富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

九月八日(月)人前に出ずるも恥ずかしき顔面の日焼け、火膨れの如し。夕方にO氏仕事にてお会いするがO氏に「遅くに済みません」と言われ時間はまだ五時過ぎ。「全然遅くなどないですよ」と応えつつO氏がこの日剰お読みになっていると思えば余の黄昏時の暮しぶりO氏には明白にて弁明もできずか(汗)。紀伊国屋より届きし書籍多し。太田昌国『拉致異論』太田出版磯崎新『建築における日本的なもの』新潮社、子安宣邦『アジアはどう語られてきたか』藤原書店、同『漢字論』岩波書店大西巨人『迷宮』光文社文庫……いったいいつ読むのか到底判らず。それにしても最近の署名、「」の利用甚だし。実は正確には『「拉致」異論』『建築における「日本的なもの」』『「アジア」はどう語られてきたか』と「」ばかり。何故か。今回のお買い上げのうちお宝はCD-ROMの白川静『字通』平凡社にて自らのPCに畏友M君より頂いた『広辞苑』と『現代用語の基礎知識』にこの『字通』あれば何も他に要らず。車雇い帰宅して『字通』をばPC村正に収納し、八月に久が原が住人畏友T君より頂戴せし豊竹山城少掾(とよたけやましろのしょうじょう)のご存知「菅原伝授手習鏡〜道明寺の段」聴く。昭和22年8月の録音。浄瑠璃太夫には国名とともに大掾・掾・少掾の位授けらるる仕来りあり、豊竹山城少掾はこの年の3月秩父宮家より掾位を受けたる名。豊竹山城少掾は余はその名前を知るのみにてこの道明寺聴きただただ惚れるばかり。山城少掾は当然としてもその相三味線奏でる四代目鶴澤清六の三味線、それは喩えればジミ・ヘンドリックス。山城少掾と清六が近代の義太夫に於いて随一の一双とはバド・パウウェルとマックス・ローチの如し、とかういふ表現ではかつての平岡正明か。実はT君より頂いたはMDにて余はMDなく原始的なるテープに落としたが数年ぶりに使ったB&Oのテープ機能作動せず結局D嬢にMDをばMP3に落としCD-Rにて受領せし次第。荷風日記(昭和12年6月)に円タクよび荷風先生「仲までいくらで行くかと問う」と円タクの運転手に「仲とはどこですときヽかへされて初めて此の言葉の既に廃語となりしに心づきたり」とあり。平成の今の世とて余と未だ「仲で」などといひあふH君だの久が原のT君だのN兄には花街の言葉の名残りあり。仲はちなみに当時は吉原の大手筋。「ちょんのま」だの「金魚の刺身」だの佛語mouquereどころか「お茶挽き」すら廃語のご時世なり。
自民党の総裁選、亀井静香チャンに是非頑張ってほしいものの、小泉三世の長嶋的なる直感の言葉の冴え=何も考えてないが打てば「野生の勘」にてヒットする、に比べ静香チャンは考えてしまふ分言葉に冴えなし。言葉に冴えぬのなら曾ての首相大平君の如く鈍牛のほうがまだ笑える分ウケ良く、静香チャンの余りに良識的なる物言いは結局、岩波の文章が読んでツマラぬのと同じ。ところでNHKによる世論調査にて小泉内閣支持率は前回調査より8%上がり61%で支持の原因は「他の内閣より信頼できる」が最も多く(といってもこれを挙げた者のどれだけが三代、五代前までの首相を列挙できるか疑問)「人柄が信頼できる」がそれに次ぐ。これは民度の低さ以外の何ものでもなく、つまりその民度にいかに小泉三世が「フィットしているか」といふこと……といいたいがせめてもの希望は良識あればNHKの電話での世論調査に拒否する者も少なからず。放送局の世論調査に歓び応えるは所詮小泉支持の層とかなり通じるものあるはず。