富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

七月廿五日(金)台風海南島のほうへと去り余波にて驟雨幾度かあり。日刊ベリタより電文拝領。今後記事送稿。『世界』八月号でこの新聞を知りサイードチョムスキーの言葉をそこに見て、その紙面一読してその報道姿勢に共鳴し記事の送稿謹んで引受ける。いつものことだが「まずは道具」と(笑)時事ネタを追おうと思えばやはりラジオは必要、と言い訳、帰宅途中に銅鑼灣のSony StyleにてICF-SW100なる高性能ラジオ購ふ。ラジオである、ラジオ。インターネットの時代、インターネットでラジオ放送が聞ける時代に今どきラジオ、しかも日本での定価54,000円のラジオはもはや基地外アイテム。Sonyの製品でこれは汎用では最高機種SW77に続く小型高性能。誰も理解できまひ。だが小学生の頃にBCLの虜となりドイチェベレからアンデスの声、そしてアジアは平壌放送にて偉大なる領袖の主体思想に拝し北京放送から文化大革命プロパガンダを得た少年は老いてもラジオ愛す。帰宅して鯛のあら煮食す。日刊ベリタにアンテナ記事二本書き送る。いくつかたまった雑事片付け四更に至る。Bowmore一飲。シングルモルトのヰイスキーに一時凝り個性豊かな味も当然美味く面白いがシングルモルト楽しむことはいわばスポヲツの楽しみに似て厳しい事の向ふに快楽あり。つまり心と肉体を癒すにはシングルモルトは合わずブレンドヰイスキーこそ疲れ癒し安眠を誘ふと悟る今日この頃。
▼本日の新聞に昨日退任せし保安局長葉劉淑儀の退任に際しての返礼広告あり。いくら御用団体及び個人より退任で厚遇を受けたとはいえ一公務員が一身上の都合で退任する場合に個人広告を新聞に載せるだろうか。やはり尋常でなし。
▼沖縄より香港訪れしモヒカン髪も精悍なるモックン似の凛々しい19歳の青年、21日の新聞にホテルより失踪と記事になったが、実は香港島にて壮絶なるサバイバル4日続けホテルにたどり着く、とSCMP紙の1面に記事あり(通常の余の判断ではこのテの被害者?のお写真など余は掲載せぬがご本人がキメた顔で写真にまで写るほどの度胸にて敢えて多少ボカして掲載した次第)。この青年、先週末に赤柱(Stanley)観光せば地場の青年にわずかHK$80の現金を鞄ごと引っ手繰られ一文なしに。彼の職業は海外の日本人相手にワックス掃除用品売るセールスにてこれまでにシンガポールだの台湾にも渡航経験あり。だが助け求めようにも中国語は当然英語が全く話せずどうすることもできず。人に近づけば柄の悪い青年に近づかれたかと勘違いされ物乞いだと思われ避けられ、とにかく中環まで歩こうとバス路線に沿って歩き出したが疲労と空腹に襲われ、さすがに何人か助け求めても相手にされず警邏中の警官も言葉わからねば紙に書けと言われ書いても警官それを解さず去る始末。4日かけて!中環へと着き(余でも走って3時間あれば到着しよう)次なる関門はビクトリアハーバー(笑)。ホテルに戻るにはフェリーに乗らねばならず。そこで青年、小銭拾いに精を出し目標額はHK$2.20のスターフェリー運賃。3日かけてHK$2.20を集め!念願のフェリーにて九龍に渡り(実はフェリーは二等ならHK$1.70で乗船可、とSCMP紙も揶揄……笑)ホテルにたどり着いた次第。何故に助けの一つ求められなかったのか不思議だが、台湾でもすでに二度引っ手繰りの類の被害受けており、その際も誰も助けてくれず、それがトラウマとなり今度もサバイバルに徹したそうな。10数年前に空港にて「ツアー同行者とはぐれ絶望し」空港近くを徘徊、工事現場にあった可燃性の石油だかかぶり焼身自殺図り助けられた事件あり。それに比べれば九龍のホテルまで生還の心意気だけでも立派と誉めるべきか(笑)。