富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十月十六日(木)快晴。心地よき晴天。ちなみに昨日より半年ほど購読せし日経に代えて再び朝日新聞。日経にどうしても余には疎き企業経済記事多く日経夕刊の文化欄の内容期待したが国際衛星版にてはそれもなし。朝日の質の低下、殊に主張の昏迷、少なからぬ記者の文章力のなさ、そしてその文章を垂れ流す本社デスクの見識ののなさは呆れるばかりでも腐っても鯛か、毎日新聞は国際版なく不便、讀賣はナヴェツネある限り読むまじ、産経に「運動資金」提供するなど言語道断、と結局朝日に戻る。中国の有人宇宙船の無事生還に報道はその祝賀一色。国威発揚。人権や自由の制限なども払拭され中国!、中国!わが偉大なる祖国と。中国は世界の最先端の科学技術に到達した、だの、市民の声も近い将来アメリカに追いつき世界一の経済大国にと意気込む。これで来年からの四年間はオリムピック一色。すべて政治、政治、政治。目的は国威発揚、結果は盲目的な愛国主義。せいぜい娯しんでいただきたいもの。少なくとも明るい話題あるだけファッショ的全体主義に陥ろうとする日本よかマシか。ここ数日新聞もロクに読まず寐てしまひ晩に数日分の新聞雑誌など読む。
朝日新聞に9段ぶち抜きで月刊「ハロン」の編集長S氏応援する新嘉坡の高岡厩舎紹介記事あり。競馬といへば今年12月の国際騎手賽は参加騎手例年になく豪華。 Demuro(伊)、Dettori(UAE)、Dye(新西蘭)、Fallon(英)、Kinane(愛蘭)、Oliver(豪)、Soumillon(仏)、Starke(独)に武豊とWhyte(香港)、よくぞ鳩めてくれたもの。
▼築地のH君より。産経新聞何か勘違いをして産経新聞社主催の「高松宮記念世界文化賞(演劇映像部門)を「左翼映画の巨匠」イギリスのケン・ローチ監督に授与。三笠宮様記念ならケン・ローチもわかるが、この賞の国際顧問には中曽根大勲位すら居るといふのに。7月にローマで常陸宮様ご夫妻お招きし受賞者発表式典にはローチ監督は「所用により」欠席。で産経に今月下旬の授賞式を控え「抱腹絶倒」のインタビュー掲載あり(一部要約)。
――監督は、「カルラの歌」「ブレッド&ローズ」など、ラテンアメリカの人々にスポットを当てる作品を撮っていますが、なにかきっかけがあったのでしょうか。
ローチ●一緒に仕事をしていた脚本家のポール・ラヴァティがきっかけを作りました。彼は弁護士でもあり、人権監査委員としてニカラグアで活動を行なった経験があります。……ニカラグアは87年に新憲法を公布して社会主義路線を歩み始めましたが、米国に支援された反政府ゲリラ(コントラ)との内戦が起こり、多くの人々が傷つきました。米国は自由と民主主義を旗印にニカラグアに介入したわけですが、それは真っ赤なウソだった。この事実を語り伝えることはとても重要なことと思えたのです。
――では「ブレッド&ローズ」は。
ローチ●この作品は主にメキシコ、ホンジュラスエルサルバドルといった中央アメリカの出身者からなるロスアンゼルスのビル清掃員の闘いを扱ったものです。なぜこの作品に取り組んだかといえば、米国の移民に対する姿勢を伝えたかったからです。米国は彼らを安価な労働力として利用することしか考えず、適正な扱いをすることを拒んでいるのです。セットをロスに組んだのですが、ロスは住むにはとても不快な街だったという記憶があります。
……とここで本音は「ヤベーッ、ウチじゃあ記事になんねーよ」ともはや記者は青くなってるはず。で、インタビューは急展開をみせる。(笑)
――質問を変えます。ハリウッドを中心に、映画には次々と新しいテクノロジーが投入されていますが、監督はテクノロジーに関心はありますか。
ローチ●関心はありません。私はそんなに賢くありません。依然ペンとインクで事足りる人間なのです。
――唐突ですが、ジョン.レノンに関心はありませんか。
ローチ●はあ?こんな質問は初めてです。彼と私の共通点は、ともに労働者階級の出身だということぐらいでしょう。彼の歌には階級を反映したものも多いですが、「平和を我らに」はあまり感心しません。なぜなら、あまりにナイーブすぎます。現実はもっともっと複雑だと思うからです。私は「ペニーレイン」や「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」といったビートルズ時代の作品の方が好きです。これらの曲はリバプールという街の特徴をよく表していますから。
――ジョンの曲を映画で使ってみようとは思いませんか。
ローチ●考えたことはありません。
――最後の質問です。日本を舞台に映画を製作する可能性はありますか。
ローチ●自国と言葉も文化も異なる国では洞察力が働きません。そういう状況の中で、私が映画を撮ることはないと思います。
と(笑)。H君「この記者、断言できますがケン・ローチの映画観たことないどころか、ケン.ローチが誰だかもよく知らないのでは?」と。「イギリスでなんか労働者を主人公に映画とってるらしい」ということだ見聞しイギリス、労働者というキーワードから思いつくのがジョンレノンしかなし。「ブレッド&ローズ」や「カルラの歌」については、お願いですからもうそれ以上喋らないでください!と切望。ケン・ローチに対してテクノロジー云々とは、これは美輪明宏先生に「ハウスミュージックは歌わないんですか?」と尋ねるようなもの、とH君。まさに。それにしてもアメリカの中米政策の批判が産経の紙面に載るとは天晴れ。しかも本来なら掲載し難き内容ながら改竄もせずそのまま掲載とは美談といふ他なし。サイード先生の件といい産経新聞、どうも外国の文化人については詳しくない様子が窺われる。ちなみに<産経抄>ではピカソ展を観にいってピカソの暖かい人柄に触れる思いがした…とか書いているそうだが「作品を誉めるのはともかく死ぬまで共産党員だったピカソの人柄をそんなに賞賛する」とは確かに産経新聞としては社命に背く行為ではなかろうか。