富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

一月十九日(月)深夜二時までふと百年ぶりに橋本治先生の桃尻娘のうち『無花果少年と瓜売小僧』一冊読了。新刊当時この物語に登場せし榊原レナ嬢、磯村クン、木川田クンと余はまさに同年代で同じ空気吸ったか今この物語読むと「ただ若い」だけに思えるのは余の感性の乏しさゆへか。連日の深夜の読書にさすがにぐったりと起きれば気温摂氏十二度。極寒。雨降り止まず。市街は暮れの盛況と慌ただしさ、何処も彼処も地下鉄もいつも以上に人混み甚だし。ヴィクトリア公園だの太子の花墟まで行かずとも集落毎に規模小さくも鮮やかに花市たつ(写真)。築地H君と今年初めて交信。絶交に非ず(笑)。『桃尻』について榊原さんなど埼玉の市議会議員から今ではちゃっかり民主党から埼玉県議か、と余が語ればH君『桃尻』について曰く、レナちゃんは横の連帯意識とかなさそう民主党の議員になりバリバリの新自由主義者として「自助努力」「意識改革」とか叫んでそう、と。それにしても「最後の近代主義者」橋本先生、最近、影薄くなかろうか。お出ましは「美」についてのみ。こんな時代だからこそ橋本先生的な近代啓蒙のあり方ぢたいが問われ発言せねばならないはずなのだが、とH君。橋本先生にはレナちゃんの21世紀を書き継ぐ義務と責任もあろうが、レナちゃんが新保守主義民主党議員なら、そこそこデザイナーとして成功の木川田君、磯村君はあのまま高幡不動に住まひ聖蹟桜ヶ丘ボーダフォンの店長だろうか、と憶測。三晩続きで今晩は世田谷久が原のT君に勧められし秋庭俊の『帝都東京・隠された地下網の秘密』読了。語られる「事実」かなり面白く帝都の、殊に桜田門から永田町、赤坂見附、四谷にかけての地下の物語、膝叩いて合点すること多く、首都高環状線のあの三宅坂の、余のかなり確かな方向感覚とて磁気狂わされずにはおれぬ、あの三宅坂ランプ附近での強烈なる「気」もなーるほど、と。但しこの書籍の勿体無きことは筆者の「書き方」のまどろっこしさにて、文章がいっこうに読み手を誘わず、編集者にも問題あろうが、けして「カッパブックス」的に売り線……(元へ)売れ線狙いになってはいけぬが読み手を十分に引き込むだけの内容と事実あるのだから筆致さへ満足なる域に至ればもっと大いに売れて読まれるべきはず。巻末に至り一向に話をまとめられず最後は正直申して「えっ、これで終わり?」と残念。すでに手許にある続巻に期待。