富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十一月廿八日(金)晴。朝、浴室で聞いていたRTHKのニュースにてブッシュが感謝祭に電撃的イラク訪問といふ速報流れ目も覚める。敵地に僅か二時間半の潜入、敵詐いて「やーい、やーい」とまるで「だるまさんがころんだ」の子供の悪戯の如し。しかも感謝祭にイスラム国家にしでかす宗教的傲慢と冒涜。赦されるべからず。イスラムの戒律は七面鳥食すを禁じておくべきだったか……だが北米大陸原産のキジ目キジ科の鳥ではイスラムの戒律に登場せぬも仕方なし。どうせならブッシュ君米軍最高司令官としてイラク平和解放までイラク滞在しては如何か。Noblesse Obligeにて彼の信念の踏襲を。米国総統なら他にいくらでも代替者あろうがイラク解放など暴挙信じてできる指導者はブッシュ君の他になし。晩にZ嬢とペニンスラホテルのガディスにてフランス料理。これまでに遭遇したこともなき繁盛ぶりはペニンスラホテルの開業75周年にてホテルの飲食をば七掛半にて奉仕の由。三月SARSの疫禍の直前にK氏夫妻と来た折など我らのほか早晩のお食事の一組の他は東亜銀行頭取李Baby國寶氏とお妾だけ。今晩は香港一といふ料理屋、携帯電話は鳴る、肘ついてパン丸かぢりする、デジカメのフラッシュが閃光あちこちで光る、ホステス同伴から賑やかなるカナダか豪州留学組の女の子の同窓会まで、従業員も店内走り回りまるですらいらーくの如し。なぜにバシバシとああも無遠慮に写真撮るのだろうか。せっかくのほのかなシャンデリアの明り天井に燈り卓上の蝋燭の光あるのだから、その明りの中でじっと佇み美しく映そう、映ろうとは思わぬのだろうか、などと思ってもライカなりコンタクスの時代に非ず。かつて半ズボンだのスニーカーでの入場お断りと威厳あったペニンスラホテル、そのガディスとてジャケット、ネクタイ着用がジャケット着用にまで規制緩和され昼はスマートカジュアル可、携帯電話が鳴ってもお咎めもなしの時代。この料理屋に果して生演奏のバンドが要るかどうか。残念なるは料理も今回のご愛顧感謝期間のためかアラカルトの料理かなり絞られ主菜の牛の茹肉料理は今ひとつ。デザートで下手に日本語解す給仕に「これは春巻です」と言われギョッとして見たらチョコレートロールで正直に「これは春巻ではありません」と教えたつもりが「はい、そうです」と答えられ、つまらぬ日本語話すべからず、と思うばかり。そのデザート、周囲にオレンジだのグレープフルーツが添えられムースを巻いたチョコレート、あまりの味のバランスの悪さにとても食せず残して春巻君に「絶対に美味しくない組合せだと主厨氏にお伝えあれ」と乞うほど。バーゲンセールに良品なし。ペニンスラホテルといへばAmexのゴールドカードにザ・ペニンスラなるこのホテルの提携カード登場し今朝がたAmexに問合せれば通常のゴールドカードと全く同じ条件にて履歴も維持、番号も下四桁の変更だけで変更可、と。何も得点なき通常カードに比べればザ・ペニのカードとすれば系列ホテルでの飲食八掛半にて宿泊など得点ありならこの方が幾許かお得、変更をば依頼す。
蘋果日報にて陶傑氏。イスタンブールの爆破事件、アラビア世界にあってトルコ率先して泰西が議会民主主義導入し婦女顔被り外しコーランをば寛容に解釈し現代化成功させ謂わば「イスラム世界の日本」となりアラブ世界にあって半ば西洋人と化す。陶傑氏思いだしたは映画007の『ロシアより愛をこめて』にてジェームス、ボンド君ソ連の暴挙防ぐため乗り込むはイスタンブール。現地のちびでチョビ髭のトルコ人支局長(ペドロ、アルメンダリス君が好演)がまさにトルコの立場体現し、ボンド君を危機一髪から救いイ市の地下の下水道から逃しボンド君が撃つライフルの照準合わせるため肩を貸す、その役割がまさにトルコと。御意。トルコは正式なる西側国家に非ずとも西側にとって友邦にて当時ソ連敵にまわした米英にとってトルコは最前線。支局長がボンド君のライフルを肩に載せし時すでにトルコは「脱阿入欧」のであり四十年後に米英のイスラム攻撃に対してトルコがその反米英の標的となるは歴史の因果。