富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

農暦二月晦日春分。薄曇。午前資料整理。突然思い出したが昨日のRoyal Asiatic Societyに参加の老いた英紳士が携えていた書籍が『中国哲学史話』って勿論中文である。つまり老荘思想とかの専門書を読む英国人……。昼にかけて裏山に入りCountry Trailを一時間ほど走る。途中いつも気になる余のマンションの横に落ちてくる渓流ありそれに続くのであろう澤を下りようと試みたが難儀して午後に九龍に上客に招かれてのお座敷ありとても澤下りしては間に合わぬと断念。トレイルコースの入口に政府の公示あり鳥インフルエンザに抗して鳥に触らぬやふ、鳥の巣、羽や糞尿に触ってしまった場合は流水で洗浄し消毒するよう、また傷ついた鳥だの死骸見つけた場合は営林署に連絡を、と。役人の浅知恵。人害甚だし。帰宅して九龍。車で中環まで参り始発から搭って坐せば眠りに落ち再び下車站逃しそうに。ここ数日陽気のせいか睡魔に狙われ易し。帰宅するにバスに乗れば土曜午後の人出=バスの混雑かPrince Edwardより始まり旺角で全く車動かずバス下車して地下鉄に乗換える。帰宅してテレビつけると台湾からの実況中継で午後七時の段階で民進党リードし各局の予想得票数も五万票の小差で民進党の勝利。数発の銃弾が土断場で選挙の流れ変える。八時には大勢判明と言われていたが七時五十分に民進党が勝利宣言。これで何が確定したかといえば亜扁総統の続投で国民党の連戦はもはや政治生命断たれ国民党のホープ台北市長・馬英九君が次期総統選挙で国民党候補となり当確といふこと。下手に今回連戦が勝てば副総統候補に甘んじた宗楚瑜との間で国民党への候補統一の条件として将来の禅譲といふ約束があった可能性があり、そうなると馬英九の出番が狂う懸念あり。今回の国民党の敗北でもう国民党には馬英九以外の候補なし。八時十三分国民党党本部前の特設会場では「連宋加油!(頑張れ)」の連呼のなか連戦と宗楚瑜がステージに。無言のまま一例して笑わぬ殿下の連戦がまず民衆に冷静にと求め淡淡と語り始めるが昨日の亜扁への銃撃が不公平な選択の結果を齎したと叫ぶと応援した市民の間から初めて大きな反響の声があがる。八時二十四頃観衆の間から「馬英九!」とかけ声が聞こえた気がしたが馬君が会場に現れたのか画面からは確認できず。連戦はここまで冷静を保ったが「この選挙結果は無効だ!」と宣言。これこそ連戦君が人生において初めて感情呈にした瞬間か。遅かった。負け犬の遠吠えに聞こえてならず。台湾の名家に生まれ台湾大学から米国の大学で政治学博士号取得して台湾に戻り国民党のエリート中のエリート。九十年代の行政委員長当時、毎日昼に自宅での昼食のために往復する路上は信号が全て青になる中を警護車つけて走る抜けるといふまるでモスクワか北京の如き官僚主義の様を当時知った時に将来の総統候補にこれぢゃ民心得られずと思ったが結果的にその通り。選挙は無効であり中央選管に投票用紙の再集計求める、と。僅か数万票差であるが米国の選挙見ればあの不正選挙でもの僅差でも選挙覆されず。続いて宗楚瑜が演説。この謂わば敗戦宣言、屈辱的であろうがせめて亜扁の当選演説より先にすることで「負け犬の遠吠え」に聞こえさせぬための手段だろうか。中共は中央電視台は実況中継せず。但し衛星放送の人民解放軍資本と噂される鳳凰台が解説込みで中継するが中継は微妙に数分遅れ。当然「余計は発言」あった場合への対処であろう。鳳凰台の政治学者の分析は昨日の銃撃が選挙を思わぬ方向に運んだと不満呈わ。当然であろう。それにしても中共が国民党候補を間接的に応援するとは……これこそ六十年ぶりの真の国共合作か(笑)。ところで台湾の選挙では何故みんなジャンパーを着ているのか(笑)。ジャンパーに野球帽。ちなみにジャンパーは台湾語でもジャンパーなのは戦前から。野球帽は台湾の、日本と同じ戦後の米国野球文化なので理解できるのだが、ジャンパーは敢えて言えば蒋介石が戦後台湾に乗り込んだ時に着ていたのが中山服からの流れの詰め襟の軍服。それに対する抵抗がジャンパーなのだろうか(全く根拠なし)。ところで連戦&宗楚瑜の会場への登場の際も退場の際も流れていたのは舞台上の生バンドが演奏する曲で台湾人の老人たちはみんなつい「ごんべさんのあかちゃんが風邪ひいた〜、ごんべさんのあかちゃんが風邪ひいた〜」と日本語できっと口遊んでいただろうが(これは間違いない)、もちろんこの曲は「連戦さんの国民党が亜扁に負けた〜」の替え歌であろうはずもなく原曲は「リパブリック讃歌」。これは非常に重要なことなのだが(おそらく誰も気づいていないだろうが)リパブリック讃歌は米国の南北戦争での北軍の行進曲。台北など台湾北部を基盤とする国民党がこの曲を用いたことは意図的なのかどうであれ必然的。二十一時十五分中央選管が選挙結果発表。僅か二万九千五百十八票の僅差で民心党の亜扁当選。86%だかの高い投票率でこの票差はわずか0.25%ほど。まさに昨日の銃撃の結果。新聞のネット上での速報も記者がテレビの実況中継見ながら記事を書いているので(笑)速報なのはいいが、例えば朝日の記事(こちら)を読むと連戦の敗戦挨拶について「前日の銃撃事件などについて疑わしい状況があったとして「この選挙は無効だ」と宣言し「訴訟を起こす」と表明した」とあるのだがこれなど明らかにミスリード。連戦は「今回の選挙には疑惑わしき点が多い」と言って次に「昨日の銃撃もまだ真相が明白になっていない」と述べ、続いて「今回の選挙については無効である訴えをする」として中央選管に対して投票用紙の再集計を求める、と言ったもの。それが銃撃に疑惑わしき点があり訴訟起す、となってしまうのだから新聞の報道など何処まで信じられるか……。きっとすぐ書き直しあろうが。(……以上ここまで実況中継で綴る)。