富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

九月廿二日(水)晴。晩にHerbie HancockWayne ShorterDave HollandにドラムがBrian Bladeといふカルテットの演奏会あり。演奏会前にこれに参られる四氏と尖沙咀で食事済ますこととなり「尖沙咀の」Jimmy's Kitchenにて晩餐。メニューは中環や店の内装はの本店と同じだが中環の問題多き給仕長に比べこの尖沙咀店の給仕長のなんと温情あふれる接客の良さか。見事。ドライマティーニムール貝、サラダに肉料理と秀逸なる生チョコのデザート。ムール貝は昨年の秋に巴里で堪能し香港の魚市場にて大ぶりのムール貝など見ても食欲もわかず。だが今晩のムール貝は小ぶりで牛酪ソースも十分に堪能。Z嬢と香港文化中心の会場で待ち合わせる。Herbie HancockWayne Shorterは昨年香港芸術祭でも前衛な演奏あり今回は七十年代のフリージャズ彷彿させる演奏にすでに還暦すぎし二人のジャズの名匠は喩えれば地平線の彼方にあって未だ陽光まぶしき太陽の如し。曲のいくつかはジャズのスタンダードでも演奏はそれに回帰せず更に未来志向。不安定な時代の中に黄泉をば見出す。けして今更目立とうともせぬハンコックの威厳漂ふピアノ、「老人力」のWayne Shorterのサクスの音色は拝みたくなるほど。若手のがBrian Bladeが見事なドラム二人を煽る。ところで文化中心のコンサートピアノはSteinwayのはずがステージ上にはFazioliなるイタリア製のピアノ。ハンコック先生のまさか一晩のための持ち込みか、とすら疑ったがハンコックがこのピアノ好み香港の代理店よりの調達と知る。音色は非情に個性ありハンコックの演奏では、そう言ってしまふと陳腐だが電子ピアノのフェンダーローズ的な幻想的な音の丸みもあり。ピアノの演奏をば見るためにステージ下手かステージ左の壇上席によく座るが演奏前にステージに出て参った四人が観客の拍手と声援に手を挙げてこたえるなかハンコックが殊にピアノの背になるこちらにとくに大きく手を振ったようにも見受ける。演奏中ずっと背を向ける客への愛想かも知れぬがみずからのピアノ弾く指動まで見たい客がこちらに多いと知ってのことかも。余はジャズ聴くようになった頃にはすでにWayne Shorterジョー=ザビヌルとウェザーリポート組んでおり数年後にHerbie Hancockがフューチャーショックで電子音楽全盛。マイルス=デイビスと二人がそれぞれ組んでいた頃のLPをば貪るように聴く。その二人がこうして今、目の前にて組んでの演奏にいたく感動するばかり。ちなみにこのツアーは東京ジャズ2004の公演終わっての、ジャズによくある「東京でギャラもらって香港立ち寄り」なり。

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