富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

四月十日(土)薄曇。尖沙咀。Space Museumの演講庁にてドキュメンタリー映画“Chinese Restaurants: On the Islands”観る。香港生れでカナダに住まふ關卓中なる、この映画のドキュメンタリーの制作者は元コンピュータ技術者にて謂る中年憂鬱症にて仕事辞め映画製作思いつき、といふ人。モーリシャストリニダードキューバにて支那料理屋より当地の支那人社会描く。現地に根付く中で民族だのアイデンティティとらえる秀作。トリニダードの拉丁の雰囲気憬れる。昼に心地よく晴れて気分も佳く尖沙咀はMinden Aveのフィリピン料理屋Mabuhayに食す。香港に十万人越えるフィリピンコミュニティ在りながらフィリピン料理少なし。毫かHK$25にてチキンソテーに隠元豆炒め、米飯にスープと飲み物つき。午後尖沙咀東の科学館。同じくドキュメンタリー“Buring Dreams”(歌舞中国)観る。上海の舞踏学校にてジャズダンスやヒップホップ教授するは齢七十ながら矍鑠とした梁一といふ先生。1932年に上海に生れ台湾に育ち五十年代には台湾のGene Kellyと云われた梁先生は香港、マレーシアを歴て上海に戻り若輩にダンス教える日々。それを白黒で撮すことで映像作品として完成度高し。小一時間ありKowloon Clubに寄り酒場に小憩するが日がな午後客どころか開いているのにバーテンもおらず(笑)結局何も飲まずに失礼、と思ったところ去ろうとしたところで給仕現れドライマティーニ一飲。Space Museumに戻り潘剣林監督『早安北京』観る。やはりビデオ製作は苦手。撮影が単調で飽きて居眠り決め込む。尖沙咀の知る家に寄り葵芳。Z嬢と待ち合せSabu監督『ハードラックヒーロー』観る。会場に場違いな少女多く何事かと思へばこの映画ジャニーズのV6の諸君が出演とか。V6とTOKIOのメンバーの区別もつかぬ我。「ひょんな契機」から一般人が何かに巻込まれ違う人格をば見せる姿はこの監督のお得意ながら、それにしても闇の賭博キックボクシングを舞台にV6の六人を二人ずつ三組にして、その場に偶然居合せたことにしたことで、同じ場面をその三組の異なる状況から見せるために三たび五十分近く要し三度目ともなると、あゝこれでみんなが飛出して車で逃走して最後は……と結末まで見えてしまい「うんざり」の感あり。V6のファンにはメンバーの姿じゅうぶんに堪能できるのだろう。Sabu監督は上映前の挨拶で「最後の4秒間が重要です。それを撮るために……」と力説するが。尖沙咀。十数年ぶりにAshley道の「京笹」に食す。狭い店は繁盛。Haagen-Dazsに氷菓食す。Z嬢と別れ漢口道と宣昌街角のWorksなるCD屋。初めて知ったが窓にボブマーレイ、ツェッペリンピンクフロイドの旗を掲げ、それだけで食指動くが訪れてみれば香港には珍しきマイナー製作の希少版びっしり。ボブマーレイのライブCD購ふ。三度びSpace Museumに戻りThunska Pansittivorakul監督“Happy Berry”観る。バンコックのSiam CentreにあるHappy Berryなる若者ら経営のブティックを舞台にしたファッション小売業界の若者たち撮ったドキュメンタリー。東京から台北、上海、香港、バンコックまで若者らの風俗が全く同じ、ファッションからメイキャップまで同じ。思考回路まで一緒なのは興味深し。映画の幕間に大西巨人神聖喜劇』第四巻ようやく読了。

富柏村サイト http://www.fookpaktsuen.com/