富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

五月二十八日(水)曇。晩にHappy Valleyにて競馬。I君広東省での仕事より空路深センに戻って競馬に来る。村山槐多『悪魔の舌』と『殺人行者』読む。亂歩がそこまでハマッたこともうなづける槐多の世界。読んでも筋すら忘れる小説も多いなか例えばパゾリーニ監督の『ソドムの市』を見てしまった時のような、禁断だからこそのエロティシズム、それはいつも死とつながっているのだが、鮮烈なる印象で二度とその物語が脳裏から離れぬ世界。猟奇的な世界だが、意外と動機であったりその世界に入ってからの安らぎのようなものは常識ある一般人気取る部外者には理解できぬことなのかも知れぬ、と亂歩ではそこまでの感想はもてなかったが槐多だとそうとまで思える。
どうでもいいことだが、だが「どうでもいい」では済まされないのだが、一瞬「加藤登紀子(写真)が短髪に?」と思ったが春風亭小朝師匠(写真)、気がついている方も少なくないだろうが、最近、加藤登紀子どころか「美輪明宏先生(写真)にすら似てきた」のである。師匠は金髪でも短髪だがあれを長髪にして後ろにまとめて化粧したら美輪先生になる。これは小朝師匠が36人抜きで真打昇進したモンチッチ顔の頃には想像できなかったことだが。師匠がこのまま進化し続けるとこれは落語界においてすごいことになるはず。渋谷のジャンジャンで小朝、加藤登紀子美輪明宏の三人の会、なんてあったらすごいステキなことだ。
SARSの病原は広東省で食すこと好まれる野生動物と突き止められたそうで愛らしい菓子狸も難儀。広東省でこの野生動物の賣買に携わる者508名を調査した結果、その13%から血液にSARS病毒抗体の陽性反応が見られ、この13%は一般人の場合の約二倍。長く野生動物賣買にかかわり自然と抗体が出来ていた、と。広東省は今回の感染を重視して野生動物食すことを禁じる条例制定検討中だそうだが、その名称が「広東省愛国衛生工作条例」だそうな。なんでこうなるの?という感じ。純粋な愛国主義か、本当は伝統的な滋養強壮の野味だが「愛国のため」食うな、って本音か。いや、ただの「何でも愛国、勝利をつけてしまう思慮浅さ」である。
▼この日剰読まれる蛙鳴さんより昨日の蘋果日報副刊の林振強氏の専欄「如何改良専欄版」には「ニヤリとなさいませんでしたか?」と言われ、それを見逃していたのが事実、朝慌てて昨日の新聞広げる。蘋果の副刊の専欄はさーっと題名見て面白そうなのだけ読むのだが(蔡瀾先生のは毎日熟読……嗤)言い訳にしかならぬが27日のこの林振強の専欄は題名の印刷も薄く完全に見逃し。一読し、よくぞ言ってくれた、という感想。溜飲が下がるとはまさにこのこと。林振強氏曰く隨筆家による連載コラムが広告化していないか?という指摘。余もかねがね指摘してきたが蔡瀾氏など香港一高い原稿料もらってレストランだの自書だの旅行の企画など紹介するだけで、たまに多忙極めるときは書き溜めしてあるのだろう、インターネット上にある小話など紹介するだけ。これに対して林振強氏提言するは連載コラムの水準維持のためにも、寧ろこのコラム頁に広告専用の欄を設け、そこに
今日のおすすめ                       
作者A ○○レストラン(住所電話はこちら)
作者B 自分の出るテレビラジオ番組よろしく(詳細)
作者C さいきんこんな取材を受けました
作者D この海外旅行ツアーはおすすめ!
