富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

三月廿二日。昨日の競馬について。Tony Cruz調教師とCoetzee騎手は今季6度目のG1勝利。緒戦より10連勝中のSilent Witnessで三度、昨日のLuckey Ownersが国際マイルと昨日のダービー、そしてBullish Luckが香港金盃。このCruz師ぢたい騎手として現役の頃に4度のダービー制覇したがその最後96年のダービー馬Makarpuraが昨日勝利を争ったTiberのMoore厩といふ因縁。ところで昨日の余の三單(Triple Trio三連複)馬券は余は6+11+12/4+8+12/2+4+8と9頭中6頭的中しており香港中で何人ものオヤジがそう言っているのだろうが「あと三頭、しかも各レースで1頭ずつ」当たっていたら億万長者!と。だが余が6頭も当たるくらいだから平凡だったようで9頭的中させたのが29人もあり配当は1人あたりわずか2775万円程度といつもの数十分の一……だがそれでいいから当てたいが。本日。昼に銅鑼灣City Superの元八らーめん食す。すーぷが濃いと思ふのは余が減塩に馴れすぎの所為だろうが香港では格別に美味い拉麺が此処。昼には混雑すると思い私事済ませ昼遅く参ったが普段なら昼の繁忙終って一息つくところ店員は一人でも店のメニュー覗く客がいれば近づいて品書き説明し積極的に招客の態度も立派、経営者らしき青年も店に戻るとフロアを一人の店員が切り盛りしている姿見ると早速カウンターに入り客待いも実に懇切、フィリピン人の家事女中二人が参っても“Yes madame, may I help you?”と誰彼なく客をきちんと待す態度に敬服。午後尖沙咀の知る家に憩しゆっくりと新聞テレビを見れば、台北では国民党の選挙無効訴える集会続く。香港の新聞は亜扁当選よりもこの国民党の反対集会大きく大きく取上げるが信報は冷静に選挙に疑惑だの金曜日の銃撃の真相だの不明な点はあるが中央選管が亜扁の当選宣言し民進党が勝って全権掌握しており国民党が負けたことは負けたことの事実。金曜日の銃撃あって政府が軍警察及び民安部隊に対して非常事態での警備体制維持を指示していることで本来国民党支持基盤であるそうした「制服組」が出動態勢で選挙投票に行けずその数が十数万人と思えば確かに銃撃とその対応で多くの票の流れが変わったことは事実といふ指摘はかなり興味深いが、それ以上に、国民党が負けた事実を深刻に自ら理解すべき、と。前回の00年の選挙では亜扁の39.3%の得票に対して宋36.8%と連23.1%であり、今回その連宋が組めばこの59.9%という実に6割の票が集まるべき。更に具体的に示せばつまりその6割と亜扁の00年の得票との差が250万票もあり、それは今回の数万、かりに数十万としても不正であるとか銃撃の同情票で靡いた数とは比べものにならぬといふこと。亜扁がこの4年で景気対策の不徹底や大陸との関係悪化など好材料ない中で連宋ペアといふ強敵と対戦した結果、それが亜扁の指示が5割に達したことは、これだけ好条件に恵まれているはずの国民党(及び親民党)がいかに市民の支持を得られなかったかの事実露見。ましてや連戦の二度の総統選敗北で国民党は最後のホープ台北市長・馬英九の如く評価期待されるが馬君は今回の連宋選対総部執行総幹事だったそうで敗北の責任逃れられず而も国民党の大票田あるはずの台北の市長ながら今回は約90万票と民進党票との差が21万票(13%)と台北での票激減が敗北の要因とも言えるわけで責任逃れは出来ず。このような厳しい現実の中でただ「選挙無効」と叫んでいても、選挙前日に「投票延期」を訴えたのならまだいいが、敗戦してしまってから結果逆転願っても国民党の敗北の事実は事実、といふ。御意。晩に藪用あり九龍某所。往復に久々に大西巨人先生『神聖喜劇』続き読む。余も読み進まぬがこの本の筋も一向に進まず。連載当時に安部公房先生が大西先生に「これを毎回読んでいるのはきっと僕だけだよ」といったといふ逸話あるがマジかも。
▼武蔵野のD君より。「台湾の混乱は民主主義の未成熟ぶりを露呈」とか偉そうなことを書く新聞もあるが「民主主義の成熟」とはなんだろうか、と。国政選挙の投票率が20%台だったりすることが成熟なのか。少なくとも日本よりは台湾のほうが民主主義は「生きて動いている」こと。日本であれだけ真剣に民主主義が行動されたことはもう40年以上なし。丸山真男の定義をまつまでもなく民主主義とは「状態」ではなく「永久運動」であり日本の民主主義は成熟といふより熟れる前に枯れて干からびてそのまま枝にくっついて落ちもしないというようなものか。東アジアの民主主義の発展度をいうならわが国は中国や北朝鮮よりは上かもしれないが台湾韓国香港よりは間違いなく下でしょう、とD君。韓国でいえば大統領ノムヒョン君弾劾決議で与党議員が泣きながら土下座するのも凄すぎだが院外に大統領支持派のデモが押し寄せていたり。それに比べわが国じゃ政治家の愚考を冷笑しておくのが知的で高級なふるまいであるかのような倒錯が蔓延。デモをやっても怒ったり怒鳴ったりするのは偏向した人たちと烙印。
▼ 大阪教育大付属池田小学校の新校舎落成。児童8人が犠牲になった殺傷事件踏まえて、なのだそうだが「体育館の壁など校舎全体にガラスを多く採り入れ」「見通しのいい構造」だそうだが、何らかの事件起きる時はこの構造が加害者側からも見通しよきこと。遠くから銃で狙われる危険性とか考えないのだろうか。非常ボタンが約330カ所設置された小学校などかつての荒れた紐育の公立学校でもなかった話。池田小を襲ったキチガイも異常だがその惨事を受けてこの330カ所の非常鈕も尋常ではなし。池田小だけがこの警備充実しても社会的病理は一切解消されず。寧ろ異常なる警備社会への邁進ではなかろうか。
▼築地のH君より。「リパブリック賛歌」はジョーンバエズも吹き込んでいるが中学生のときにH君聴いたピート・シーガーの「ジョンブラウンズボディ」を彷彿、と。ごんべさんの赤ちゃんになると「グローリグローリハーレルーヤー」というサビがなく感動どころではないただのコミックソング。このサビは省略されること多し。一瞬、リパブリック讃歌という「軍歌」の反歌としてこの「ジョン」が存在すると勘違いしたがH君の指摘待つまでもなく「ジョンブラウンズボディ」が奴隷解放の歌でその反対に「リパブリック」があり。H君彷彿するに当時、神保町の富士レコードで日米の反戦歌のLP買っていた、と。懐かしい話。