富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

五月三十日(金)快晴。成城にてアジア雑貨など商うI氏に請われ香港大学博物館で開催の「香江知味:香港的早期飲食場所」展の図録購ひに香港大学。中環のColorsixで現像したフィルムに愚猫三月に他界する数日前にZ嬢に甘える姿偶然にもContaxのG1にて白黒で撮った一葉あり愛しき姿にColorsixにてトリミングの上大きく現像依頼。昼に読んだ信報にて唯霊氏日曜日に訪れ食した寿司加藤の鮎について今が旬だが味風味では鮎はけして他の魚に比べ見事とはいえぬが夏を迎えむとするこの季節あの鮎の光沢やかな姿、新鮮な鮎を冷して刺身なりで食した時の悦びを語っておりふと独り加藤。店にはまだ客おらずカウンターの隅で久保田を一酌。鮎のこと「新聞に出てましたね」と話すとご主人ご存知なく「道理で今日はニ、三組、場所は何処だの、鮎がどうのこうの」と電話あり、と。早速新聞購いに遣る。その鮎、囲いあゆの姿煮と言葉からは想像易しからず、ほどよい薄口でじっくりと煮た鮎を丸ごと胡瓜に載せて坐らせ、そこに煮凝りを寒天にして流し込み、まるで鮎が水なか泳ぐが如き姿煮。北海道産の大ぶりの鮎でいささか一人では多いが煮方があっさりとしており薄口にて鮎本来の味がでて飽きずに一匹食す。店も賑わい始め亂歩隨筆集読みながら辛丹波熱燗にてさっと飲み帰宅。二更にハヤシライス食す。
▼亂歩隨筆集に昭和26年に『幕間』という芝居雜誌に書かれた『勘三郎君に惚れた話」なる一文あり。先代の中村屋の芸に惚れたならさもなりなむだが亂歩先生惚れたのは当時から更に20年前、未だ米吉を名乗った17、8の中村屋、京都南座の菊吉による顔見世で芝居は馬盥(ばたらい)、播磨屋吉右衛門)の光秀で中村屋が演じたのが妹・桔梗。「心から女に惚れた経験のない」乱歩先生がその少女役には夢中になり、それから中村屋が「もしほ」名乗った時代は乱歩も芝居から遠退いたが勘三郎となった中村屋とついに会う機会あり意気投合し友情続き今日に至る、と。乱歩が勘三郎を誉めるのは「戦後の歌舞伎の中心をなす若い俳優のうちで、勘三郎君ほど舞台に余裕のある人はいない」といふ点。但しさすが乱歩先生「しかしこの長所には一方欠点もあるので、自分の演技のない時など、目が遊びすぎる。何か傍見をしているような感じを与える」と。納得。敢えてこの欠点をば理由づければ、この目の遊びと傍見は、中村屋が役者として以上にやはり猿若町の芝居小屋中村座の胴元としての視線かも知れず。自らが役者で舞台に上がっていることを忘れ、ついついプロヂューサー的に芝居を総観してしまふことがあるかも知れず。これは当代の勘九郎君にも言えることで、帰朝の折に歌舞伎ではないが『浅草パラダイス』と『研辰』の二つの芝居見たが、とにかく自分の演技がないと異常なほどの関心で他の役者の芝居を見ているのは事実。それでこそ中村屋、と思うことも可。舞台で神妙に役に乗り切っているだけの役者ならいくらでもあり。それにしても勘三郎と聞いて思い出すのは亡くなった祖母のことで、芝居はとにかく好きであったが、殊に勘三郎贔屓。余もまだ幼稚園の頃に祖母に連れられて行った芝居で最初に覚えた役者の名は勘三郎であった記憶あり。また同じ頃に勘九郎君主演(だったと記憶するが資料調べてもその映画見つからず)片腕を失った少年が力強く生きてゆくといふ筋の松竹映画あり、これを普段映画など見にいかぬもう一人の祖母に「勘九郎ちゃんが出てるから」とまるで知り合いの孫でも見るかのように連れてゆかれた記憶あり。
▼武蔵野にて市民運動に取り組むD君は本日東京にてテッサ=モーリス=スズキ女史の講演聞きに行くそうな。東京の芝居も見たいがこういう講演があるのも羨ましいかぎり。場所が在日本韓国YMCA、そこで泰西の学者が日本について語ることが多元化文化。
▼金融相竹中平蔵君が辞任し九月から米国の大学にて大学教員として糊口凌ぐがため幾つかの大学に打診中と紐育タイムス。政府はこの報道を否定するが「さもありなむ」。それにしても小泉内閣の景気回復のための金融専門家として慶應大学より招聘された鳴物入り、当初、小泉内閣への期待と真紀子女史と並びこの竹中君の新鮮さで国民はまた懲りずに「なにか変えてくれるのでは?」と期待もあったが、実際には政界に取り入るだけが取り得の御用学者、小泉内閣の「改革」など絶対にあり得ぬことは小泉君首相就任から判りきったことながら何も改革など進まぬままここまで続いたことのほうが驚き。
▼六月一日は沙田にて今季最後の重賞Charter Cup(芝2400m)、かつてOriental Expressだの活躍せし頃に比べ華やかさなし。恐らく一番人気は
 8 大白兔 126 告東尼 1079 103 高雅志
で、それに今年のダービー馬(牝)でQE II Cupでエイシンプレストンに次ぎ二着の
 13 勝威旺 122 大衛希斯 1094 117 巫斯義
がどこまで伸びるか、に期待集まるだろうが、HK Jockey Club主席の持ち馬でSize厩舎の
 3 駿河 126 蔡約翰 1019 119 馬安東
も侮れぬが、なぜSize厩舎なのにDye騎手が騎乗しないかといえば
 11 雪山飛狐 126 簡炳? 1073 99 戴勝
これは今季で引退の簡調教師にとって最後の重賞レース、この馬も長距離馬で押えておかねばならぬ。そして10歳馬でまだ引退せぬ我らが
 1 原居民 126 愛倫 1088 125 頼維銘
頼維銘騎手なのが「ちょっと」だがAllan調教師が?維銘を指名する時の自信というものもあり、昨季は3着には入ってきたが今季全く入賞もない原居民を捨ててはいけない。なにせ今季は短中距離ばかりで得意の2400mは昨年5月で10着だが、あの日は大雨で馬場ひどく、晴天期待される明後日は「ひょっとして」も十分にあり。だが余の本命はオッズの面白さも期待してDanehill馬の
 6 高山名望 126 愛倫 1096 105 馬偉昌
にしたいところ。で結論は高配当狙いなら「6 高山名望」軸に「1 原居民」「11 雪山飛狐」で、「8 大白兔」と「13 勝威旺」のいずれを切るか、が勝負どころ。