマ選挙の復讐とブッシュ憎悪でブッシュ以外なら誰でもいいという感情をば党外の一般有権者も擁いていると誤解しており『華氏911』の映画ヒットや紐育での共和党大会に合わせての反ブッシュデモなど追い風と思ったが実は勘違いでそれが中間層市民の支持を獲得する上で逆効果、と佐藤氏。真っ当な言葉も英語ですら話せぬブッシュが敢えて愚鈍さをば定評として米国の反知性主義の伝統の中でリベラル文化人をば民衆の敵といふ位置づけに成功しブッシュは自らを親しみ易い庶民の仲間と演出。本来であれば米国社会はマイノリティ層が高学歴化する中で社会進出し彼らが民主党の指示母体となると思えば必然的に民主党の支持が増えるのだが、その環境に甘んじた民主党に対して共和党がブッシュといふ愚鈍な領袖を得て政党支持構造すら変えようとしているのが現状。今回の選挙はそういう意味で米国の健全であった二大政党制にとってかなり悪影響もあろうか、と。御意。結局は今回の選挙で明らかなように民主党が反ブッシュといふ以外に、かつての日本社会党反自民でしかなかったのと同じく、実はその甘さが保守政権政党をば扶助する政治の仕組み。
仏蘭西志らく大統領の訪中。本来なら心の故郷・東京に立ち寄りたかっただろうが、実はまたお忍びで一泊か、新宿は東京医科大の裏の富久町の路地をちょいと入った横丁の、この季節、玄関の傍らに無花果と巵子の小さな鉢が置かれた仕舞た屋の鄙びた一軒家、「志楽」なんて表札かかり、昔は神楽坂でちょいとは名の売れた芸妓上がりの、女優でいへば澤村貞子似の婦人が住まふ。そこにだいぶ宵の闇も深まった頃に一台のタクシーがすーっと現れ車から降りるはシラク大統領、車の音に気づき玄関の扉開けた姐さんが「あら、アンタ来たのかい」なんてね、いいねぇ。だが今回は大好きな大相撲もなしでお気に入りの(と勝手に決めつけているが)寺尾の土俵を見れもせず。で中国にとっては「日本に立ち寄り」は中仏のメンツにかかわりもあり東京立ち寄りは断念か。ところでシラク大統領を横綱審議委員会の委員長に。で相撲協会理事長は寺尾で決まり。あの二人、実の親子ぢゃないかい?、よく似てるねぇ、なんてね。
▼漫画家本宮ひろ志氏の週刊ヤングジャンプ連載の『国が燃える』が旧日本軍が南京で市民を虐殺する様子を描き「真偽不明の写真を使っている」などの抗議を地方議員のグループや読者から抗議あり暫時休載の措置(朝日)。本宮君といへばその漫画の立志っぷりだの気概だの寧ろ保守反動右翼の諸君にウケよき作品あり、その人ですらこれ。では逆に保守反動右翼の諸君が「南京大虐殺はなかった」といふ主張をば漫画にした場合、左翼や市民団体の抗議受け連載中止となるか、といへばならず。これがファッショ社会の現実。
西武鉄道絡みの有価証券報告書での虚偽報告の責任とり堤二世がコクドや西武鉄道などグループ企業や西武ライオンズのオーナー職、日本オリンピック委員会名誉会長など辞任。朝日には「西武鉄道の虚偽記載、株主軽視に厳しい批判」などと見出し踊るが練馬産の大根運んだ鉄道屋から戦後の新興財閥に成り上がった親から継いだ財産資産で会社経営のオーナー堤二世にとって株主軽視など指摘されてもピンとは来まひ。

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