富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

六月十二日(木)曇り時々驟雨。エルサレムにてパレスチナ過激派による自爆テロあり17人死亡しイスラエル報復攻撃に出て早くも中東和平危機に。結局ブッシュによる力で抑える和平など困難なこと明らか。で米政府はブッシュが「最も強い言葉で非難している」と。ブッシュの「最も強い言葉」とはXxxx!とかsome of xxxxx! であってホワイトハウスにて報道官がとても口に出来ぬのだろうか。『噂の真相』7月号でいつも痛快な連載の中森明夫先生がとんでもないことをやってくれる。村上春樹の『ライ麦』批判、しかも村上春樹を「ヘドが出るほどのインチキ野郎」って野崎っぽい文体パロディにしてるんだから。村上春樹を「奴さん」って呼ぶなんで、ほんと野崎訳好きな読者には目から涙だして笑いたいくらいたまらないわけで、結局「去年『浜辺のカフカ』が出なかったら新潮社の社員なんか虫に「変身」してたっていう」わけで「白水社の社員が臨時ボーナスを欲しかった」から出してしまったのが村上訳本、中森先生は「僕がなりたいものといったら文壇畑のつかまえ役さ。インチキな作家たちをつかまえて崖下に突き落としてやるんだ。でも、たぶん村上春樹は殺しても死なないね。インチキな世界では一番インチキな奴こそが王様なんだよ」と。先生の罵声止まるところ知らず“The Catcher in the Lie”『嘘つき(春樹)をつかまえて』だそうな。メモ書きでも更に村上訳の『ライ麦』を「誰も悪く書かない」ことに触れ斎藤(L文学)美奈子が村上本を「翻訳のリフォーム」と言ったことに対して「ガウディの建築物を空間プロデューサーの山本コテツがリフォームした」ようなもの、と揶揄。御意。溜飲下がる思い。Larry Clark監督作品“Ken Park”香港映画祭にて見逃したもの映画館に掛かったので見る。十代の少年少女の本番だの口交だの父による息子へのレイプだの自慰の大写しだのが香港映画祭での上映後よからぬ関心をよび劇場上映では検定で数箇所削除される。七月の芸術中心での上映では編集せず原本で公開とのこと。いずれにせよ確かに上述のシーンなど露骨ではあるが見ればわかるがエロ映画ではなくカリフォルニアを舞台に「かなり病んだ」社会の描写であり、寧ろ少年少女らの性表現はそういった病んだ世界で病んでいない行為の象徴として描かれており、猥褻でもなんでもない。義父による寝ている息子へのフェラチオ行為とて息子にしてみたら「とんだ迷惑」だが、これとて典型的なホモフォビアで強い父を演じるこの男が息子にその変態行為に蹴り飛ばされた時に「誰も俺を愛してくれない」と泣くシーンにしても、ボーイフレンドをベッドに縛ってSM楽しんでいた娘に激怒する敬虔なクリスチャンの父親が処女ではない娘を汚れたことを理由に自らの妻にしてしまう行為も、いずれも権威だの倫理だのといったものの裏返しのインチキぶりを吐露。この映画、猥褻であるということを理由に、そしてキリスト教への冒涜が問題なのだろうが、製作された米国はじめ数カ国で上映禁止、大幅な修正が求められている。ホモフォビアの義父、実は娘を精神的に犯してしまっている敬虔なクリスチャンの父親、軍役時代の栄光だけに活きる老人など実に政治的な権威の装置、それが完全にイカれてしまっていて、そこに押し込まれている若者はセックスとドラッグで息が詰るのをどうにか凌いでいる、という社会をまざまざと見せつけられる。地下鉄の中など少しずつ『神聖喜劇』読む。