富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

四月十二日(月)晴。映画鑑賞連日の如し。科学館。マレーシアのドキュメンタリ“The Big Durian”観る。87年の「暴動」が主題。サルタンを長としマハティールのマレー人政権が長期にわたり君臨し華僑が経済を握るマレーの独特の社会。その構造変化の難しさ。英語達者な者の語り多いのは英語による製作の故ながらマレー人の英語達者なこと。逆にいへばマレー語にては語り足らぬ文化的土壌でもあり。日本が英語拙劣なるもある面では母語にて十分な社会あることの幸せかも。毫か二十人ほどの観客。そのうち一人はSabu監督の姿あり。次の映画までの幕間に科学館に隣接の歴史館にて承徳避暑山荘文物展参観。清朝の承徳にあるこの避暑山荘の特に印鑑、磁器及び外八廟の仏像、十八世紀中葉乾隆帝の頃の欧州との交易による時計、羅針盤などの展示。展示で残念は磁器の足底に乾隆六字三計といった藍款篆書あるものの磁器の底ゆへ見えず。展示に多少の工夫して透明の台に据え鏡を用いるなどしてこの款篆も見れれば猶を良し。科学館に戻り韓国のビデオ作品“Capitalist Manifesto(資本家宣言)”観る。監督は金曲&金宣の共同製作。チンピラと売春婦、路上の物売り。商品はチンピラの売るポルノビデオ、売春婦の売る肉体と路上で売られる豚の置物。その構成ぢたい何の変化もなし。だがチンピラの子分はポルノビデオが売れず一計案じてビデオをCDにして作品にバラエティもたせることで売上げが伸び、売春婦は高校生の援助売春に仕事取られ、と資本主義社会がどのように「進化」するかを象徴的によく描く。路上で物売りする浮浪者の商品も質の向上を見せ浮浪者自身も化粧する始末。商品を売るために何が必要なのか、商品ぢたいは同じでも付加価値つけることの意味。マルクス経済学的な物象化。物語の筋はたいへん単調だがわかって観ているとその資本主義社会の「成熟」の過程よくわかる演出。五味鳥と同じビルの地下にある拉麺屋一平安に食す。十数年前に香港で日本のラーメン食せたのは此処と油麻地の横綱くらい。今でこそ本格的なラーメン多いが漫画読みながらの普通のラーメン食すには此処は貴重。かんぺきに普通のラーメンだがモヤシが1cmに刻まれていたりはご愛敬。このビルの地下にラリった少年ら屯ろす。シャングリラホテルのカフェに一憩。映画祭期間中の運動不足。ジム。小一時間鍛錬。早晩Z嬢と待ち合せ文化中心にて“The Barbarian Invasions”複び観る。この作品会話秀逸にて仏語に英語字幕で前回いくつか笑い逃しありの為。葵芳。コンビニ(サークルK)にてサンミゲル立飲。このサークルKどの店でもその店員の服務態度の佳さ特筆に値す。吉野家にて牛丼食す。何処の牛肉か識らぬが、確かに日本の、最後に初台の山手通り角の旗艦店にて食した牛丼に比べれば牛肉の質など比べようもないが、それでも牛丼食すに能ふ悦び。葵芳駅前に星巴珈琲と地場のPacific Coffeeあり。余の性格ではPaciffc Coffee択ぶが実際に珈琲の味もPaciffcのほうが上なるはエスプレッソ飲めば明か。日剰上網。葵青劇院。二更に韓国映画“Save the Green Planet!”観る。張駿恒監督。傑作。宇宙人の侵掠で地球がまもなく危険に瀕すと信じる青年。エイリアンだと信じて疑わなぬ石化会社の社長の拉致から始る騒動。お笑いから青年が殺人鬼とわかり猟奇、猟奇からこの青年の生立ちだの母がこの石化会社により植物人間にされたことでの社会悪、と演出まで二転三転して「このまま終る?」はずもなく刑事物となりだが結末は……観てのお楽しみの最高のB級映画(日本での会見模様こちら)。韓国映画の勢い痛感。それにしてもここまでくだらないB級映画は日本にあるかどうか。真剣にくだらぬところに敬服。三更に東涌線にて小説『神聖喜劇』も大詰め近づくを読み乍ら香港站に戻ると恰度空港急行と到着一緒になり多くの降車客あり慌ててタクシーの列に走り込み行列の難避けるが普段見たことなき多くの客に何事かと思えば今晩で耶蘇の復活祭による四連休終り。毎年のことながら映画鑑賞で終る復活祭なり。

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