富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十一月八日(土)雨。はて傘は何処と久しぶりの雨。それも驟雨幾度も襲ふ。Trailwalkerにて行山の人を念ふ。四日(火)にEMSにて日本に送った余の貴重なる一票。当日のうちに香港を空路発送され翌日午後東京国際局着。それが何故か関東の東京より一時間余の中継局経由し選管に近い配達局に届いたのが昨日朝。高額費やしたEMSが六日の終日どう扱われいたのか不思議。昨晩まで配達された形跡なく在郷の郵便局に電話で問い合せ。「EMSでそちらに送った郵便が届いてないのですが」と尋ねると「受取り人の方ですか?」と。「いえ、送ったほうです」と答えると「それはこちらでは確認できないんですよ、受取りの相手の国のほうに確認しないと」と。在郷の局では致し方あるまひが電話してくる者は前提として局域内の居住者なのであろう。「ですからそちらに送ったんです、私は送ったほうです」というと「あ、そう、で、送り先は?」と局員。「選挙管理委員会です」と答えればさすがに在外選挙の送付などあったようでEMSとの関連に気づき「あ、それはそれは」と明日が選挙で今日届いていないとまずいので「何かわかりますか、お名前とか」と突然対応が敏速。EMSの番号告げると「それじゃ調べてお電話差し上げますから」と親切だが「海外ですよ」と言うと職員が凍るのは選管と一緒。あとで電話します、と追跡依頼。で電話すれば「昨日届けていますね、ただこちらで入力を忘れてたみたいです」と。EMSで香港から配達に四日、しかも配達後の処理忘れとは。雑用済ませ昼に競馬予想。午後に九龍某所にて高座に上る。中環に戻り手荷物ジムのロッカーに預けC君と待ち合せFCCの酒場にて麦酒一飲。Fringe Clubにて香港城市当代舞踏団の“The Enigma of Desire - Dali vs Gala”なるダンス観る。男女二人の踊り手と守りとしての老女。確かにダリ的な世界で現実(といふか虚実の総体であるだけ)から乖離した二人が館の中で狂ったように踊るというコンセプトはわからぬでもなし。だが必要以上の導入での演出、椅子と一つの家具(それは鏡や衣裳棚、寝台、窓などに変化する用途は面白いが)への演出上の依存は納得できず。小さい小屋で観衆に三人の若い日本語話す若者あり。終わってFCCにてギネスの生麦酒、印度風の鶏御飯。Trailwalkerの終点にあるZ嬢より友人らのチーム32時間余で無事四名で到着と電話あり。帰宅して中島らも『牢屋でやせるダイエット』読む。拘置所でらも先生が取り寄せて読むのがフーコーの『異常者たち』。17世紀のフランスで親の嬰児殺しに対しては死刑か無罪しかなく死刑はかなり稀でつまりは無罪が殆どであったのが、それの「是正」のために証拠の多少によって罪を段階的に決める<情状酌量>といふ制度設けられ、つまり情状酌量とは「従来無罪であった囚人の罪を重くするために制定されたもの」と。牢屋でフーコーとは最高の読書場所。らも先生の拘置所での悟りは「生きるということは死ぬまでの時間をどうやり過ごすかということ」で「膨大にある」「時間との戦い」、その「戦いに勝たんがための武器として大麻があり、酒があり、全ての嗜好品がある」のであり「これらをうまく機能させれば、それだけ時間が早く進んでくれる」と。らも先生は平成の安吾。それにしてもらも先生は大麻吸引を「誰がチクったのか?」と悩んでいるが『噂の真相』の絶対安全Dランキング(高橋春男)ではらも先生の「身内しか知らないはずでしたから、誰がチクったのか今でも不思議なんです」というらも先生に奥さんが「だって吸ってるって自分で書いてるじゃないですか」と(笑)。さすがらも先生。
▼信報に昔の笑い話あり。古典的なのは中国政府の(民国政府であろう)駐米公使がある米国人に“What kind of‘nese' are you - Chinese, Japanese or Siamese?”と尋ねられ仕返しに“I am Chinese. Say, what kind of‘key' are you - Yankee, donkey or monkey?”など。80年代のでは、イタリア赤軍がフランスのジスカール・デスタン大統領、西ドイツのシュミット首相と米国のカーター大統領誘拐し一人ずつ銃殺処刑に挑む。最初にジスカールデスタン氏、機転きかし銃殺される直前に「地震だ!」と呶鳴り混乱の隙きに逃亡成功。次に処刑台に上ったシュミット氏はフランスを摸て「洪水だ!」と叫び同じく逃亡成功。それを見たカーター氏は「火事だ!」と叫んだが不幸にも“Fire!”が火事でなく“Fire!”が「撃て」で銃殺されてしまった、と。当時の欧州にて巧妙な政治力でならしたジスカールデスタン氏が「地震だ」と嘘をいい周囲を狼狽させる妙、堅実なドイツがフランスに追従し成功する様、そしてカーター氏を当時、無能無策のように揶揄したものだが、今となって思えば史上空前絶後のバカを大統領に頂く国家はカーター氏が大統領現役時代こそ活躍なかったとはいえ氏の今日までの国際平和への活躍見ればどれだけ優秀な人材を大統領に選んでいたか、といふこと。