富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

九月十八日(木)快晴。早朝にバスの中で読んだ『週刊読書人』に吉本隆明の特集記事あり。「もう勘弁してよ」と思ふが吉本でも『全詩集』の刊行に寄せて、で三浦雅士が「詩人としての」吉本先生への積極的評価。確かに。で頁捲ってゆくと『無垢の力「少年」表象文学論』といふ書籍あり。高原英理なる著者。折口、亂歩、足穗、三島と分り易いが、築地H君も気づくは山崎俊夫なる作家。後ちに調べてみると大正期の作家・山崎俊夫で学生時代に荷風先生に師事とあり余もH君も斷腸亭日剰にこの山崎青年の名前記憶になし。だが荷風先生をして「氏の有する繊細なる特種の感情は氏の芸術に独特の気分を与へ、その作品はわれ等を導いて全然未知の不可思議世界を探らしめる」賛嘆せしめる山崎。荷風先生の嫌悪著しき菊池寛も絶讃。それだけでもかなり興味深いところ作家活動ののち演劇に転じ女形役者を経験。六世歌右衛門の児太郎時代の家庭教師!も勤め……と、この件については久が原のT君の教え乞ひたきところ。その『無垢の力』の高原英理なる著者も興味深く大学で表現芸術の教鞭もとり『早稲田文學』の二年前の10月(つまり918の直後)の文章読めば確かに「侠気のある文章」(H君)。群像新人文学賞受賞せし氏の亂歩・三島の『黒蜥蜴』についての『語りの事故現場』ぜひ読みたく探すが上梓されておらず、意外なところで亂歩先生生誕の地名張氏にあるサイトに亂歩百物語あり其処に『語りの……』の転載見つけ一読。晩に北角の寿司・加藤。七月に某所で香港の都市史語る機会ありそのお礼に、と企画された方より招きあり。加藤七時半にはほぼ満席。盛況。福岡出身のH氏と二人だけ焼酎のみ薩摩白波一瓶干す。
▼多摩のD君より我らが心のオアシス(笑)産経新聞に見識あふれる記事あり報せあり。12日の農業自由化に抗議した韓国の農民自殺だが産経新聞になるとこれが「集団で圧力」「過激デモ横行」となる。「韓国では左派・革新政権との見方がある盧政権の誕生で」「盧政権自体が「国民参加の政権」を看板に、革新系を中心にNGOなどによる大衆運動を支持し歓迎してきたため」「労組や住民組織をはじめ各種の利益団体の要求が噴出し、デモや集会などによる集団圧力が蔓延している」そうで「相手が政府であれ企業であれ集団で圧力をかければ主張が通るといった風潮になっている」と産経の大嫌いな市民大衆運動。D君、失笑禁じ得ず、と。日本にも最近「いろいろな圧力団体」あり政府などに楯突くが、あれはよくて韓国の大衆運動はダメなのか。どうせなら扶桑社の「新しい歴史教科書」も努力して広範な大衆運動起こせば採択間違いなし、頑張れ産経!、とD君。