富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2003-08-04

八月初四日(月)うす曇。晴。昨朝の吉野家の朝定に続きコンビニのおにぎり食すも日本での一つの楽しみにてコシヒカリ米の高級おにぎり食す。牛乳も美味。今回の日本にてはいろいろ朝食も楽しみにてホテルを朝食込みにせず、偶然にも奈良ホテルを常宿とするといふ久が原のT君より此処の朝食けして評価できぬとメールにあり。ホテルを出て福智院北の交差点より志賀直哉旧居経て東海自然道として整備免れしかつての柳生街道の古道を瀧澤道より上り始め寝佛、夕日観音と朝日観音を拝み首切り地蔵、澤の水音心地よく苔むす石坂道は風も涼し。ここより地獄谷窟の石佛、渓谷の緑の深さに感嘆するばかり。杉の木など草木の香、酔ふほど。山の暑さには香港にて慣れていても草の臭いに咽るばかりで木の香など嗅いだこともなし。峠に茶屋あり草団子と生姜湯。山間の集落を経て小一時間で円成寺。ここまで三時間の山歩き。山間の古刹は1228年に奈良の春日大社造営にて当時の大社神主藤原時定が旧社殿をば寄進したといふ極めて素朴な春日造舎殿の春日堂と白山堂、運慶の大日如来像など。暫し佇みたきものの昼すぎのバス逃せば二時間待たねばならず慌てて忍辱山(にんにくせん)のバス停より奈良市街にバスにて戻る。日本のラーメン食したく市街にてらーめん屋昨日より探すが何故にか天平の古に唐土とのかかわりあり平城の都にシナ料理見つからず。三条通モスバーガーにてモスバーガーとテリヤキバーガー食す。モスバーガーは香港にての開業願いしところかつてヤオハン香港にて展開の真しやかなる噂ありしもののヤオハンの倒産以来一切噂もなし。日本に戻れば一度は食したき即席食。食後に午後はまたバスにて岩船寺口に向かい少し歩けば奈良から京都は加茂町に入り石船寺。石佛をいくつも拝みつつ小一時間にて当小の村落に至れば参道に立入り禁止とされた階段あり林の向こうに祠あり。この山間に天皇稜でもあるまひに不可思議。浄瑠璃寺参拝。浄土のお庭に阿弥陀堂あり九体の阿弥陀如来像拝む。山採りの野花にZ嬢いたく悦びたり。三重塔(写真)。門前の吉祥庵なる蕎麦屋。何処かの茶室移築したのか趣ある庵にて蕎麦も秀逸だが喜仙寿なる酒もよし。Z嬢の葛きりも手作りの歯応えは格別。この山間の浄瑠璃寺まで来る意味は充分にあり。バスで市街に戻り市街横ぎりホテルに戻る。晩のニュース見れば日本各地で最高気温、京都も35度を超えていたとか。だが山間は木陰に入れば涼風ありけして猛暑とは感じもせず。久が原のT君よりホテルから至近、道を渡り路地を入ってすぐの温石(おんじゃく)なる料理屋を辻留仕込みの味と勧められるが昼間の野辺歩きに疲れ出かけられずホテルの主餐庁三笠にて夕食。古きホテルの料理屋はけして奇を衒つ料理出すものに非ず三笠もいい意味で尋常なる料理供す。セットメニューに「高円(たかまど)」なるメニューあり理知的なる高円宮様を彷彿せざるを得ず。このメニュー、お亡くなりになつた宮様のお名前頂戴するは宮様に何か由縁ありなのかどうか畏れ多く尋ねもできず。黒服になりしばかりといふ懸命なる女性の給仕ぶり心地よく静かに晩餐いただく。だが音楽ばかりはCBSソニーファミリークラブででも通販されるクラシック名曲集の如きが少なくとも二時間で三度は同じ曲かかり呆れる。食堂には日本に現存するなかで最も古いグランドピアノの一つといふスタンヱイのピアノありZ嬢興味もち帰りがけに黒服氏に尋ねればもう傷みひどく今は弾くこともなし、と。詳しく見たところまだまだ現役に耐える代物にて弦をば張替え壊れたといふペダル修理してでも使うべき。いずれにせよピアノの上にシャンペンのマグナムボトルなど平気で置く無神経は断じて許せずピアノの形が壊れますゆえシャンペンボトルは退かすべき、と提案差し上げる。Z嬢曰く古きスタンヱイといへば思い出すはマニラのマニラホテルの酒場で随分と前にジャズバンドのピアノ弾きが奏でるグランドピアノにて見るからに古くペダルなど壊れているようだが極めて愛しき音色にバンドの演奏終わり帰りがえてらにZ嬢ピアノに触はるを請えば快諾されさらりと触れるととても古いスタンヱイにてピアノもこうして使われれば幸甚であらふ、と感じ入ることを彷彿。部屋に戻りスマスマ見る。日本に戻り三晩テレビ見つつバランタインの17年ちびちびと飲み続け。
▼朝起きると部屋に届きたるは産経新聞。客に断りもなく産経配るとはさすが皇族方が奈良にて常宿とされるこのホテルだけのことはあると納得(笑)。朝イチで石原慎太郎の「日本よ」なる一面の文章読まされ眩暈。相変わらずの東京にてのシナ人いかに迷惑か論調は驚きもせぬが何時の世も文明だの経済に格差あり劣等地の民が潤う地に参るは当然、日本はまさに様々な民族が混じったことによって生まれた国際的なる混血の民族にて、で、日本はこのような時代であるからこそ積極的な移民受け入れ政策をとるべき、といくら読んでもその脈絡のなさに、この都知事長嶋茂雄先生にも至るとも劣らぬ思考にただただ驚くばかり。否、長嶋先生は天才であり、この愚才と一緒にしては長嶋先生に失礼か。石原ならきっと他民族排斥にて日本の純血性を守る、と思うとそうではなく、この人は結論だけとれば余も納得する移民受入れなくして日本の将来なし、といふこと。本当にこの人の思想はよくわからず。寧ろ思想などない、と思えば納得も易いか。