富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

九月十一日(木)晴。昨日よりhazyなる空模様。二年前の九月十一日からの日剰読み返す。当時の余の不安この二年にてますます現実に露見される。信報の社説は二年前の九月十一日の米国に対しては世界中がその米国に同情し米国側につきテロに立ち向かう姿勢示し英国はバッキンガム宮殿での衛兵の替兵式に星条旗掲げ米国国歌奏で仏独すら当時は米国と協調姿勢をとりたるがその後米国の独善的なる行動は今度は米国ぢたい脅威として世界中から反感買うが現実、と。その上で新保守主義者の台頭ありしが阿富汗と伊拉克での「解放」の失敗により海外での軍事侵攻には消極的な従来の保守主義者が復活の兆しあるが愛国法など人権蹂躙甚だしき法律まで登場したことへの懸念。紐育時報もForeign Views of U.S. Darken Since Sept. 11なる文章載せ世界各地からの声を紹介し米国の覇権を恐れているか、を紹介。この記事の中で気になるのは“In Japan, a strong American ally that feels insecure in the face of a hostile, nuclear-armed North Korea, there may be doubts about the wisdom of the American war on Iraq. But there seem to be far fewer doubts about the importance of American power generally to global stability.”と日本については結局のところ無思慮なる米国追従の姿勢がこうして米国内からも懸念ある事実。これは重要なことだが日本の“親米”層にはこの事実が理解できず。日本の新聞に目を通すが朝日の社説に米国覇権への懸念が多少見られるものの所詮その程度。読売は、先に紹介した信報であるとかNY Timesの冷静さに比べ今もって「行け、行け、Go Go!!!」の姿勢。これこそその“there seem to be far fewer doubts about the importance of American power generally to global stability”であるのだが読売ぢゃ嗤われることも到底理解できまひ。さてさて、そんな九一一から二周年の今日は中秋。中秋佳節人月團圓。夕方、正確には五時半にHappy ValleyにてK嬢と遭ふ。今晩の月見にお誘いしようかと思へばK嬢曰く、チョーサあり一緒に行くN嬢タクシーで来るを待っている、と。中秋の晩に仕事で調査とはこれまた不憫と立ち話。どうも話かみ合わず、ふと「もしやチョーサとは調査に非ず長沙?」と質せば「そう」と。今宵湖南省の長沙に参るはA氏、H氏にて飛行機は確か午後六時四十分発。K嬢曰く五時からN嬢乗ってくるタクシー待っているが未だ来ず、と。どう考えてもこれから香港站に向かい空港快速の列車に搭っては飛行機に間に合うはずなし。タクシーでそのまま空港まで飛ばしても間に合うかどうか微妙。携帯すら持たぬK嬢に代り空港のA氏に電話。すでに出境手続済ませたA氏曰くH氏がそろそろ来るであろうK嬢N嬢を航空会社のカウンター前で待っている、と。じつはそのK嬢がまだ市街、と伝えるとA氏もさすがに驚愕。話題のN嬢ようやく現れ本人ももうこのまま空港までタクシーで馳せる覚悟、運転手は突然のロングの客に「まかして合点」の笑み。タクシーが去ったのは五時三十七分なり。二人を見送り帰宅。六時三十三分にH氏より電話あり。無事、飛行機はいまタラップを離れる、と。二人も到着とはタクシーどれだけ飛ばしたのか計り知れず。日暮れ時に地下鉄でヴィクトリア公園での月見と提灯の綵燈会へと参る市民で賑わう天后。