富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

四月一日(火)戦争は終わったって、と築地H君より報せあり。フセインはシリアに亡命、イラクには親米政権樹立のはずが予想以上の反米感情の高まりで工作失敗、アラブ民族主義掲げる反米政権が樹立され、フセインなきイラク、反米政権だからと攻撃する口実もできず米英軍は撤退、ラムズフェルドは執務室で拳銃自殺、ブッシュとブレアも敗戦責任とって日本時間の今日午後3時から退陣表明の記者会見、と。雑事に追われこのH君のメールみたのが時間はちょうど日本時間の午後3時。朝日新聞のサイトみると「名古屋で女性また刺される」がトップニュース。……あ、今日は4月1日か。H君、続けて一昨日の日曜日は「3月30日の日曜日」。どこかの新聞が「フランシーヌの場合」のことをコラムに書くかと思ったけど、なかったみたいだね……と。私とてH君にこう言われるまですっかり忘れていた。世の中、戦争と肺炎ばっかり。ただただマスクに詳しくなる日々。昨日M君にもらったマスクが株式会社スズケンバイオマスクX。M君はお座敷かかった芸妓が歌舞音曲もできぬは困ると「ドームマスク話せる君」まで下さる。忝ぬ。が、このドームマスク、よーするにマスク内部に空間あり自由に話せるといふのがウリモノながらドームって確かに形はドーム型だがdomeといふ建築様式は必然的に人が集まる場所(後楽園ドームとか)、なんか病原菌とかスギ花粉が終結しそう、でも日本製品だからね英語が奇妙なのは当然か。外出。バスに乗る。マスクしているのはいいが殊に爺ィ婆ァら、マスクしているといつも以上に声がよく通らないとでも思っているのかいつも以上の大声で、マスクがスピーカーのWooferの如く爺ィ婆ァの荒い息づかい呼応、なんて元気なんだろう、あなたたちは死なない、と痛感。Citysuperにて豆腐買い此処の家庭雑貨売場なら日本製のマスクいろいろ置いているのかと思ったが売切れなのか間に合わぬのか何もなく、消毒抗菌関係のアイテムもそれほど売れてはおらぬようで、Watson’sに立ち寄ればずっとマスク売切れ状態だったのがマスクの発売は午後1時と7時だか、と表示あり、これじゃまるで行列のできるチーズケーキ屋さん、だが、それでも午後の3時すぎに「一人限定4個」とピップフジモトの「ピップガードマックス」を1個HK$30で売っている。これもすごい英語だが英語だと思うから奇妙なのであって日本語なのだ、これは。これがHK$30で売られており「暴利!」と思われたが日本でも希望小売価格は450円、けしてHK$30は高くない。さすが李嘉誠、とへんなところで感心(Watson’sは李嘉誠のワンポアグループ傘下)。同じ時代廣塲のPage OneでMichelinのフランス本買おうとしたが扱っておらず。かつては読ませる旅行ガイド本だったのが、かなり写真だのイラストだの増えたLonely Planetなどばかり。銅鑼灣も地下鉄のなかも心地よいほど閑散。買い物も楽、店員は暇もて余し親切丁寧、食べないが元気寿司も待たず、午後4時の地下鉄で空席あり坐っても隣席など気にせず新聞広げられる。帰宅。Z嬢の妹よりマスク届く。(株)興和ヘルスケアーの「クリーンライン」とライオンのマスクにつける「爽快ウェットフィルター」なのだが、肺炎の菌がウェットフィルターについてしまった場合に問題ないのかどうか多少気になったりもする。Z嬢が日系の某スーパーに買い物に行ったところ半狂乱気味の女性が日本語で(けして日本人とは断定すまい)「ユニーも売りきれでジャスコなら大丈夫だと思ってきたんだけどマスク、ないのよーっ、わたしどうすればいいのよーっ」と半泣き状態だった、と。マスクならもうそろそろ需要と供給は均衡から供給過多になりつつありWatson’sでも売れ残っており、旺角など路上だの地下鉄站の通路でのhawkerなどそろそろ粗悪品を高値でも売れず持余していることだろう、そういうものならいくらでも入手可能なわけで単純に日系ストアから足を一歩踏み出せばいいこと、もしくは楽天市場なり時節柄花粉症対策でマスクならいくらでもあり注文すれば二日で届く、少なくともスーパーの雑踏のなかで携帯で喚くこと止めれば感染の機会も多少減るのでは? で、閑古鳥なく飲食店に対してマンション封鎖が明日は我が身とまでは思っていないだろうが自炊が増えスーパーは食料品買い込む者多し。午後3時くらいだかにはインターネット通じ香港にて外出禁止令発令というデマが流れたそうで、明報のウェブサイトのレイアウトコピーし、それにデマ綴った少年逮捕される。このデマかなり広まったそうでとんだエイプリルフール。食料品の買い溜めもこれも影響か。そういう我も自宅にて八海山飲みながら湯豆腐。M君より芸人レスリー張國榮(哥哥)午後6時41分に中環のマンダリンオリエンタルホテルより投身自殺。現場には遺書あり。享年46歳。沖雅也先生の如く芸能にどっぷりと漬かった芸人中の芸人、今さっきテレビの中継みたがマンダリンオリエンタルホテルのまさに正面玄関車寄せに直落、何がおきたか知らぬがまさに劇的なる人生。