富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

三月初四日(木)晴。香港国際映画祭の内容発表あり。台湾の蔡明亮監督の『不散』、蔡映画に多く出演の李康生君の初監督作品『不見』もあり。これは一対の作品と思うべきか。Gus Van Sant監督“Elephant”も注目作品。昨年が小津特集除いて三十本鑑賞。特集だが今年は清水宏監督。十三作品。貴重な上映なのだろうが実は私も清水作品は未看。正直言って香港では芸術中心で特集のあった今村昌平鈴木清順以上に“Who is Shimizu?”であるのは確か。どの程度の動員があるか。昼に尖沙咀ミラマホテル地下の食堂にてカツカレー食す。数年前に旧友S氏より勧められた尖沙咀の隠れた食堂。まさに社員食堂的。HK$22で確かなカツカレー(美味い不味いでなし)。夕方香港大学でF氏らを日本文学のC先生及び郷土史家K氏に紹介。打合せ。F氏らを大学図書館に案内し香港史料参観。晩に尖沙咀で薮用。先週のインフルエンザの余波か咳ひどし。山崎俊夫集読む。女優岡田嘉子についての記載あり。戦前ソ連亡命前の岡田嘉子のアパートの壁に書かれていた詩は
花アザミ乱れさく野の小径
われ知らじ、知らじとのみぞ
拗れてわかれぬ
花アザミ乱れさく
と詩など味わえぬ余もさすがに印象深し。また山崎とまだ十代初に親好あった京都先斗町の三味線の「かずぼん」との逸話も興味深し。このかずぼんが後の人形浄瑠璃の三味線で人間国宝の竹澤彌七。
▼築地のH君より。赤旗日曜版創刊何十周年だかおめでとう!各界著名人からお祝いの声、という企画に著名人が20人ばかりコメントあり其処に中村勘九郎の名あり。中村屋赤旗とはもう20年来のつきあい」だかで不破議長と二度ほど対談とか。当然のようにイラク反戦演劇人として渡辺えり子もあり。今日日の日本がどういふ状況かといへば赤旗号外を配った社会保険庁の職員が国家公務員法違反で逮捕、自衛隊官舎で反戦ビラをポストに投函した者が建造物侵入で逮捕……国民が自由に馴れきった中で治安維持法下の如き様。だが国民はそれに危惧もなし平和呆け。「自由」に溺死も近し。戦前の国会とて無産政党選出の議員数十名おり言論の不自由のなか奮迅、それを支えた有権者あり。社会主義の凋落あれど社民・共産など対抗勢力の無力=有権者の支持の低さ見れば国民の鈍感さ露見されるばかり。