富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

三月廿七日(土)曇。T君より今月末日が故人歌右衞門没後三年の命日、本日繰り上げて青山墓地に墓前祭と報せあり。午後に東京會舘にて集ひあるは其処の帆立貝コキイユと甘菓マロン・シヤンテリイが六代目の御好物だったからだとか。東京會舘が大正9年開館の本格的なる西洋式社交場であり一橋大学との関わり勘えると東京會舘設立も渋澤榮一君の肝煎りなのか等とも思えるが事実を余は知らず。東京會舘といへば昭和九年に創業の日本初の西洋風の鮮魚介料理店「プルニエ」が有名だが昨秋巴里に遊んだ折に晩餐に訪れた8区のV.Hugo通りは魚料理の老舗Prunier思い出し魚介料理で同じ名のしかも東京と巴里の老舗に単なる偶然かどうか。余はこれも知らず。ところでプルニエは確かプラム樹。なぜ魚介料理屋でプラム樹かこれも亦た余は知らず。そのT君より「二青年圖御披見の由。餘も開板當初に讀みたれど」「當書勿論評傳とは言はれぬものゝ、こは矢張嚴然たる評傳のスタイルにて記さるべき内容ならん」と早速。御意。T君の説の通り変な物語仕立てが佳くない。とくに準一のまはりの乱歩はまぁいゝとして、与謝野、夢二、そればかりか小津や梶井基次郎とかの「つかひ方」まさに「つかふ」といふ感じがもぅ準一の身びいきゆゑかぜんぶ準一を盛り上げるためだけに存在してゐるやふな感じ。。實際に興味深い準一ですがこの「物語」の端役の登場人物に比べてそれほどまでに準一が主人公たるべき魅惑ありやなきや錚錚たる面々に甚だ失禮の感あり。本日午前は所謂引籠りモードにて溜った新聞読み午後九龍に薮用あり外出。晩にランニングクラブの定例会ありI氏の按配にて灣仔Lockhart Rdの「四姐川菜」なる私家房にて会食。字の如く四川料理。麻辣山椒の辛さ本格的にて食すだけで辛さどころか脳神経の覚醒甚だしいとことI氏らと四川省名産の五粮液一瓶開けようといふことになり確かに茅台酒よりこれのほうが美味。四川料理の麻辣山椒には寧ろ烈酒の杯呷るほうが辛さも中和され悪酔いもせず。I氏の計らいにて鼈(すっぽん)まで供され(写真)Z嬢ら甲羅のゼラチン質まで頬張る(写真)。食事済み少し飲もうと灣仔方面に向かうがRugby Sevensの酔客酒場より街頭に濫れとても場を共有したき気もせずNovotel(旧Century HK Hotel)まで戻り歓談飲酒。三更にドバイにて競馬Dubai World Cupの開催あり急ぎ帰宅し実況中継見る。香港も地元馬参戦もあり実況中継もあり馬券発売となったがWorld Cupに先立つ3レースのみの発売で最高催事なるWorld Cupのみ馬券発売なし。何故か理解できず。Sheema Classicレース(国際G1・ダート2400m)にはScott's Viewに香港出身の騎手・銭健明君が騎乗。銭君は香港において現在は調教師として絶好調のTony Cruzに次ぎ香港競馬の将来担ふ地元騎手として将来嘱望されたが惜しいことに八百長買収にて前代未聞の刑事裁判にて収監され二年だかの実刑で服役し香港競馬界より追放されたが独逸での再起一転で欧州にて騎乗続けるが今宵このScott's View騎乗にてついに国際G1に参戦する迄に至り祝儀も兼ね賭ければ三着に入り複勝HK$45。続くGolden Shaheenレース(国際G1・ダート1200m)は武豊君騎乗のMeiner Selectに賭けるが×。続くDuty Freeレース(国際G1・ダート1777m)ではDettori君のCrimson Palaceに賭けたが最後直線で先頭から七、八馬身の八位あたりからMarwing君騎乗のRight ApproachとPedroza騎乗のPaoliniがぐんぐん伸びて先頭争い。競って競ってとはまさにこれ。鼻差どころか鼻毛差でPaoliniかと思ったが同着。あの直線の競り方見れば同着は納得。台湾総統選挙も判定不明の僅差といふことで同票で総統二人といふのはどうだろうか、とふと思ふ。香港では賭けられぬがメインレースのWorld Cupレース(国際G1・ダート2000m)は一番人気がMedaglia D'oroの2.0倍、この馬に立ち向かったのはPleasantly Perfectで騎手はSolis君。これも手に汗握る競って競ってだが最後Medaglia D'oroがついに精力果てたかPleasantly Perfectが毫かに「ぐいっ」と速まり勝利。日本馬アドマイヤドン(安藤騎手)並にサイレントディール武豊騎手)は奮わず。さすがに見ているだけで感動するほどのいい競りぶり見せていただいた感あり。
歌舞伎座仁左衛門で「いがみの権太」見た月本氏が「いがみの権太と母を見てると、ほんと日本人はオレオレ詐欺にひっかかる人種だなとおもわれておかしい」と感想。可笑。仁左右衛門丈の権太……見てみたいねぇ。さぞやいいだろう。この権太を渡辺保先生は「従来の上方型(鴈冶郎型、延若型)を基本に東京の菊五郎型も加え、なによりも自分自身の工夫を加えた「仁左衛門型」ともいうべき独創的な型をつくっている、その工夫が面白い。昼の「新口村」といい、この権太といい、今月は仁左衛門大当りである」と絶賛。東京におらず悔まれることはただ歌舞伎の芝居のみ。