富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

五月初二(日)朝席の高座の代役請はれ北角。正午に終わって街路に立てば五月晴れ通り越して酷暑の快晴。気温摂氏三十度。島南に往き実に半年ぶりかで海浜大西巨人神聖喜劇』読む。炎天下木陰にて麦酒三罐。帰宅。今年初物の枝豆で恵比須麦酒。冷奴、茄子焼に筍御飯。泡盛の忠孝飲む。美味。神聖喜劇読む。東都歌舞伎座にて新之助君の海老蔵襲名披露。久が原のT君より勧進帳の富樫には厳しき評も口上につき「口上。司會は雀右衞門。口切は菊五郎團十郎直前のトメは梅玉。上手に芝翫、下手に富十郎並び居たり。この一幕中の海老藏、しこなし態度、初々しく謙譲真摯かつリラックスして豪膽なること、いつものことゝはいへ一驚に価す。最後に成田屋相傳のニラミあり。最前列十九番の席とて、文字通り咫尺の間に盛儀を拜む。目を閉ぢてキッと開くや瞳を中央に寄せ、足を突き出し三寶を構へツケ打ち上げての奔放なるキマリぶり、高山大澤の崩るゝ勢ひにて、滿場の觀客みな我を忘れて等しく嘆声を發す。海老藏の眼たちまちに血走りたるその面相のうつろひ具合、幕の閉まるまではごく僅かの間なれども、目前に見るうちげに背に百石の冷水を浴びたるが如く、思はず知らず膚に粟を生ず。芝居に勝りてこのニラミぶり、海老藏龍吟起雲の勢ひ、蓋し壓卷と言ひつべし」と。先月の松島屋仁左衛門丈の芝居といい海老蔵襲名といい南方にあり見過ごすこと忸怩たる思い。

富柏村サイト http://www.fookpaktsuen.com/