富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

六月廿四日(木)外務省の中国専門家として屈指の碩学S氏の発言聞く機会あり。或る会合での挨拶でほんの十分に満たぬ話ながら内容実に豊富で含蓄あり。日本と中国の間の経済関係がすでに峠越えたのか限界に来ているのか今後の発展今後も期待できるのかにつき一つの指標として紹介するはS氏信頼おく北京の某経済研究所の研究員氏の分析紹介で日中間の貿易量を現在と一九四〇年当時で比較した場合、日本の中国侵略という状況下ではあってもこの貿易量が(台湾と満州を除く)経済規模だの貨幣価値など換算した場合に当時は現状の約3倍規模であることを紹介し日中間の経済協力が緊密化した場合にまだ発展の余裕あり、と。但し問題はリスクであり日中間でのリスクが常に反日感情だの中国差別といった感情的なものに起因すること。つまりこういった国民感情的なリスクを回避することができれば日中間の経済協力などまだ積極的に推進が可能、と政府官僚らしいといへばそれまでであるが、この感情リスクをば真摯に越えようとする冷静さがS氏より感じられ拝聴に値す。
朝日新聞の「深い潮目(下)」に一昨日の小林信彦氏に続き文藝春秋誌の元編集長・半藤一利氏が一文与す。文藝春秋が三月号にて特集せし自衛隊派遣に関するアンケート読んだ半藤氏「これは満州事変だよ」と呟いた、と。賛成と反対が十六と十五でほぼ同数で「ちちらとも言えぬ」が六名。既成事実となったゆえ今更引き返しもできずの賛成だのどちらとも言えぬ、で不拡大方針など吹っ飛ぶでは昭和初期の当時と同じ。現実に照らし原則論だの理想論は通じずと世論の妥協。PKO協力法での自衛隊柬埔寨派遣から十二年にて半藤氏曰く「自衛隊正真正銘の占領軍の一角を占め」多国籍軍の一員となるまでの変貌は「違憲に目をつむっている」ことも含め話の平仄が合いすぎる。有事関連法案もロクな議論なきまま国会通過して現状に合わせるため具体的な国防、有事の緊急事態に対処すべき憲法への「改憲論が一層喧(かまびす)しくなろう」こと。当時の日本人が大きな昭和の転換期にあったことを自ら理解しておらぬのと同様のことが今の我々にあり……と文藝春秋の元編集長が警笛鳴らすほどの深刻さ。だが日々の平和にボケて国民の多くはそれを理解せず。南無阿弥。

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