富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十二月十三日(土)晴。気温摂氏十三度の厳寒。土曜日だといふのに諸般雑事多し。午後九龍にて高座あり。晩も雑事、月本氏らは九龍城の創發にて潮州料理か、羨まし。晩に自宅で牡蠣鍋。文藝春秋一月号読む。好評の「父が子に教える昭和史戦後編」など読むと曾てはキワモノ扱いされた史観が今では堂々と。歴史は明らかに書き換えられているのだが、ただ所詮、文藝春秋といふ「すでに人生終った」か「終ろうとしている」オジサン雑誌、この企画も「父が」といふところに弱点あり、「親が子に教える」ならまだマシだが、「父が」といふところに子に自らの=日本の逞しさ教えたいといふ父性の幻想あり。また「イラクで日本人の血を流すのか」といふ題の対談企画もあり文春ともあろう雑誌がイラク派兵反対か?と思い参加する佐々淳行氏が何を主張するのか、と期待すれば佐々氏曰く現行の特措法では自衛隊は派遣できぬ。問題点は「派遣は非戦闘地域に限ると定めた特措法二条」にあり、非戦闘地域などない現状は米国も戦争と認めており、また九条には「内閣総理大臣及び防衛庁長官は隊員の安全の確保に配慮しなければならない」とあるのも当初は「注意規定程度の認識だった」ものだが治安悪化でかなり重い条文になってしまい、また防衛長官石破二世は戦闘の定義を国または国に準ずる者の攻撃としており、これによると自衛隊はどこにでも派遣可だが、この定義を佐々氏は十九世紀の古典的な国際法の解釈で、民族紛争や国際テロには対応できず、と。結局この対談はイラク派兵での政府見解は大きな矛盾やごまかしがある、と。……でここで「イラクで日本人の血を流すのか」といふ派兵反対に行き着くのか、といへば文春であるからさにあらず(笑)、自衛隊が行かざるを得ぬのは戦闘地域であるから、重要なのは自衛隊が自らを守る武器使用に関する規定の見直し、と。当然のことながら積極論。ただ最後には派兵について政府がどこまで覚悟を決めているのか、自衛隊員一人の犠牲が出たら小泉内閣退陣くらいの覚悟があるのか、と指摘。この点は確かにその通り。続く自衛隊幹部の匿名座談会では、「政府はなぜ自衛隊イラクに派遣しなければならないのか、それが日本の安全保障とどう結びついているのか、それを国民にきちんと説明して理解を得てほしい」「我々は命がけで任務を果たしにいくのですから国民に「私たちのために頑張ってください」といわれて送り出してもらいたい」と。本音だろうが残念ながら国民に理解得る決定的な論拠などなし。ゆえに国民も戦艦が出てゆくことに猛々しい涙流すことが快感という呆れた人たちを除けば「私たちのために」とは納得できず。折しも中曽根大勲位小泉内閣に対して小泉は森より人気があるのに衆議院選挙での得票は森並み、では来年の参議院選挙は苦戦、と分析。その場合、退陣もあり得る、と。大勲位衆議院議員の椅子から引きずり下ろした罰か(笑)。大勲位曰く自衛隊派遣でも首相は国民にきちんとした説明ができていない、と指摘。