富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

九月廿七日(土)エミレーツ航空73便、B737-200今どきベトナム航空どころかミャンマーのビーマン航空ですら真剣に機体交替検討するのではないか?といふほどの老朽化甚し。かつて世界でも有数の客室の充実誇ったエ航空も欧亜の対抗社の充実著しくエ社見劣るばかり。機体前方の商務客位とて2-3-2の配列、本来なら頭等にて1-1-1、商務であればCathayなら真剣に1-2-1配列を検討せねばならぬ狭さ。曼谷(Bangkok)に一時間途中泊まる。新聞かなり読む。高原英理の『黒蜥蜴』題材に乱歩と三島を語る「語りの事故現場」読む。ドバイに早朝到着。外気摂氏30度ながら気温調整された近代的空港の中といふより巨大なショッピングセンターの中は早朝といふのに客あふれ季節と時間から隔絶された非自然空間。心地よいのが逆に不安感。エミレーツの誇るといふラウンジも山窩の者多く混雑し上野駅の如し。免税店にて1975年物のGlenmorangieと渡仏というのにGauloisesの烟草購ふ。エミレーツ航空73便にてパリに向ふ。機体はB777ながら200にて香港よりのB737-200とかまだマシだが頭等坐席みたZ嬢がそれを商務坐席と勘違いしたほど。機体設備評価には全く値せぬが機内食は真っ当か。ペルシア湾を渡り伊蘭高原の上空を東を臨めば遥か彼方はアフガンにてビンラディンシお隠れかと西はイラクとまさに火薬庫の中。航路は慎重に伊蘭の空域を抜け土耳古へと至る。月刊『新潮』で嶽本野ばらの『ロリヰタ』読む。印刷して持参せしサイード先生の遺稿、追悼記事などいくつか読む。飛行機は土耳古から黒海渡り快晴にて羅馬尼亜、匈牙利より墺太利の高原眺め遠くにはアルプスの山なみ。Linzの近くに流れる大河はドナウ河か。『新潮』の折口信夫特集読み空から東欧の大地見下ろして
みのる穂に神あらねば豊饒のときかたる者はいずこに
と詠む。
これでもかと言うほどに秋めく耕地
もまた一句。昼すぎ巴里Charles de Gaulle空港に到着。エミレーツ航空手配のルノー車にて恐らくこの後眺める機会もなかろう凱旋門抜けSt-German des Pres。Citadinesに逗留。荷物解けばPCのモデムカード持参せぬ失態に気づく。受付にて何処にてPC関連用品購へるかと尋ねればLa Samaritaine百貨店教へられ百貨店にある訳なし、と再び別の職員に尋ねても同じ答え。それでも疑へば「何でもある」と豪語され、それでも無くばと質せばForum des Hallesの地下商店街に参れ、と。セーヌ河の対岸La Samaritaine訪れればやはりPC売場すら無くForumにてPC扱う店二軒覗きしものの今どきWireless Lanの時代にモデムカードなど扱ってもらず。Rue de Rivoli散歩してホテルに戻りSt-GermanのBuciの市場にてとりあえずの食品だの生活用品購買。ホテルに戻り再びSt-Germanに参りRue Gregoire de ToursのAu Beaujolaisなる大衆食堂にて晩餐。西洋料理の肉は余にはどうしても何が美味いのか理解できぬ(牛肉なら神戸、豚なら韓国、鳩なら香港沙田のほうが美味のはず)が付け合わせの野菜の美味さは仏蘭西ならでは。殊に馬鈴薯、Z嬢には普段禁止されるであろう量の旨み豊かな牛酪のソースたっぷりとかかり感激至極。麺包も珈琲もなぜこれほど美味いのか。ホテルに戻りビジネスセンタにノートブック持ち込み接続試みるがIPアドレスの取得できず。飛行機にて寝たは寝たものドバイ着が巴里時間にて朝の二時。長い長い一日が終わる。余もZ嬢も時差ボケ知らず。
▼朝日に、東大の教職員用PC千余台来春よりiMac導入、と。個人的にはAppleを好む余も汎用、しかも桑沢デザイン研究所ならまだしも、小学校ならいざしらず大学の汎用にiMacとは無謀。大学側理由として「ウインドウズに比べて様々なソフトが導入しやすく不具合が置きても自分で直しやすい利点がある」と。明らかに誤解。ソフトの導入は限られ共用のPCに不具合起きることも困るばかりか個人で直すといふ発想すら尋常でなし。
ペルシア湾を渡り伊蘭の高原を眺めつつ右の山脈のかなたはアフガニスタンにてビンラディン師はあちらにお隠れか、左を眺めればイラクも近し。まさに火薬庫の如き一帯の上空をば飛行。
▼総選挙に向けた自民と民主の政権公約(なぜこれをマニフェストなどと呼ぶのか理解できず)どう見ても自民党のほうが真っ当。
経済 (自)06年に名目成長率6%達成 (民)任期中?に失業率4%台前半に下げる
財政 (自)10年代初頭にprimary balance黒字化 (民)06年予算までに公共事業9000億円削減
   (自)06年までに補助金4兆円削減 (民)06年までに補助金16億円削減
道路 (自)05年に道路4公団民営化 (民)3年以内に高速道路原則無料化
年金 (自)持続可能な年金制度改革 (民)税金財源に国民基礎年金創設
と年金制度除けば明らかに自民の政策が具体的。高速道路無料化などすれば必要以上の走行量の上に愚者暴走し危険なばかり。
▼朝日の自民党幹事長安倍晋三君のinterviewにて「タカ派と言われることをどう思うか」といふ質問に安倍君曰く「タカ派とかハト派とかはあまり意味がない言葉だ。非常に古い世代の人たちが発する言葉であって、日本人の一人の命もおろそかにしないということでタカ派と言われるのであれば、それはそうなんだろうと思うと」。つまり日本人以外の命はどうでもいい、といふことか。いずれにせよタカ派ハト派の話にて「国民の命を守る」=タカ派というこの視点のズレ。もう一度大学の一般教養にて政治学概論でも聴講すべき。このような認識の方が保守与党の幹事長とは。
▼建築家で「町並みの美学」の芦原喜信氏逝去、享年85。正統的近代主義。月刊東京人に取り上げられ数年前に陣内氏などの都市論とともに『町並みの美学』読む。
▼27日に中央線三鷹国分寺間の高架化工事のため「中央線運休」とJR東日本の広告あり。文章には「三鷹〜立川間の列車が大幅に運休となります」とあり。中央線運休なら全面運休と思い、「大幅に運休」ならダイヤ削減にて間引き運転、か。わからぬ。