富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

五月十二日(水)曇。早晩にHappy Valleyの日本料理・慕情。赤貝と〆め鯖を肴に加賀の福光屋純米酒を燗で二合。Happy Valley競馬場にて競馬観戦。レースでの抗議続きでレース遅れ気味、レースの合間に雑誌『世界』読む。三更に小腹空き銅鑼灣の何洪記に往きカレー牛南麺注文せば女給一瞬たじろぎ何かと思えば麺や粥のほか殊に「金牌」と誇るカレー牛南飯にて馳名の店ながらカレー牛南「麺」はメニューになし。だが「HK$29でいいわね?」と確認のうえ注文は厨房に通り供された上湯麺に別添えの牛筋カレーかけて食す。美味。『世界』六月号読了。
▼『世界』の公明党創価学会の特集、マトを得ず。中道にて平和標榜する政党が自衛隊イラク派遣については自民党よりその派遣支持高いといふ数字などの分析は興味深いが「なぜか?」といふ理解足りず。創価学会の海外での活動見ればわかる通り平和は傍観にあらず積極的なる寄与が彼らの高き意識。公明党についても創価学会の信者数が五百万人から八百万人に六割増したら公明党議席数が六割増するかといえばさに非ず。そういう意味では公明党が力つけたといふより自民党が絶対多数を掌握できず且つ二大政党制にならぬ政治状況「ならでは」の公明党の位置。中道左派の弱体化のなかで平和主義であるとか民生向上など掲げ教育基本法改悪反対などで中道左派票の獲得も本来の政治政党であれば可能なのであろうが、浜四津敏子参議院議員愛国心容認の発言も自民党にとっては喜ばしきところ、政治政党としての「発展」は竹入元委員長、矢野元書記長の言を待たず限界ありか。編集後記にて編集長曰くイラクの日本人捕虜「事件」について様々非難もあるが彼らが解放され伊太利亜人人質が殺されたのは伊人が米国系の民間「警備」会社(実際には公安の如し)の社員であったのに対して日本人三名がそれぞれ何らかのかたちでイラクの米国による成敗といふ現状の改善に協力しようとした人たちであるからイラクの者がそれを知り尊重した上で解放されたのであって、解放されたのは人質となった彼ら自身のやってきたことの評価である。また、イラクでの日本の評価もこれまでの外交だの企業の努力の積み重ねであり、人質となった彼らもNGOなどで活動に協力する者は現行憲法の生んだ世代なのであり、それを評価すべき、と。
▼築地のH君より産経新聞が昨年ケン=ローチ監督に世界文化賞授けた快挙に続き核問題、原発イラク劣化ウラン弾被害や沖縄の基地問題など写し世に問うてきた写真家・森住卓氏に対して森住氏の著作『私たちはいま、イラクにいます』講談社に対して第51回産経児童出版文化賞に選び(こちら)森住氏がそれに対して「イラク戦争やこの間の産経新聞の論調は日本政府やアメリカサイドの報道に偏り、イラクの独立のために抵抗している人々をテロリストと呼び、アメリカの戦争に協力的です。イラクのこどもたちの事を描いた本が賞をもらうことはとても嬉しいことですが、この新聞社からもらいたくないと言うのが率直な私の気持ちです。」「イラクの子どもたちの写真は、悲惨な戦争のなかでも、それを乗り越えてたくましく生きていました。彼等は無法なアメリカの侵略戦争を身をもって告発していました。空爆された跡に立つ少女や劣化ウラン弾の影響と思われる白血病の少年がじっと見つめる瞳はこの戦争を止められなかった大人たちの責任を静かに追及しているようでした。この戦争を産経新聞社はどのように伝えたのでしょうか?日本政府のこの戦争に加担する姿勢を一度でも批判したのでしょうか?この賞を受けてしまったなら、イラクの子どもたちに2度と顔向出来なくなってしまいます。」と受賞拒否。天晴れ。産経新聞社事業部は「コメントは差し控えたい」(共同通信)と(笑)。こともあろうに森住卓に賞を出そうと産経で誰が考えたのだろうか。H君の推測は末端の担当者は確信犯で「社の上の連中はバカだから、どうせケン・ローチ森住卓も知らねえだろう」と申請、だとしたら気づかずメクラ判押すほうがわるい。それにしても産経新聞読者諸君、ケン・ローチは気づかぬだろうが今回のはバレる。賞返上し他紙で報道されちゃあ「なぜ森住のような反日分子に賞を出したのか。見識を疑う」というような抗議の投書が殺到するとか。ところでH君の指摘で確かにそうだが、御用学者御用ジャーナリスト御用文化人というのは数許多いるがですが個人の名前で勝負する写真家で御用写真家というのは見あたらず、と。確かに。筆の力はどうにでも曲げられるが、レンズに映る真実はいつも一つということか、とH君。

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