富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2003-08-03

八月初三日(日)快晴。金曜にせし独逸蹴球の賭博、3戦とも勝敗予想当り4組合せ計で15倍ほどの配当となる。これが続くまひが。朝、人形町散歩。玉ひで、京粕漬の魚久、鯛焼きの柳屋にZ嬢葛ら行李十数年前に作った岩井つづら店など懐かしき店々。夢にまで見た吉野家の朝定食。満足至極。日テレのザ・サンデーなる番組にて北朝鮮拉致でレインボーブリッジなるNPOが拉致者家族の子供らに面会し手紙や写真など持ち帰った件取り上げこの団体の背景など不明な点多いこと指摘し知ったか顔の徳光センセイ「本来こういう手紙は政府間でやり取りされるべきで」とそこまでは正論だが「安倍副長官に届くならわかるが」と。本来政府間交渉なら担当大臣でもなき内閣官房副長官の安倍二世に届くことはあり得ず、たんに安倍君が北朝鮮などかなりかかわって勢力つけていることを徳光センセイは全く自然なこととして発言。無思慮。いずれにせよ日曜の朝に素人集まり憶測ばかりで北朝鮮といふ「国家」について勝手に語る様、井の中の蛙。タクシー雇ひ東京駅。コンコースにて階段、段差の連続に閉口す。新幹線のホームの狭い待合室、中国の火車站でも広い候車室に搭乗客数に間に合ふ数の席用意されるに比べ、新幹線では難民の如く収容されし乗客。搭乗客数に比べ駅舎圧倒的に規模小さすぎ。成田の第2ターミナルの到着出口に狭さに比べれば八重洲口の広さなど十分だが、如何せん改札を抜けると元来昭和39年の東海道新幹線にだけ宛がわれた容量にこの新幹線の集中は異常。車内は夏休みの日曜日にて家族連れ多し。子供うるさきは耳栓して対応するが家族連れの多くが午前10時といふ朝でも昼でもなき時間にスナック菓子食い横浜崎陽軒の焼売の車内販売あればそれを食し親は親で焼売だのするめ烏賊などでビール飲み安っぽき臭い車内に充満し耐え切れず。少なくともこの家族観光なるもの、百数年前にロンドンよりブライトンに鉄道走り日帰り観光をトーマスクックが売り出したが初め、当時から行楽の飲み食いはあろうが、まだ窓のあく列車であったは幸甚のはず。隣の席の家族が明るく楽しくインターネットよりゲットせし「奈良物知りクイズ」など父親が司会で始まりNHKのクイズ番組見るが如し。京都に到着、すぐに奈良行きのRapid列車あり。奈良に到着しタクシー雇ひ奈良ホテル(写真)に投宿。日本のこうした古い格式あるホテルは十五年ほど前にZ嬢と日光金谷ホテルに泊まって以来のことか。荷物解きホテルより外出。奈良県庁横で悪態なる餓鬼の仕業であろう落書き(写真)を見れば、これも白の塗料にて風景にどこか馴染み、不良とて奈良の品ありか、と妙に納得。だがこのあと市街にてかなりの商店の壁だのシャッターにスプレーの落書きあり奈良市街はブロンクスの如し。遅めの昼食に奈良公園横の天極堂にて葛うどん、葛きりに葛酒と葛つくし。葛酒(くずしゅ)は葛と山田錦にて作った酒にてわずかな甘みで美味。Z嬢と別れ独り奈良国立博物館。小学4年だったかに一つ年上の従兄弟と奈良京都に遊び中学で修学旅行に来ても国博と興福寺の国宝館訪れておらず数十年ぶりの奈良ゆえ。国博にてはインドとガンダーラの彫刻展開催され殊にガンダーラの彫刻は圧巻。泰西と東洋の美しさ見事に融合し2〜3世紀のPeshawar博物館像の釈迦菩薩坐像に惚れ入る。旧館にて唐招提寺薬師如来像だの岡寺の義淵僧正坐像だの興福寺緊那羅立像など。興福寺(写真)の国宝館。千手観音像が中央に安置されその周囲に白鳳の薬師如来仏頭だの阿修羅像だの法相六祖坐像だの金剛力士像といった誰もが知る見事な像、像、像。余にこれを言葉に出来ず。国宝館の売店にて厄除けの腕輪数珠購うと余の干支の守護仏は文殊菩薩だそうな。世の根本を観る智恵の徳を象徴するのだそうでそれに少しは肖りたきもの。市街に出てビブレだの無印良品にて買物。ビブレ傍のふらりと入ったフジケイ堂なる古本屋に岩波の荷風全集(昭和39年)の昭和46年第二版が29巻揃いの美本(箱は日焼けしているが中身は読まれた形跡もなし)で5,800円にて売られており1冊200円と余計な表示まで。これは奇遇と早速手打ち、東京のホテルまで配送を託す。奈良団扇で有名な池田含香堂にて丁度いい扇子を見つけ購ふ。奈良町の菓子処なかにしにて葛桜と奈良町団子夕食後にでもと購ふ。下御門町の十月書林といふ名前だけ見る人が見れば共産主義関連ばかりだが、此処がふらりと覘くと店ごと欲しいほどの本の揃いぶりで左翼文献はさることながら鳥居龍蔵著作集から泉鏡花全集、三島渋澤のじゅうぶんに揃い中江丑吉書簡集もわが書斎以外で初めて見る。鴎外全集のだいぶこれも美本がありきっと値段を尋ねたら即「買い」であろうと察し今回は荷風全集だけでもかなりの量で鴎外は怖くて値段尋ねず。Z嬢と待ち合わせ平宗奈良店(ひらそうならみせ)にて胡麻豆腐、精進天麩羅、鮎寿司と柿の葉寿司(写真)二人前。美味。一旦ホテルに戻り旧館の古風なるバーにて一飲。そのへんのホテルとは格の違い見せつける、殊にシングルモルトの収蔵は大したもの。給仕も立派で流石と敬服。だが結婚式ですっかり出来上がったらしい白ネクタイの常連らしき野暮な男がひとり気勢を上げカウンターで給仕らにからむ姿は醜悪。まだ時間は八時にてバーから興福寺五重塔のうっすらと光る照明も美しく散歩(写真)。三日月も奈良にあると殊更よし。猿澤池から興福寺五重塔など石柱など利用し写真機固定して8〜16秒で撮影してみるが果たしてどう写るか。三条通を西に下り讃岐うどんの「はなまる」の店あり先週だか日経に讃岐うどんチェーンがブームとこの「はままる」も紹介されていたのを覚えており「ぶっかけ」のうどん夜食にと食す。また散歩してホテルに戻る。古いホテルにて期待もせず、どころか部屋にモデムながらちゃんとインターネット接続用のジャック設けられ少なからぬ驚き。だが奈良のアクセスポイントにうまくつながらず苦戦三更に至る。