富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

七月廿ニ日(火)余の日剰五月ニ、三、九日に綴りたる香港映画祭にての通し劵に関する主催者及び香港電影資料館の不誠実なる対応につき香港政府廉政公署に訴えし件、廉政公署より途中経過と連絡あり主催者側この非を認め返金に応ずることも検討の余地あり、と。直接その示談に入るか更に一ヶ月待ち廉政公署の沙汰待つかの選択あり。余はこの通し劵にて小津特集見れぬは事実乍ら第一部の四月の開催期間内に十分に映画堪能せし事実あり、せめて小津映画鑑賞に費やしたる費用のみ余分の出費にてそれ還付されれば十分と判断でき半額程度の返金あれば利に適ひ次回開催以降にこの点明確なる指示あらば満足と申す。一ヶ月ほど廉政公署の調停待つ。夕方に湾仔春園街の楊来雷にて涼茶。ジムにて鍛錬。藝術中心にてLarry Clarkの“Ken Park”観る。香港映画祭にて見逃し民間での上映待ったが内容猥褻と一部削除され其観たれば見応えなし。猥褻なる箇所は少年のタオルにて首絞しめつつの自慰と射精、少年二人と少女による本番並びに口交の場面。それだけ凝視すれば猥褻なる見方もあろうが少年の自慰は精神病み閉ざされた世界にてプロテニスの女子シングルスの試合テレビ中継眺めつつその選手の放つ声と精悍さに感じ入っての興奮、少年少女の3Pも虚実ばかりの世界と親世代の政治的なる性に対しての若者の自由謳歌にて映画の主題からして削除できぬ重要なるシーンなり。この削除版上映に対して藝術中心削除なしの原版上映決定した次第。民間の上映にて猥褻と削除を公営の藝術中心が原版上映とは日本にては考えられぬこと。香港にlibertyあり。原版見てこの映画の素晴らしさ改めて認識。この作品何故に米国にて上映できぬか、核心は米国掲げたる表面上の良識に対して実は存在せしnegativeなる世界の暴露ゆえ。米国にとってイスラム原理主義のテロが表面上の敵であるならLarry Clarkの如きは内なる米国への挑戦にて許せず。二更に北角の寿司加藤。独り新聞読みつつ、螺貝をつまみ熱燗一飲。ふと近隣に住まふH兄を電話にて招飲。握り食す。H兄と談義三更に至る。英国首相ブレア君一連の東亜細亜歴訪の最後に香港に到着す。本国にてはイラク侵略での情報操作とBBC報道に絡む軍事専門家謎の自殺ありブレア首相への不信及び辞任要求の声高まり東亜歴訪どころの場合でなし。
▼連日数数多の塵芥メール受取る。英国MessageLabsの調査によれば塵芥メール出回る率このところ甚だしき高騰見せ本年一月平均4.1通につき1通の迷惑メール届きしところ四月には2.05通に1通。つまり2本に1本はわけのわからぬメール受取る事実。欧州連盟の数字に拠れば2001年に塵芥メールの徘徊ゆえに全世界にて英?64億浪費され5億四千四百万人のネット利用者にて割れば一人あたり英?12の損失と。ビジネス上メール処理に日の平均49分を費やし8時間労働ならば約1割がそれ。そこでゴミメールの処理していることの無駄。ちなみに中国のネット利用者6800万人に達す。現状にてはほぼ規制できぬ環境にて自由なる情報の流通あり表面上規制されし世界にてネット活躍。6800万人は人口比でいえば僅か5%ながら着実に知識層、ビジネス層がこれに該当。
▼いつも『信報』ばかりの引用で気が引けるが新聞紙一紙にこれだけ読むに値する記事、論文が載る事実を日本の読むに値せぬ記事多き新聞は真摯に反省を要すが先日の林行止「専欄」は環境問題を取上げ、地球の生活環境は悪くなったとばかり言われるが経済学者として見れば地球の人口は1964年を最高に現在は減少傾向にあり、それに対して穀物生産は60年を100とした場合に80年代中葉には135まで増加し現在でも115を維持し穀物(小麦)価格も50年代に比べ六分の一にまで下落。勿論これが南北格差などの問題を引き起こしていることは明白だが、それは富の分配や不均衡、政治的な問題であり、純粋な生産と価格の問題とは異なること。また環境保護で化学肥料の使用も問題になっているが50年代に先進国で使われていた化学肥料を100とすると90年代には560まで増大したが現在では460まで減少していることは無農薬への関心の高まり。動物の種の絶滅も懸念されるが20世紀後半で途絶えた動物は全種の0.7%に過ぎず貴重ではあるが自然淘汰の範囲と解される。上水道も70年代に全世帯の30%に普及していたものが80%にまで上昇、風呂とシャワー設備が家屋にある比率も22%→58%、慢性病と流行病の感染者数も70年代に10万人中450名だったのが80名にまで減少。総じていえることは工業化が地球環境破壊の主因とされるが明らかに環境改善が図られている部分もある。そして環境問題で重要なことは先進国ほどそれに声を大とするが非先進国にとっては環境問題など優先していては経済発展もあり得ず、またソ連や東歐の社会主義国家が実は環境問題については資本主義国家より深刻な状況にあったことも事実。環境問題について一つ提言できるととして林行止が挙げるのは1968年にScience誌にG. Hardinが述べた“Freedam in a Common brings ruin to all”なる概念にて「地権者が明確でなく自由放任された土地や河川は荒れる一方」であり、これが意味するところは地産管理が上手くいけば地産は有効に活用されるということ。林行止らしい徹底した経済学としての分析。だが環境破壊でも世界的な海洋の水質、大気汚染及びオゾン層破壊などの問題についてはこの数理論では問題が解決されず。