U女史と待ち合せミニバスで寶馬山。Z嬢そこで合流しすでに暗き山道をSir Cesil Rideまで登ればすでに中秋の月は東の空に上りたり。Quarry Bay Jogging Trail歩む。小馬山の東側縫ふ小径にて東の空開け早晩の月見には適した場所なれど吾ら三人の他は誰もおらず。絶景。草木の絶間よりKornhill見下ろす石段に腰掛け傍を流れる石清水の水音、秋の虫の鳴音など聞きつつ持参せしハイネケンの麦酒飲み月を愛でる。上空に上れば上るほど鮮明、見事な月となる。見事Mount Parker Rdまで下れば中秋で山に上がる輩多し。かつての提灯は今では安キャバレーのネオンの如き蛍光の棒、輪っかに代わり本人は一興のつもりが暗闇で醜悪なること甚だし。彼らの残した蛍光棒だのBBQでの残骸が明朝には山に散乱か。山を下りQuarry Bayと太古城の間Westlands Rd入った「らーめん函館」。恵比寿の黒生麦酒あり。烏賊の刺身だのげそ揚、餃子。焼酎のコップ売りなく一瓶でらーめん屋にてさすがに三人で空けるのもねぇといいつつ「いいちこ」。ちょうど日経Galleryなどの編輯されるS嬢とお連れが仕事帰り。S嬢にも焼酎一杯お振る舞ひ。気がつけば焼酎の一瓶などこの面子にては空くも当然。味噌らーめん食す。月を愛で焼酎に気分よく帰宅す。
▼久が原のT君より。先日聴いた道成寺での四代目清六の三味線、T君曰く名演とはいえその先代(親には非ず)三代目は「鬼をも取りひしぐ凄腕切れ者」にて「まず比較を絶する名人」だそうな。T君はその三代目が古靱(若き日の山城)相手に大正十二年録音の「合邦」あるそうでいつかそれを頂ける、と。ありがたし。その「合邦」は「嫉妬の亂行から手負ひ段切に至りてはさすがの大檀那の玉手御前も顔色なきやと申すべき三味線なり」とT君。ちなみに大檀那とは六代目歌右衛門のことでありんすぇ。
▼米国政府、欧州発米国行きの航空機の乗客につき「テロ防止のため個人情報を提供」を欧州の航空会社に依頼。米側の求める提供範囲は氏名、電話番号どころかクレジットカード番号から好みの料理にまで及ぶ。旅客の搭乗後直ちに情報を米側に提出、米当局は危険人物の割出しだとか。クレジットカード使い通販にて火薬の注文記録あり(ありえぬとはいへぬ)機内食にてモスリム料理をば求むれば即刻、危険人物(笑)。紐育JFKに到着すれば機体は空港警備隊に包囲され機内に乗り込んだ特殊部隊に拉致され秘密基地に連行され自白供与強いられる。映画「未来世紀ブラジル」は1985年は冗談で笑っていたられたがまさか20年後そういう時代になろうとは。
日本航空の機内誌見れば機内サービスのご案内の内容に不思議あり。ビジネスクラスのamenityは「歯磨き、髭剃り、耳栓、目隠し」ながら何故か耳栓と目隠しは「韓国、中国、香港、マニラ、グアム、サイパン線」を除く、と。短中距離路線が長距離路線よりサービス劣ることは理解できるが、歯磨き、髭剃りこそ長時間の搭乗に必要(アジア路線では髭も伸びず)、むしろグアム、サイパンを除く韓国、中国、香港、マニラ路線こそ客室の喧噪凄まじく耳栓、睡眠のための目隠しを欲さぬか。同じビジネスクラスで保湿マスクとアイリフレッシャー(醜悪なるカナ書き)の提供は何故か紐育、倫敦便のみ。機内着の提供が長距離便だけなのは理解できるが保湿マスクくらいどの路線でも積めぬものではないだろうし、保湿マスクくらいエコノミー客も欲すれば提供すべき。ちなみにかつてはビジネスでも供していた「ハニカムマスク」はファーストクラスのみでビジネスクラスは単なる保湿マスク。そこまで経費削減か。ところでハニカムマスク、初めてJAL機にて入手する際、てっきり「歯に咬む」マスクかと思いマスクの内側に歯で噛む部分あり、それで何らかの保湿効果あるものと想像し、機内で酒に酔ってZ嬢と「含羞(はにか)む」かもよ、と笑っていたもの。まさか蜂(honey)巣(comb)とは思いもせず。