富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

九月十日(水)昨晩、就寝直前に梅艷芳の癌公表後も続くマスコミの自宅張り込み取材などについてSCMP紙の記事を元に日刊ベリタに送稿。梅女史本人の記者会見でのマスコミへの取材抑制の希望も虚しく連日取材合戦。昨晩寝しなに矢野暢『「南進」の系譜』読み始める。1975年に矢野先生39歳で上梓から間もなくこの中公新書間違いなく読んでいるのだが八月に龍谷大学でK教授から話お聞きした時に京大でこの矢野先生の教え受けたK教授ゆえこの本の話題となり余は「読んだ」記憶あるが内容は断章すら記憶になし。記憶力の後退著しく再読を要す。先週の開催「台風のせいで」といふ嘘で取消となったHappy Valleyでの実質的な開幕戦。今季3戦目にして初めて競馬場にて観戦。明晩が中秋、競馬場にも朧ろながら月(写真)。中国からの観光客数えたら15名に競馬場職員3名つき競馬案内と指南。大陸からの客人などかつてなら一見して山窩の者とわかったが今では身なりも香港の居民と区別などつかず垢抜けたもの(写真)。遠くに見える一般席の混雑尻目に会員席にてお客様待遇。第5戦で1〜3着見事命中。先週の開幕戦を逃した馬主C氏のDashing Championが第8戦第三班1200mに騎手Whyte君で参戦。倍率は予想通り2.0倍で一番人気。出走で勇むDCをさすがWhyte君うまく三番手につけ(これが李格力君だと手綱弛めてハナをとるのだが)勝ちレース。馬主C氏及び二人の息子君出張にて不在。C夫人のみ来場。本来は先週の開幕戦にて快勝して翌週を出張に当てたC氏にとっては口惜しいところ。C氏の舍弟氏に招かれ口取りに参列(写真)。今晩、財致がHappy Valleyの一哩で最速時間を2.6秒縮め1.38.9、喜飛勝将も1000mで0.56.5と記録更新。全8戦の時計が平均で標準時間を1.55秒上回る。騎手Whyte君は全8戦で3冠2亜2李1負、今季3開催日で入賞率57.7%と絶好調。帰宅して矢野暢『「南進」の系譜』読了す。独逸のレニ=リーフェンシュタール監督逝去享年101歳。ナチスドイツのベルリン五輪の映像『民族の祭典』をいったい何時何処で見たのか記憶も曖昧。鮮烈なる印象は澁谷のパルコの書店にてアフリカのヌバ族を撮影した写真集『Nuba』に魅入った時の衝撃にてそれがレニであることに更に愕く。出版は80年で当時5,700円のこれは購えず。当時、ハーブ=リッツであるとかメイプルソープの写真も確かこの書店で知った記憶あり。澁谷が「まだぎりぎり」大人の街であった時代。
▼築地のH君より日刊ベリタに記事書く際に「富柏村」ぢゃなく「柏村富」とあるのは政治的使い分け?(笑)と質問あり。これは富柏村であるべきところ編集部より「偏見はないが」読者が記者が中国人と思った場合で政治絡みの記事など読み方が異なるわけで寧ろ日本人とわかる名前で香港で客観的な報道としたほうがいいのでは?と打診あり「そういう読者の感想ぢたい偏見ではないか?」「もし余が在日華僑とかであった場合は?」とか、その発想では結局在日でも日本名に改名が必要ということになりゃしないか?など疑問多かれど渋々それに従い、それなら、と富柏村を柏村富としたのだが、H君曰く「かしむらとみ」って、荷風先生が偏奇館で雇ってた飯炊きの下女みたいだ、と(笑)。確かに。
▼築地のH君、委員長・亀井静香、書記長・野中広務で「大きな政府戦後民主主義擁護」を掲げて社民党統一会派結成、当面の政治課題は、自衛隊イラク派兵阻止と小泉内閣打倒、といふのは如何か、と。どうせなら共産党と暫定的統一会派結成も面白いかも。するとH君、1972年頃の赤瀬川原平氏の「贋新聞」に確か「自共新総裁に宮本顕治氏。プロレタリア執権内閣組閣」「東京都知事野坂昭如氏。美濃部氏(自共)破り、初の闇市都政誕生へ。石原氏は善戦及ばず完敗」「田中角栄氏にノーベル一級建築士賞」といふのがあったはず、と。パロディのはずが実際に 自社さ政権、青島都知事佐藤栄作ノーベル賞といふ冗談の如きものが赤瀬川氏の想像とはいずれもちょっとずつズレてはいるが実現してしまったことの凄さ。赤瀬川氏が凄いというよか日本社会の逸脱ぶりがもの凄い、とH君。
▼SCMP紙に中国政府の公安局が作製した警官用の英語学習ハンドブック“Olympic Security English”の内容を紹介あり。通常の道案内などに加え法輪功、外国人ジャーナリスト、テロリスト、ウイグル独立運動の活動家などの取締りでのケースが想定されている。第1課から余念なく最初は少年と少女が“Hello, Sir”と“Welcome to Beijing”で始まるのだが、いきなり「いかに不法なニュース取材を取り締まるか」となる。もし記者が法輪功を取材している場合、警官は「法輪功はオリンピックと関係ない。この取材はあなたの取材制限を越えている」と指摘。記者の取材は不法であり公安局で事実関係を調査することを告げる。他の課では、アフガニスタン人がホテルの部屋に侵入しようとしている場合を想定。この不審者は尋問に対して「この部屋に米国人の客が宿泊している。俺は復讐したい。米国がアフガニスタンを爆撃して俺の家族は殺され、俺はホームレスになった。米国人を憎んでいる」と言う。それに対して警官の答えは「同情はする。しかしこの行為は罪のない米国市民を狙ったもので不法行為であり、とくにオリンピック開催期間に社会混乱を招くものだ」と説明。ウイグル独立分子が北京のウイグル人居住区で自爆テロという通報が警察に入る。この課で習得する英語のポイントは自爆テロリストが潜む部屋のドアを蹴り開けて「手を上げろ、動くな!」だけ(笑)。自爆テロ相手にこれじゃ爆発に巻き込まれる。テロ分子は警察の取り調べに対して、タリバーンでテロ活動の訓練を積んだ仲間が北京の銀行を襲撃すること、を暴露とか、ウイグルの無頼漢を集めたパキスタン人の泥棒集団だの、ウイグル偏見ばかり。また警察に「あなたたちは私の人権を蹂躪している。抗議する!」と怒鳴り込んで来るのは「ヘレンという名前の香港に暮らす英国婦人」というのもいかにも。それに対しては「嘘を言うな、動くな」と。これはマジ。心温まるシーンもある。財布をタクシーに置き忘れた客は現金も抜かれることないまま財布が戻ってきた。そこで「財布がそのまま戻ってくるなんて信じられない! それが可能なのは北京だけだ!」と感激する客。また地震で被害のあったビルから救助された外国人は感無量で「私の生命を救ってくれた中国人のことを一生忘れません。本当にありがとう、中国の警察に感謝します」と言う。北朝鮮を嗤えぬプロパガンダか。論評含めた記事としては日刊ベリタを拝読希ふ。