富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

七月三日(土)雷鳴に眠り邪魔されたは午前二時すぎ。降雨となり明け方に強まる。終日小雨あり。朝起きてテレビつけるとイラクでの軍事法廷フセイン氏登場。態度傲慢粗言穢語と新聞には書かれているが瘠せてイスラムの学者然とした風貌でもあり「本当の犯罪者はブッシュだ」といふ主張にフセイン氏ぢたいの功罪は別として、その主張に間違いはなし。少なくとも東京裁判よりも被告の言分は真っ当かも。昼よりジム。午後九龍に薮用済ませ早晩に再びジム。FCCに参る。独りアイリッススチューで夕餉。ハイボール三杯。ここ数日のとくにデモ関係の新聞溜っていたを読む。土曜の晩に遊ぶ友人も思いつかず独り夜な夜な歴史探究の旅と称し蘭桂坊のかつてブリブリと遊んだ酒場などいくつか訪れる。以下、ここ数日の新聞より覚書き。
▼今後の政局について。九月十二日の立法会選挙については民主派圧勝といふ予測高まるが民主派自身は依然最高で二十九議席の分析を変えず。下手な楽観で票離れ防ぐ算段か実際には中間派議員の民主派への鞍替も期待か。財界基盤の自由党は選挙後の行政会(内閣)に民主党党首なども加えるべきと主張。実際に無理でも民主党から推薦の第三者を行政会議員とすることは可能であり、このぶんでゆくと政界の青蛙・李鵬飛氏あたりが適任かも。李鵬飛氏は返還前のこの行政会の首席議員の過去もあり。李鵬飛氏といへばデモ当日には基督教団体の主催するビクトリア公園での弥撤に参加。この弥撤に参加はカソリック香港教区主教・陳日君、支聯会主席・司徒華、民主党・マーチン李柱銘、壱媒体(蘋果日報)社主・ジミー黎智英に李鵬飛のそろい踏み。この面子が一堂に会し「誠意をもって普通選挙実施すべし」の横断幕掲げる光景など数年前まで想像も難し。
▼デモ当日の主催者の募金活動88万ドルと昨年の五割増。昨年に比べ景気好転ゆへか。
▼「還政於民」(政治を市民に戻せ!)といふスローガンについて信報に指摘あり、この語の感受に些かの差異あり、香港にとっては、この言葉に托すは民選制の確立、普通選挙実施であるとか世論重視といった具体的な民主主義の標榜であるのに対して中国ではこの語が反共産党的なる意味と解釈され国家転覆といふ危惧にまで至ること。政治を市民に=反共産党といふ感覚こそ、つまりは共産党が人民より乖離していること共産党自身の自覚か(笑)。
▼その「還政於民」はデモでは「言わぬ」ことになってはいたが実際にはやはり出ぬはずなきスローガン。五四運動の「長毛」梁國雄君の人気高く長毛君「董建華!」と叫ぶと周囲のデモ参加者が「下台!」と昨年と同じ光景あり。気温34.9度の高温で長毛君もデモしつつ西瓜頬張り水分補給。「董建華!」と叫ぶと他が「下台!」という間に西瓜ムシャムシャとか。昨年に比べるとデモにこれだけの余裕あり。昨年の槍玉が董建華、保安局長・葉劉淑儀と民建聯の曾玉成であったのに対して、今年は全人代常委の曾憲梓(ネクタイ会社社長で中国国内での贈賄で有罪判決の過去あり、だが熱烈なる中共支持で全人代常委にまで就任)と全人代香港代表の烏β維庸、そして何といっても行政会議員の梁振英。この三人への非難のプラカードや人形などかなり多し。測量士出身の梁振英、かつては香港の若き政治エリートの象徴にて次期行政長官の期待高かったが相次ぐ董建華及び中共擁護の発言と政治姿勢にすっかり支持下がり行政長官就任は董建華以上の不信任は確実。
▼デモのプラカードに傑作少なからず。「愛中国?熱烈! 愛香港?当然! 愛共党?看政績 愛専制?免了?我不願為奴」と。中国は熱烈に愛し香港を愛するは当然、共産党が好きかどうかは政治業績看ての話、専制が好いかって?ご免だね、奴隷にはなりたくない」
▼デモで警察発表二十万人に対して主催者側五十三万人と集計の内訳の説明が主催者側よりあり。警察はビクトリア公園から中環に向けてのデモを当初十七万人と発表。主催者側はこの十七万人は二時半に公園出発し四時に中環の政府総部に到着の隊でありそれから最後の隊が総部到着の八時までに大きな隊3つあり故に五十一万人に途中参加で終点に至らぬ者二万人と推定しそれを加えての五十三万人と。実際に灣仔にて集計試みた団体によると何度かの四分間での通行量から全体を推測した結果三十万人は実際に参加とか。
▼デモ当日、中国国内に住む香港市民が「白いシャツ」着て深センより香港に入境しようとしたところ中国側のボーダーにて香港に戻る目的だのの尋問あり、とラジオ番組に聴視者が語る。
▼中国でインターネットサイトの検閲及び管制のみならず携帯電話でのメッセージ通信も敏感に。昨年のSARS期には3億台の携帯に政府の防疫情報流すなどの活用もあったが今年の六四にて反政府言動の流布があり中国政府は今後の携帯の普及見越し何らかの規制に乗出す、と。
▼俳優マーロン=ブランド氏逝去。驚くは笠智衆の如き老けぶり。映画「ゴッドファーザー」が四十九歳だったとは。
▼この一年間でのゴミや煙草吸殻のポイ捨て、嘔唾や狗糞の不始末などにて検挙された者二万人。一人あたりHK$1600の罰金だと思うと実に三千二百万ドル(5億円強)の政府収入。それをそのまま衛生環境の改善にまわせばいいが高官の厚遇に消えているかと思うと忸怩たる思い。
▼SCMP紙にLinda Andersonといふ人の印度ダラムサラからのチベット難民についての文章あり。中国政府は印度に亡命中のチベット人に対して帰国促し禁固といった措置とらぬとしているが何故彼が亡命しているか。勿論チベットでのチベット仏教への中国政府介入によりダライラマぢたいが住ふダラムサラチベット人多く政治亡命するのは事実だが、政治的理由の次に多いのが「教育」である、と。チベットにいてはロクな教育が受けられずダラムサラならチベット独自の教育の他に英語圏からの僧がおり英語学習から実際の印度人社会での生活や観光客相手の仕事で英語も上達が可。チベットにてロクな教育受けられぬといふのは中国政府にしてみれば心外であり、チベット「解放」このかたチベットでの教育環境整備こそ重点政策、しかもチベット民族の尊厳活かす教育を、と反論しようが、中国政府の持込む教育にて英才いれば最終的には北京の最高学府に進む、つまりは「漢化」以外の何ものでもなし。それを嫌えば勉学の途閉ざされると思えばダラムサラからなら英米の最高学府にチベット関連の奨学金使って留学も可なら、どちらがチベット人にとっての選択かは明白。国家が教育をば施すことの意味ここに露見される。
▼中国のダイオキシン排出量はが昨年は2160万トンとついに2000万トンの大台記録。05年に1800万トンに抑える予定など所詮不可能。中国の経済発展=日本だの世界経済に寄与だが、一面、中国の経済発展といふのは地球環境にも影響多大。日本など小国の経済成長ならせいぜい国内の公害病だが、このダイオキシン、国内の電力消費増加での石炭による発電だの、中国の経済成長が地球自然環境の問題に至る。

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