富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

九月廿日(土)朝に雑用済ませ団地の遊泳池にて一泳し新聞雑誌読み悪しき日光浴。昼に中環。記者倶楽部にて珈琲一服し新聞読。十月中旬より三週間開催の維港巨星匯(HK Harbour Fest)なる催し物、SARSによる停滞の起爆剤といふ名目ながら単に外タレに高きギャラ払ひ何が香港の福利になるかと非難ありSARS基金よりの資金拠出非難あり余も尤もと思いつつPrinceの来港あり日本にても80年代後半に横浜と後楽園にて二度見物せし贔屓にて十月十七日のこの催し開催初日のPrince公演の切符購ふ。昼すぎ久々にジム。午後或る勉強会あり九龍某所。これより来年七月まで毎週土曜日の由、週末の休日失いたる思ひ。終わって太古坊にてZ嬢と待ち合せしが隧道バス土曜日夕方とあっては旺角にて渋滞。バスの車窓より見れば天后に「紅寿司」なる寿司屋発見。「べにずし」ならまだ良いが「あかずし」と云ふ奇妙な読み。垢寿司のやふで頂けず。「紅い」で「あかい」といふ読みは形容詞、紅鮭を「あかじゃけ」とは云はぬもの。次に見つけしは「沢山」なる日式寿司屋(写真)。屋号なら苗字で「さわやま」かも知れぬが日本語の「澤山」がシナ語の「好多(とても多い)」意味することは香港でも知られており音は「たくさん」であらふかと推測。店の名も興味深いが看板の歌舞伎の役者絵、それっぽいがやはりどこか異様、異様は歌舞伎の神髄ながら違う意味で(笑)。さふいへば尖沙咀に「火間土」といふ高級日式料理屋もあり。これは九星気学の五行「火ハ灰ト成リ土ニ返ル」か……だが「火ノ間ニ土」ぢゃ単なる山火事の消化活動?、意味判らぬが読みはおそらく竃、釜戸の「かまど」のはず。いずれにせよ日本料理の現地化大いに結構なこと。太古坊でZ嬢と麦酒一飲みの予定がバス渋滞で遅れ失策。二度と搭るまじ。太古坊のTeresa Festivalなる店のケーキ購ふ(食後に賞味するが味に工夫足りず)。自宅にてチゲ鍋。首相小泉君自罠党総裁選にて当選。台風日本を襲い地震にて自罠党本部の歴代総裁の肖像画揺れる。祟り也。日刊ベリタに維港巨星匯(HK Harbour Fest)の記事送稿。
週刊読書人にて高原英理著『無垢の力』の書評(斎藤美奈子)にこの『無垢』からの引用あり、この本で映画『ロード・オブ・ザ・リングス』の少年フロドに触れて(といっても余は見ておらぬから知らぬが)「フロドの魅力とは、故意に他者を攻撃しない、またそういう力を予め持たない、被害は受けてもやり返すことの、ではない、そして世界を救うために自らを犠牲にして行動する、小さくて無力なゆえ登場人物中最も罪を持たない、可憐で無垢な存在であることなのだ」といふ一文に摂し、余は、厭だが、首相小泉三世が突然脳裏に浮かんだのは事実(笑)。小泉三世が他者を攻撃しておらぬとは思わぬ、が、少なくとも攻撃されても反論など言葉も思慮も足りず難しく、ただその言葉下手ゆへの直感的な一言「感動した!」の如き<発声>がウケ、実際には何もしておらぬが(=小さくて無力)表面的には「世界を救うために自らを犠牲にして行動する」が如く思われている姿もまさにこの少年フロド。周囲の大人たち(亀井静香チャン、広務君、山崎タフ、塩爺などどの先生方もまるで宮崎駿の動画に現れる空想上の生き物の如し)のなかで牛若丸の如く可憐で無垢な小泉像あり。如何であろうか。但し高原英理によれば少年フロドは戦乱渦巻くなかで「戦うな」「加害者となるな」と伝えているそうで、この点はイラクにの戦いにて加害者となりうる小泉君とは異なるか。
▼今日の信報「投資者日記」にて曹仁超曰く、日本の景気回復に対して、長期的にみれば最も悲観的材料は人口問題にて、長寿目出度くも百歳以上が二万人越え2010年には国民5人に1人が60歳以上の高齢化社会、2005年より2020年で人口毫か3%しか減らぬのに労働人口の減少は10%でGDPの下落は6.7%となりこの問題に対処すべく平均寿命の伸び鑑みて定年退職をば2025年までに65歳まで引上げる案あれど曹氏冷静に見て60歳以上の労働人口人件費高き割に生産力著しく堕ちるは明白、この人口老化現象こそ日本の景気に対する長期的展望での最も悲観的な材料、と。御意。労働力の移入以外に解決の手段なし。