叩き上げの芸人にてデビュー当時からの同性の恋人の存在を否定せず。ただ歌舞にしても芝居にしてもかつてのアイドル時代に比べ今ひとつパッとはせず、芸人として美輪明宏先生のように昇華してしまひもせず、かといってアラン譚麟詠先生の如く万年青年でもいられず、老いることも許されず厳境にあったのは事実か。99年に購ったままになっていた酒井シヅ編『疫病の時代』(大修館書店)読む。戦争と肺炎のキョービ、必読。晩も二更に肺炎蔓延にて封鎖されたマンションより住民の郊外の「自然の家」臨時隔離施設となり、そこへの転移始まる。ケーブルテレビのニュースは30分の番組枠いっぱいいっぱいイラク攻撃も張國榮の自殺もなくその中継続ける。午後11時すぎてイラク攻撃だの張國榮自殺関連のニュースも流れ始める。
非典型肺炎、また72名発病しそのうち52名が特定のマンション。潜伏期間1週間ありすでに感染していた人の発病で、このマンションでの52名の集団感染もすでに何らかの経緯で感染があったことが事実と思えば今更驚くことではない。そのマンションでの大量感染、いろいろ原因は憶測されるが一つの棟のうち特定の方向のみの縦2列、しかも上層階に感染者集中していることから、おそらく下水管の腐食などありそこから感染者の糞尿についた菌が下水管通じて拡散したのではないか、といふのが有力な説。
▼ 購読する新聞を30年購読し続けた朝日から日系にと変え、日経はやはりもともとが中外物価新報なわけで、東京新聞=都新聞を愛読し続けたうちの祖母など日経を「株屋だの相場師の新聞」と蔑んでいたものだが、内容が硬い分内容にあまり期待もせず、ただ朝日のあまりのテイタラクに呆れた結果、かといって読売などナヴェツネが死ぬまで絶対に読まぬと決めており読んだところでなんらマトモなタメになる記事などなく、毎日は読みたいが破綻しような経営状態にて香港にて衛星版発行もしておらず、産経など論外、で消去法の結果、日経となったわけだが、期待せぬ期待に反して最高におかしいのは中国総局長・泉宣道の書きもの。3月18日のこの日剩にて中国の新首相・温家宝君の徹底的した地方視察ぶりでカミソリ後藤田の週末のデパートでの買い物に譬えに出した泉局長、どうもこの人は「何か譬(たと)えないと気がすまない」ようで、今度は30日の「地球回覧」でまた温家宝取上げ、今度はこの温家宝の故郷・天津を語るのに天津=名古屋を力説。政治の北京、商業の上海、で天津がいまいちよくわからない第三の都市で、そういう意味では確かに名古屋的なのだが、そんなこと今さらいわなくてもみんなそう思っていること、が泉局長にかかると「市内の大型スーパーで5?入りの特用サイズの食用油は49.5元で300m?の小瓶つき。「金台源」という42元の500m?の白酒にも200m?の小瓶がつく。名古屋の「おまけ商法」に似ている」と、かなり「スーパーで調査した」事例つきで天津=名古屋説裏づける物証が並ぶ、が、こんなおまけ商法、世界中どこでもやっている。べつに天津だけの話ではない。そして次なる事例が貯蓄好き。中国人民銀行天津支店によると天津市民の預金残高は14,000元/人で全国平均の二倍。名古屋も愛知県は6,520,000円で全国平均の1.13倍、といふのが泉局長の説明。だが、大都市というのは通常、過疎化の進む農村地帯などよか貯蓄額では富裕なわけで、中国はことに富貧格差大きいわけで、かりに名古屋も日本の平均預金残高の二倍ならこの天津=名古屋説も通じようが、これでは天津と名古屋の貯蓄傾向で同一視は難しい。そして最後に「天津市で最もよく知られている日本企業はトヨタ自動車」で「トヨタは天津汽車と合弁している」ことを挙げている。この合弁は事実。で、とどのつまり、天津と名古屋は似ている、それは事実なのだ。が「天津と名古屋は似ている」という11字で済むことで、3つも具体的事例あげて300字ちかく綴るほどのことではない。が依然としてこの泉局長の「たとえ好き」は注目してゆきたい。
▼昨晩、NHKニュース10での肺炎関連のニュースの部分だけがきっかり放映されなかった件、NHKの自己規制の場合「放映権の都合で放映できません」とか通常は流れるものがNHK will resume shortlyと画面に出ていて肺炎ニュースのあと放送が再開したことで、いろいろ憶測あり。シンガポールなどではこのニュース映っていたそうで、そうなるとNHK側の衛星放送未配給ではなく、ケーブルテレビ側かもしくは中国政府陰謀説まで。だが今回の肺炎が中国元凶の可能性大といった報道など香港でいくらでもされていることで、今さら中国政府がNHKの日本語の放送で神経とがられる気もせず、たとえばNHKがお得意で朝鮮中央放送の番組勝手に流すのと同様、香港のテレビ局の画像使ってしまっていて、とかそういうことも考えられないだろうか、この放送中断。それにしても生放送であるNHKニュース10で見事にその特集だけカットしたのはあまりに策略的だが。