富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

二月初四日(水)小雨。暦の上では立春ながら気温摂氏十度の極寒。朔日に綴りし台湾大新書局の新詳解日華辭典。大新書局の出版物多く扱ふ三聯書店(中環はビクトリア皇后街の本店は最近品薄にて老朽化も著しく中環 D'aguilar街の新店充実)にもなければ尖沙咀の一見古本屋(笑)智源書局にもなく半ば諦めたものの大新書局のH氏に請へば一冊お譲りしませふとのこと。入手。
しらかわよふね【白河(川)夜船】(名)熟睡、酣睡、睡得很沈(發生什麼事也不知道)。☆白河夜船のうちに汽車は台中を過ぎた/在酣睡中火車開過了臺中。
はまさに時代感じさせる台湾に夜汽車の時代。この他
まがなすきがな【間がな隙がな】(副)…有時間、…有機會、經常。☆間がな隙がなスケートに行きたがる/…有時間就想去滑氷。
など「スケートに行きたがる」といふのも昔の話ながら、この「間がな隙がな」にせよ「禍禍しい」「待ち女郎」「だんだら」「短兵急に」「お膝送り」などキョービの日本語では死語に近き言葉も少なからず。「ご無理御尤も」も「ご無理御尤もと人の話を聞く」の「唯唯諾諾、聽人家的話」など見事な訳。「小間物」の意味に「嘔吐」あるも笑ふ。即席で予想済ませ少額で馬券購入。早晩にジム。帰宅して競馬中継見る。岡本太郎論『黒い太陽と赤いカニ』読了。以下覚え書き五十年代から六十年代の岡本太郎の立場。厳しく前衛を唱道しようとも本質的には啓蒙的なもの。従来の知識人の役割を出ず。勿論そこには矛盾あり。啓蒙的立場を打破すべき前衛主義者が前衛を啓蒙すること。大坂万博への参画。誰よりも深く万博に関ることによって逆説的に主催者の唱える人類の進歩と調和にも反対派がよりどころにする反近代としての前衛にもこれらすべてを呑み込んでしまう消費の儀式を前にしてはもはや希望がないこと。従ってその双方を引き裂かれたまま対立させることにもすでに意思とドラマの生成変化がありえないことを絶望とともに痛感。対極主義。生産と消費との対極に進んで己をさらし引き裂かれること。巴里でのバタイユとの交際。バタイユ経由でのヘーゲル弁証法⇒侵犯の弁証法芸術は爆発だ岡本太郎曰く、爆発というと、みんなドカーンと音がして、物が飛び散ったり、壊れたり、また血が流れたりする、暴力的なテロを考える。僕の爆発はそういうんじゃないんだ。音もなく、宇宙に向って精神が、いのちがぱあっとひらく。無条件に、それが爆発だ。それを椹木野依は、歴史に依存して生きることをやめることの不吉さを勇気を持って受け入れたとき、進歩や発展といった近代の幻想から解き放たれたわれわれの生命が、一気に解放され変容する、その醒めた歓喜の瞬間を捉えた言葉、と言う。縄文と日本列島。立石紘一。赤塚不二夫太陽の塔丹下健三が仕切り磯崎新が裏工作した空間での岡本太郎による調和の破壊。太陽の塔の内部の芸術性。磯崎新曰く、日本の昔の、本当は見たくないものがふたを開けたら現れた……それが太陽の塔。旧東京都庁岡本太郎による銅板壁画。新都庁(丹下健三)移転のために壁画取り壊し。月刊『東京人』三月号読む。東京からなくなったもの特集。神保町のロシア料理バラライカや日比谷のジャーマンベーカリーなど昔からのものばかりか八十年代象徴する六本木のWAVEであるとか秋葉原T-Zoneまですでに存在せぬことを知る。六本木のWAVEといへば『桃尻娘』にて磯村、木川田両君。当時はここが東京の尖がった空間。場所の不便さゆへけして混雑せぬ、限られた客相手。今の六本木ヒルズとは其処が大違い。T-Zoneとて秋葉原の家電ノリの中で斬新なるコンセプトであったものの所詮、電脳とて家電といふのが現実か。
▼昨日の蘋果日報に泰家○といふ人の論評あり。最近、〇七年の香港立法会普通選挙実施に中央政府「待った」かけることにつき九四年二月廿八日『人民日報』に中国政府外交部による〇七年後の普通選挙認める発言あり、と指摘。これは中英交渉のなかで英国側が香港特区がこの〇七年の普通選挙実施に意欲見せた場合、中国政府の指示は何如」と質したのに対し「これは特区政府自身が決める問題であり中央政府がそれを批准云々の話ではない」と断言。当時そう言ったからと今言っても「当時そう言っただけ」で済まされそうで説得力もないが少なくとも理解できることは当時の中央の感覚にすれば親中派による選挙人制度で九七年に行政長官が選ばれ親中派が政府与党として機能し安定することは必至にて民選枠拡大されようと反政府派の議席数は一定数より伸びず〇七年に普通選挙実施したところで親中派の安定多数が期待できる、といふのが当時の期待感。それゆえ余裕で〇七年の普通選挙も公言。それが現実は董建華の無策無能ぶりと親中派御用政党・民建聯の失態、民信流失により、とても董建華親中派与党で安定望めず、それゆへに〇七年民選に否定的なのが現在の党中央。非常に分かり易き現実。