富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

四月七日(月)雨。わが国に強靭なる細菌、悪疫すら防ぐ効力「えんがちょ」あり。由来知らぬが、左右の手、人差指に中指絡ませ「えんがちょ」と叫べば即刻防御壁出来、外界より自ら遮断される秘伎なり。子どもの遊びのようでいて指のかたちの意味深さに余は空海上人が真言の業、身口意の三密想像す。謂れもわからぬが余は勝手に「縁が」「ちょ」、「ちょ」は一瞬「緒」の字当てると思ったが「縁が緒」ではそれが縁で緒になっては、この語の原意の縁切りどころか縁結び、これでは防御にならず、そこで「えんがチッ」なら(広東語の発音汲んで)縁が切(Chit)なのだが、これも無理あり。「縁がちょん切れる」の略か、とも思う。この「えんがちょ」、左右の手、人差指に中指絡ませ左右で二つできるのだが、子どもらの間にては更に薬指と小指にて左右で二つ出来て計4つ、更に左右の親指絡ませれば計5つ。一つより二つ、二つより三つとさらに効果絶大、左右の腕絡ませ六つ、両足絡ませ七つ、さすがに足の指にて「えんがちょ」難しいが七つまでした「七重えんがちょ」まですれば、非典型肺炎など何のその、これ古来よりの仏教の秘業と銘打ち銅鑼灣のそごうの前でこれすればかなり怖がられるか。いっそのこと香港総領事、肺「延」に惱む香港に日本古来の伝統習法とこの七重えんがちょしてみせるとか、即「南極大使」に左遷されるか。閑話休題肺炎また感染多少高まり40名余感染。そろそろマスコミも感染ネタだけでは面白くないか、蘋果日報一面は行政長官董建華感染の場合の臨時長官は司政司長・梁愛詩有力とどうでもいい話題、紐育時報にはこの肺炎は中国の細菌兵器製造実験にて洩れ出た細菌によるものだといふ説もあり。日本での肺炎禍の話題盛況、TBSにては(4日だかの報道だが)香港より日本に一時「罹災」の主婦、成田空港にて「やっぱり子供が危険かなと思いまして。(香港では)一歩も家の外に出られない状態でした」と語るが、「一歩も家の外に出られない」のは軍事クーデターで戒嚴令が施されているような場合であり今回の肺炎はたんに「あなたの判断」で「一歩も家の外に出なかった」にすぎず。それがこう表現されるだけで平和ボケ日本にては無知な視聴者が「あらまぁ大変よねぇ、ちょっとお父さん見てよ」と煎餠齧りながら呟く。いちばんのヒットは成田空港にて「私たちが住んでいるマンションは山の上にあって、わりと下界とは離れているので下に降りないようにしていました」と宣った主婦(ニュース画像はこちら)。陽明山荘居住といふ噂だがたかだか駐在員の妻の身分で「下界」発言には恐れ入ったもの。香港にては下界に金輪際下りるべからず。肺炎が拡がっているのではなくパニックという疫病が社会覆う。人の浅慮ばかり目立つ今日この頃。小泉三世はイラクが「早く降伏すればいいのに」発言、これぢゃ明らかに「森以下」。降伏の時期を間違ったがために新型爆弾の被害広島長崎に被った悲惨な過去もつ我が国の首相ゆえの発言か、といふ書き込み見かけたが、この朴訥とした軽薄な発言、この首相のOSの低質ぶりそのもの。産経新聞にて肺炎特集の記事見たつもりが突然鉄腕アトムの誕生日なる記事現れ驚いたが、よくよく見れば「政治」「社会」「経済」なる区分けにて「流行」選んでいた自分嗤ふ。桐山桂一著『反逆の獅子』角川書店読む。大正9年の八幡製鉄所ゼネストの主犯にて第一回普通選挙にて無産階級の代表として福岡二区にてトップ当選、翼賛化の時代、衆議院落選するが石原莞爾の知遇得て満州建国、和平工作など画策、といふ数奇な生涯送った浅原健三の生涯。二年前の春、フィリピンのボラカイ島のリゾートホテルにて貪り読んだ山口昌男『挫折の昭和史』に幾度か名前登場する浅原健三その人。