富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

八月三日(火)快晴。Z嬢と大嶼山(ランタオ島)に遊ぶ。高速フェリーに乗らず連絡船で梅窩。長沙下村の海岸。南アフリカ料理のThe Stoepも平日は閑散とし店の前の海岸の木陰に憩ふ。羊肉焼やジャガイモ、鰯焼など食し焼きたてのパンも美味。白葡萄酒イタリアのPinot Grigioを飲み微睡む。ブラッドベリの『華氏451度』読む。早川文庫のこの和訳の文章(宇野利泰訳)実に良し。夕方バスで梅窩に戻り連絡船を待ち波止場のパブでBoddingtons飲む。乗船し二階の後部甲板席に坐ればランタオ島の背景に強烈な夕日を浴びて『華氏』読了。四半世紀ぶりの再読。テレビに象徴される映像メディア、余自身は四半世紀前はテレビ漬けも今では日にニュース番組を三十分見る程度。テレビ映像は恐ろしくわかりやすく楽しく、だからこそあまりに容易に受入れてしまい書籍のように読返したりの反芻もなく怖いところあり。あとがき(福島正実)読み華氏451度が摂氏220度で紙が引火で焼ける温度だと今になって識る。1967年に日本で封切りとなったこの作品のフランソワ=トリフォー監督による映画も見ておらず。書籍、そして書籍にもまして記憶の大切さ。記憶が大切だが記憶できぬから綴ることの大切さ。忘却を惧れれば書き続けるしかなかろう、と改めて日剰の記述をばこれも大切か、と感じ入る。ところで物語のなかでオルテガ・イ・ガゼットがさらりと語られるが『大衆の反逆』も実は読んでおらぬこと今になって思い起しMcLuhanの“The Gutenberg Galaxy”も書棚で読まれるを長年「待ち」の状態にあり余生でどれだけの書籍読めるのかなどと夕日眺めつつ。船が香港島に戻れば西環に中聯辧の高層ビルあり(写真)。周囲のビルに囲まれ陸地より意外と目立たぬ中国政府の中央政府駐香港連絡弁公室は文字通り中国政府の香港特区の出先機関。返還前は新華社がこの役担ったが返還後ここに総部移り最近は対中央の抗議デモなど目的地は此処。それにしてもダサい設計。上海とかに多い(上海はあのテのビルの乱立と上海タワーのダサさで埔東の景観台無しだが)いかにも中国の未来主義っぽさ。なぜビルの頂上に円球をば戴せるのか。手塚治虫の漫画の影響だろうか。中環の超高層ビルからかなり距離が離れ相対的に見られぬだけ恥さらさず。すっかり快晴に恵まれ太陽の光と景色堪能の一日。中環の波止場より帰宅のバスに乗れば尖沙咀のビルの向うに没む夕日は大きくバスの二階席が橙色に染まるほど。

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