富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

六月十一日(水)雨ノチ曇。黄昏に銅鑼灣のInside Out(日曜日にEast Endと綴ったが)雨上がり屋外にてStella Artois一飲。心地よし。競馬予想。Z嬢来。Stella Artois小杯一飲しThe Lee GardenのHermesにてZ嬢より誕生日のお祝いと馬と騎手の柄のネクタイ(……と書くとかなりエグい馬主タイを想像するがHermesだけあってよく見ると小さな愛らしい馬とおどけた騎手が草むらに在る)頂く。競馬での銅鑼灣の渋滞抜けて東区走廊に出ると日暮れにて先週末から続いた雨雲晴れて大嶼山のほうに夕焼け、雨で大気も洗われ塵も流され雲の絶間から大帽山だの飛鵞山だのと稜線もかなり鮮やかに映り絶景。帰宅して鰻丼。ふと、鰻でなくほんの少しの白飯で穴子が食べたいと思ひ老いを感じざるを得ず。鰻もふと白焼で食べたい、と思うのせふね、とZ嬢。競馬は雨上がりの馬場で狭いCコースはかなり荒れるかと思ったが不思議と固いレース続きそこそこ儲かるが最終8レースにて『大勝』の予想のTriccoloは26倍で『大勝』は「前レースは護航(同じ厩舎の別馬勝たせるためのペースメーカー)に徹したが今レースは自らが勝つ番」言うが今季の惨澹たる戦績見てもは調教の時計見ても「どこが?」だったが、見事に二着入り副賞でHK$121ついて脱帽。『大勝』の真摯な予想。昨晩に続き『<癒し>のナショナリズム』読む。
▼香港政府の財政赤字解消にむけた公務員給与見直しにつき「従業員」側がこの給与削減が香港基本法の第100条「警察部門を含め香港特区成立以前に香港政府各部門で職務についていた公務員はいずれも留任することができ、その勤務年数は保留され、給与、手当、福祉待遇、勤務条件はもとの基準を下回らない」や第102条(略)に抵触する不法な措置として香港政府を告訴(笑)。香港高等法院の判決は、この条文は1997年の過渡での制度としての公務員体系について述べたもので制度中の条件(賃金等)については改変は可、確かにこれまで公務員の給与待遇が下がったことはないが(!)それが今後も給与削減ないことを保障するものに非ず、削減されてもその水準は民間企業に比べ優遇されており公衆利益を鑑みこの経費削減は香港政府の財政赤字解消のため有効、と。当然。それにしてもこの第100条“may all remain in employment and retain their seniority with pay...no less favourable than before”だが“may”が“retain”にも掛かるのかどうか、それに法律表現として“seniority”と“favourable”で具体的な金額the amount of payの保証までしているかどうか。中文でも「其年資予以保留、薪金、津貼、福利待遇和服務条件不低於原来的水準」であって、社会一般に照らし合わせて水準の保留ができていればよろし、という程度では? 信報の社説は皮肉たっぷりに、どうせなら政府も給与削減に反対する公務員に対して基本法107条の香港特区政府は「収支が均衡を保つように努め、赤字を避け、地元の総生産額の伸び率に見合うようにする」という条文を盾に裁判所に提訴しては?、と。
香港大学の鐘庭耀氏は香大民意研究計画の主任で、この人の名を一躍有名にしたのが董建華による世論調査介入で、支持率の低い董建華側から大学に調査中止を働きかけ、それを鐘庭耀が暴露して董建華子飼いの私設秘書と大学の学長、副学長が辞任となったのだが、この鐘庭耀と中文大学の陳健民氏(社会学)が今日の信報に基本法23条について一文を寄せ、それが曰く、今回の政府のこの立法化は(その立法を非難しないが)手続きとしての誤謬を指摘。政府は市民に対して公聴会を開催しるなどして市民に諮ったこととしているが、まず、この草案は政府案が提出されただけで、それにYesかNoかだけで具体的な選択ができず。本来ならこの法案のいくつかの要点について異なる選択肢を提示して、それを市民が選択すべきところ、それに欠けるために論争が単に23条擁護と反対に単純化され感情化してしまった。つぎに公正性に問題があり、市民の意見書を政府がどのように賛成と反対に分別し、どういう観点で分析した結果、賛成と反対の割合すら一切公開されておらず。3つ目として、提出された意見を具体的にどう活かすのか全く不明朗なまま、ただ市民に諮ったという事実だけを口実として残したにすぎず。このような立法化に必要な明朗な手続きを経ぬ立法化が内容如何以前の問題であること。これと同じことが日本でも罷り通っているわけで、教育基本法の審議だの諮問だの公聴会などの茶番がそれ。