富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2003-05-17

五月十七日(土)晴のち曇。走会で西貢。今回は西貢よりタクシーで萬宜貯水庫のダムまで行ってしまいMcLehose Trailの2のみ。半年以上来ておらず。浪茄湾(写真)の麻薬解毒所に住まう若者らが自ら食材など生活物資の輸送に山道を上がってくるのに遭遇。入れ墨も日焼けした肌にその紋を隠し精悍ぶり。西湾(写真)の茶屋、隣家もまた茶屋となり客引もあろうが店には老舖らしくトレイルや釣りの果敢な写真など飾り余の二年前のTrailwalkerの際の写真まであり赤面。鹹田湾の浜辺の橋わたり(写真)大浪の村(写真)過ぎて赤柱より北譚凹まで。気温は摂氏30度を越え無風、汗とまらず。Z嬢と西貢の街で徳興麺家にて四寶粉、街中の店の魚蛋は比べられぬ新鮮さ。Z嬢が沙嘴街の緑色生活専門店覗き、隣のcafeにSouth China Morning Postなどの連載で著名なるKevin Scinclair氏さすが新界の主らしく気持ちよさそうにワイン飲むお姿。西貢の天后廟の裏手にある西貢の旧市街ちょと散歩、満記甜品が珍しく空いていたんので杏汁蓮子燉雪蛤膏とマンゴープリン、美味。沙嘴街に戻りAli-Oliなる自然酵母のベーカリーにて麺包購ふ。帰宅。晩に西湾河の香港電影資料館にて小津の『非常線の女』見る。1933年のこの作品、いろいろな意味にて面白いが、まず何といっても田中絹代に拳銃を持たせてしまい、それがしかも絶対に似合わない、というこのチグハグさ。小津がそれをわからずに田中絹代を起用したはずものなく、このチグハグさは何よりも敢えてこの物語の設定を昭和8年の東京なのだが無理矢理に西洋風の建物だけ使って看板だのポスターだのをすべて米国風にして、だがそこには着物きた女性だの日本の官憲がいて、そのチグハグな無国籍さがあるわけで、敢えて目鼻立ちのいい女優(高峰三枝子であるとかのちの原節子であるとか)を起用せず正直言って当時はまだお盆に目鼻、の田中絹代イングリッド=バーグマンばりのスーツ着こなし(いや、着こなせていないのだが)拳銃を売ってしまう、その可笑しさ。筋はサスペンス物というにはサスペンスもなく、ヤクザな男と女の物語というにもチープ、だがキャメラはすでに小津らしさ、どのシーンも「へぇ」と思わせる面白き構図、そこに人物が非日常的に現れ消えて飽きることなし。戦後の小津は「あの路線」に行ってしまうのだが、もし小津が戦後もこの路線で敢えてB級映画を娯楽物として撮っていたらさぞや面白かっただろう、と痛感。帰宅してうどん食す。