十月初五日(日)快晴。昨晩の深酒で起きれば早十時。凱旋門賞にて朝食もとらず珈琲一杯にてZ嬢とRER-3からメトロ乗り継ぎ送迎バスでLongchamp競馬場。昨日までの温かどころか暑さから急に冷え摂氏15度ほど。さすがに昨日など比べものにならぬ人出。第1レースまで時間ありどうにか卓子確保してluncheon一箱購ひ食事しつつ予想。第1レースには騎手Eric Legrix君Businessmanに騎乗、paddockより馬場への通路にてZ嬢声かけるとEric君もそれに応へご挨拶。せめて三着期待したが着外。賭けの結果はR2はDarasim(Fanning)で三着、R3はPleasure Place(Vargiu)が着外、R4はBright Sky(Boeuf)が三着、R5はNecklace(Kinane)が着外、R6はCharming Prince(Peslier)が二着、とどうしても単勝が取れず。で凱旋門賞、一番人気も競馬紙Paris Turfの扱いも貴公子Soumillon騎乗のAga Khan王の持ち馬Dalakhaniがダントツ。展開として同氏のDiyapour(Gillet)が先行してレース引っ張り直線でDalakhaniが、と判るのだが、一昨年のSakhee、昨年のMarienbardと二連勝(他に95年にLammtarraで計三勝)の天才騎手Dettori君、今回はDoyenに騎乗ながら10倍と揮わず。Dettori君、香港での騎乗を見る限りすでに最盛期は過ぎた気もするが凱旋門賞に三連勝すればPeslier君の三連勝に並び計五勝目と、その神話づくりを佑ける気持ちでDettori君に賭けるが予想通りの展開でDalakhaniが優勝、Detttori君のDoyenは四着と無念。Soumillon君の悦びの表情とそれへの満場の歓声、それが美しき雲流れ柔らかい早晩の日射しのそそぐLongchampの競馬場(写真)、これを観に来たのだと余も感激一入ながら、そのDettori君に続く新しい巨星の誕生に賭けなかったことは無念極まりなし。実に素晴らしき凱旋門賞の一日。それにしても競馬場はこの大群衆を裹むには施設といい交通機関といい不足(といふか年に一度この日とダービーを除けば閑散でこれで十分なのだろうが)、馬券はマークシートもなく窓口で口頭で馬券を告げねばならず、英語では1から20の数の勘定さえ指を折って数えても儘ならぬ職員多く、掲示板は少なく小さく、座る場所にも事欠き洗面所は長蛇の列、レース後配当金まで20分……と香港の六万の観客とてメンバー席といわず一般席ですら快適な競馬施設と迅速なシステムに慣れた者には不便を感じ入るばかり。最終の第七戦にLegrix君再び登場ながら帰路の混雑あり複勝のみ購い送迎バスに向えば帰宅ラッシュになる直前のバスに乗り込め早々に競馬場離れメトロにて市街へと戻る。遅晩に食事済ませた月本夫妻とSt-Germain des PresのBonaparteにて一飲。Longchampにて余とZ嬢凱旋門賞終り早々に退場したがSoumillon君の表彰の頃にきれいな虹かかったと月本氏より聞く。Soumillon君といふ新しい巨星の誕生に相応しき。この日のその凱旋門賞に立ち会えたことの素晴らしさ改めて感激、月本氏とそれを物語りする。とくにEl Condor Pasa(蝦名騎手)がMontjeu(Kinane)に刺され二着となった99年の凱旋門賞の頃から未だ見習いであった若干17歳のSoumillon君を見て大成を予感していた月本氏にとっては感慨無量。新之介君の登場を見た時のような一つの時代の幕開き。半月から丸みをます月がSt-Germain des Presの南の空に美し。