作者E 私の書いた本、友だちの書いた本
といった連載作家による宣伝を集めてしまう、という提案。お見事。これをすれば広告化したコラム驅逐できる、というわけ。だが蘋果日報でいえば、この作者AからEの全てに該当する人気コラムニストが誰であるかは明白(笑)。じつはこの日のこの林振強氏の記述の左で蔡瀾氏シンガポールのレストラン紹介。だが蔡瀾氏にしてみれば自分の書いたそれを愉しんでくれている読者がおり新聞社側がそれを載せているのだから問題ないだろう、と宣ふであらう。が、蔡瀾氏ほどになるともはや氏を導けるような編集者はおらず何を為すにも為すがまま、になってしまっているのが現実。
▼昨晩、NHKニュース10を眺めていたら2001年末に撃沈された北朝鮮工作船の更なる映像が公開された、と。工作船の乗組員が海上保安庁の巡視船に向って日本語と「韓国語で」「あっちに行け」と言った、とNHK北朝鮮工作員はやはり専門職であるから「北」の身元隠すため流暢に韓国語を使ったとか? 「うざったいなぁ、あっち行ってくれる〜ぅ?」とソウルっ子風にとか。それにしてもこの「韓国語で」、さすがニュース10らしい思慮不足。朝鮮語講座開設では「ハングル講座」で逃げたが、まさか工作船の乗組員が「ハングルで」「あっちに行け」ぢゃ書いて見せたようだし、朝鮮語は好ましくないから、の韓国語なのだろうか。ちなみに日経は「朝鮮語で」と記事。で、この工作船が公開されることになり、それだけでも「なぜこの時期に?」って政府側は一連の捜査など済んだから、だろうが、対北朝鮮外交が正念場迎えるこの時期にかなり意図的な「怖い見世物」展示と思えてならず。で、この公開がお台場の「船の科学館」であること。開館当時、門前仲町だか茅場町からバスで、当時はお台場でなく有明のこの博物館に行ったのだが、船全般であるから軍艦もあるのは当然といえば当然かもしれぬが、子どもながらに「かなり力リキ入ってるよな」と思わせる軍艦展示、当時テレビで「一日一善」していた笹川良一先生が母背負ってあるく銅像あり「なるほど」と理解したが、確かに北の工作船も船といえば此処での公開が無難なのか、どうか。いずれにせよ今の世の中すべてが意図的。
▼性的醜聞にて辞任した豪州総督(英国女王の全権総督)の後任にJohn Yuなる華裔の大学教授の名前浮上。画期的なことかも知れぬがそれ以前にこの英連邦、そしてその総督なる名誉職ぢたいイケてないが、名誉職とはいえ重職ながら年俸A$185,000(HK$925,000)。ちなみに偶然昨日聞いて呆れたのだが、香港政府教育署の元中堅官僚、勤続20数年で引退し永年年金が月HK$40,000支給されつつ政府援助の私立中学の校長で月給HK$65,000、で月HK$10万をこえる収入。豪州総督以上。実質的に公務員よりの天下りで校長なのだから、せめてこの職にあるうちは政府の年金は免除となるくらいが常識だと思うが、このような厚遇のために税金払っていると馬鹿馬鹿しく腹立たし。
▼この日剰は上から読まれるのだろうから先に綴るが、学生時代、クラスに一人くらい、こういう奴がいたはず。見るからに「おい、なに、あれ?」って感じでついつい「いじめたくなる」タイプ、暗く弱弱しく、自己主張はあまりしないが、たまに話すと甲高い声でやたら自分の言いたいことは言う。ひきこもりがち、だが(というか、だから、かもしれぬが)戦闘機やら軍艦とかオタクで詳しく軍関係のプラモ作るのが趣味。じつはキャンディーズとかピンクレディとかすげー好きだけど級友には知られないなくて毎月『明星』と『平凡』を買っては家でアイドルを眺めまわしている。いじめてしまうと、実はそいつの親が町の有力者で、マザコンだから母親に言いつけると母親が「うちの坊やを!」と出てくるから、面倒なのでいじめたいがいじめられない。大人になってみると、そのひきこもりマザコン君は勉強はそこそこできたから有名大学に進学していて、むかしじゃ想像できないくらい自己主張する偉い人になっているのだけど、やっぱり「あの風貌」と「あの話し方」だけは小学校以来ぜんぜん変わっていなくて、やっぱり今でも「おい、なに、あれ?」って思いたくなる、ってそんな奴。
毎日新聞、経営難のうえに爆弾事件でもう「形振り構わぬ」のだろうか。築地H君より昨日の毎日新聞に木琢磨なる記者による秀逸なる石破防衛庁長官インタビューあり、と。記者「失礼ながら、石破さんと話しているとイライラしてくる。だって慇懃無礼。永田町にもそんな声がある」(笑)と公言。以下、H君よりの引用。
石「高校生が『諸君』読むなんて異常ですか?」
鈴(そりゃ気色悪いなあ。ところで戦争を知らない世代が『国防』を意識したきっかけは?)
石「91年の湾岸戦争。…もう一つは同じ年、超党派議員団で訪れた北朝鮮マスゲームに人間の暗い情念を見たし、少年宮殿の少女の同じ表情の笑顔に背筋が凍った。こんな国がこんな近くにあるのかって、人生観が変るショックだった」
鈴(わりにあっさりしてるのはいいとして、リアリストのくせに北朝鮮を語る言葉がやたらとおおげさ。テリー伊藤さんのほうがよっぽどリアル。3度ほどピョンヤンに取材に行きましたがと言うと、真顔で「怖くなかったですか」と問い返す)
と、そんな調子。石破ちゃんは「歩く月刊明星」っていわれているそうな。
石「キャンディーズはいまでも全曲、歌える。河合奈保子も全曲、歌える、岩崎宏美も全曲、歌える。アグネス.チャンも全曲、歌える。まかせてくれ。キャンディーズはミキちゃん、かわいいって思ってましてね。みんなランちゃん、スーちゃんって言ってるのに、私はマイナーなミキちゃん、ミキちゃんって言ってました。」
H君、書き写してて馬鹿馬鹿しくてしょうがない、と。しかし何より凝っているのはプラモ作り、それも戦闘機に軍艦。
石「この間、ロシアの国防大臣が来るので、久しぶりにロシアの航空母艦を作った」
防衛庁長官。「来るのでプラモ」とはどういうつながりか。これは公務中だろうか、接待の話でのネタづくり。この人が対北朝鮮で戦後最大の「萌え」を迎えているわが国の国防の長。