富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

九月廿一日(火)快晴。晩にジム。二日続けて運動できるだけどうにか体力回復。遅晩に落雷豪雨あり。先日書斎整理して雑誌などかなり捨てたが『噂の真相』廃刊となりバックナンバー捨てるに惜しいようにまだ既刊だがやはり数年分捨てられなかった『世界』の十月號半ば読む。東京都の「再発防止研修」といふ題に何かと思って読めば件の日の丸君が代での学校長による「職務命令」に「違反」し「処分」された約二百四十名の教員に対する「服務『事故』再発防止研修」実施されたことのレポートで、この研修にはその処分対象の教員とそれが所属する学校の学校長も参加。夏休みの部活動の合宿指導できずに参加した教員もおり、生徒の中にはみずから都教委に電話で顧問教師の研修日程の調整を求めた者もいたそうだが(これも都教委にすれば教師による扇動か……)電話に応対した都職員は「先生は大切な研修があるのだよ」と答えたそうな。教員にとって生徒指導より大切な研修。研修場所の廊下には都職員の他にガードマン六人が配置され、提出義務づけられた研修の報告書は「内容何如によって研修修了か否かの基準になる」と担当者が宣ひ、だが実際には研修内容は国旗国歌論争避け法務観察課の課長が地方公務員法に基づき義務、禁止、制限などの規定について説明。この研修の受講者は職務命令に従わぬ違反と信用失墜行為の違反者扱い。服務事故により懲戒処分になった場合の免職、退職金没収、年金減額などについて説明。結局「だから命令には従ったほうがいいですよ」といふ、まことに情けなき様。こんなことしている暇が今の教育界の何処にあるのだろうか。だから憂慮する親は(公立学校教員も含め)子供を私立へと入れ公立校離れが助長される。ところで信用失墜行為って都知事には適用されないのだろうか(笑)、国内でも非難多いが特に国際的に東京都及び日本国への信用を失墜させた、と。
▼築地のH君より読売新聞の「社説」が久々に面白いと報せあり。抱腹絶倒、と。普段から余は読売の社説など不愉快唖然感じるばかりで「私は読みません、讀賣新聞」だし、ナベツネが主犯の騒動であるから「まさか読売が社説で取上げまひ」と思っていたのが大間違い。で一読してみれば(こちら)「不毛なストに突入した」と書き出しから(笑)。球団経営会社の新規参入について経営基盤のしっかりした会社であることが条件であるがゆへ審査は慎重に、といふのはその通りだが、経営基盤がしっかりしていれば無条件でいいかといへば読売新聞社見れば「経営基盤しっかりしているからゆへの傍若無人ぶり」もあり。「試合を拒む選手の背中など子供たちに見せたくないのだ」などと理屈の説明に子供持ち出すのは新聞への読者の投稿ならいざ知らず大江健三郎君の「せめて子供を」もそうだがプロの書き手にとって子供起用は余りにも拙い修辞に他ならぬ。寧ろ「試合を拒む選手の背中を見て世の中にはいったいどんな問題があるのか」子どもらも学べばよし。野球がたんなるスポーツに終わらず社会学習の一翼荷うことに何の問題があろうか。これを「会社の命令を拒む父親の姿など……」と置き換えることも可。ようするに読売の社説は管理者側に逆らうことを否定するだけ。この社説とて誰が書いたのか知らぬが「書けと言われた論調で社説も書けぬ論説委員など……」か(嗤)。教員だろうが新聞記者だろうが、はたまた野球選手まで組織に抵抗どころか素直に疑問呈した者に対する単なる否定。この程度の知力で日本一の発行部数誇るとは。そもそもH君の指摘する通り讀賣新聞が巨人軍オーナー会社として今回の騒動で自らが当事者でありながら「社会の公器」たる紙面を利用して労使交渉の一方の当事者を公然非難することが倫理的に許されか。この社説に対してはテレビのワイドショーまでもが「報道機関としてあるべき姿なのか、猛省を促す」と公然と批判したそうで(こちら)、世論を窺ふには敏な小泉三世ももわざわざ米国からテレビカメラの前でプロ野球経営側に厳しいコメントとか。総理大臣・経団連会長・日銀総裁すら支援しようにもできない経営側の醜態。とくにオリックス宮内君は本来「規制緩和」「構造改革」の旗を振ってきたわけで、老害ナベツネ土建政治の巨魁・堤二世らと企んだ今回の陰謀劇は、とんだ茶番、とH君。御意。「正義を拒むナベツネの厚顔など子供たちに見せたくないものだ」とつくづく思ふ。一方「古田会長の決断の本質。それは、天皇がいなくなった野球の国の荒野に、真の共和制をつくるための第一歩である」とゆう論評も現れている(こちら)。
▼八五年に香港島寶馬山で十代の男女二人殺戮あり犯人のうち三人は死刑判決(のちに無期懲役)あとの二人は十八歳未満で「等候英女皇發落」“Detained at her majesty's pleasure”の扱い。それが97年香港返還にて「等候董建華發落」となるが少年犯(しかも主犯に従ひ犯行補佐)の実質的無期懲役について家族らが刑期の決定を求め街工派の立法会議員梁耀忠氏(ランナーでレース参加では余といつも同じペースで走られる)らの支援活動で社会的関心集め『等候董建華發落』といふ映画になる(余の日剰〇一年五月六日に記述あり)。九八年に李國能大法官(最高裁長官に該当)が判例に則り董建華長官が最低二十年の刑期を定める可能性を示唆したが〇二年には裁判所は香港基本法第八条「香港の従来の法律(略)は、本法(=基本法)と牴触するか、あるいは香港特別行政区立法機関が改正したものを除いて、保留される」により「等候英女皇發落」について裁判所が刑期の決定することは基本法に違反と裁定。今年七月に立法会で刑法改定が通過し「等候英女皇發落」も刑期決定が可能となる。これによりこの「等候英女皇發落」で刑に服していた廿五名の者のうち、まず唯一の未成年犯であった今年三十五歳の彼は中秋節の数日前に出所と決定。少年犯罪について実名報道だの実刑求めるなど日本では刑の見直しなど盛んだが、この事件の場合は被害者の親までが服役者の釈放の嘆願に加わるといふ出来事なり。今年の中秋の月はこの三十五歳にどう映るか。

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