富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

三月二十一日(金)曇り。戦争が進行している。イラク国民の不幸だけが断じて許されるべきちゃないが、この戦争によって世の中どれだけバカがバカに右往左往しているのかがはっきり見えてきた。インターネットのおかげで世界中の情報が手にとるようにわかる。すごいことだ。とにかく今は情報があるのだ。客観的に考察できるだけの情報がたんまりとある。自分が生きているうちにこんな時代が到来するとは空想はしても現実になるとは思ってもいなかった。でも、もし大東亜戦争下の日本にいたら、こんなこと考えられなかっただろう。あの当時、情報なんて海軍幹部か外務省の吉田茂らを除いたら権力の外では東大法学部あたりくらいに限られてはいたがかなり的確な情報が入っていた程度で、そんな時代にあって羽仁五郎だの監禁拷問されても転向しなかった宮本顕治らは確かに偉い。それにしても、戦争にも肺炎にも実際に被害受けるリスクの低い人ほど、なんか「パニックの真っ只中」みたいな感じでいろいろ心配したりしてる。きっとそうしていることが国際社会のなかにいることのようで楽しいのだろう。お気楽だ。晩にZ嬢と金鐘の秘園にて朝鮮料理。サムゲタンとか美味いのだが注文すると10分くらいの間に全部の料理並んでしまうのは理解できず。もう少し卓毎の人数と食べ具合により料理出すタイミングを考えられないものか。真露クーッと飲みながらこれって朝鮮日報系のスポーツ紙だろうね、眺めていると、やっぱり同じ文化だと思う。中環横切り、そこまで歩くか、というくらいの散歩でXTC on Iceでジェラート。道すがらLandmark横に数多のタクシー止まり停車禁止の処に客拾えるまで憮然と動かぬ車、幸いにも客拾ったものの前に進めぬ車、お互いがんとして動かずクラクション鳴らし喧騒とした雰囲気あり。不景気は人の心も殺伐とす。久々にかなり飲んでいい気分、ただし帰宅してもマッカランを飲む。
▼昨日の新聞各紙に香港大学社会科学院香港ジョッキークラブ自殺防止研究センター(これは念のため、ジョッキークラブ関係者の自殺防止研究ではなくジョッキークラブが出資した研究所である)の調査結果として2001年に2,586名の中学3年から7年(日本の大学予科に該当)の学生を調査の結果、13%の学生がこれまでに自殺を考えたことがあり7%以上が1回以上自殺を企図し、女子が男子より自殺志望が高く、14歳以前に性行為を経験したり家族不和あったり薬物だの飲酒だの外見がブスだのといったことが自殺を企図し易く、14歳以前の性行為は自殺を企図する機会が性行為なき学生の3.08倍に達する、と。バカじゃないのか。まず自殺防止研究センターなる意図的な組織の維持じたいが大問題。自殺を救うようでいて自殺がなかったら商売上がったり、かういふ組織が客観的な調査などできるはずなし。どうにかして自殺をネタにする意識が働いてしまう。次に2,001年に2,500名程度に施した調査の結果集計に1年も有することのバカバカしさ。そして分析内容でいへば、自殺なる思考は人間に与えられた崇高なる思惟であり、それを考えるようになったことこそ思考回路が作動している証拠、つまり大人になればなるほど自殺を考えることくらい一度や二度あることで、満7歳児の13%が自殺企図ならニュースにもなるが思春期など自殺くらいちょっと考えてみるくらいの思考実験が必要なわけで、それを騒ぐのがバカ。そういうことを考えてみる自分を客観的に「眺めて」みるようなことが自我というふもの……下らないことだが。14%が自殺を企図したことあり、など一笑に付していいが、だいたいこういう質問を10代のガキにしたら、ちょっとそんなことYesと答えてみたいのが年頃といふもの、しかもその自殺企図の水準といふのは千差万別、一概に自殺企図といってもそれが本当に死にたいと思ったことなのかウンコもらしてしまった時なのかもわからず。14歳以前に「ヤッちゃった」子が自殺嗜好が3.08倍なる数字も、こんな若いうちにヤッちゃう子って早熟なわけで、早熟だからこそわけのわからないいろいろなことを妄想するのであり、そのうえヤッちゃった結果、それが親の知るところになったとかナオンが妊娠してしまったとかいろいろ具体的な問題など発生したら、それこそ「あー、死んでしまいたい」と思うわけで、そりゃそういう子のほうが14歳で性体験どころか自慰すら知らぬ子に比べたらこんな調査などあれば「自殺」という言葉には機敏に反応しよう。つまり10代の子の自殺傾向など深刻ぶって報告しているが、所詮、飯の種、10代の子の自殺傾向などより、この研究する者の<まなざし>こそ異常なのだ。あーいやらしい。
▼朝日の社説「宗教戦争にするな」って、戦争が始まる前に「戦争するな」って声高に言ってほしかったねぇ。この「宗教戦争にするな」内容は論外、当然のように読むに値もせぬが、それよりなんなんだろう、あの改行。ワードに落として計算させてみたら2,044字で61行の社説で段落は36。つまり2行で1段落。詩か? 敢えて短文を改行、改行で抑揚つけたようなレトリックの文章でもなし。青木雨彦の随筆ぢゃないんだから改行で文字数稼ぐな、って。情けなし。
中教審は文相に教育基本法改正の答申。せいぜい頑張って「21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成」に励んでもらいたいもの。新たに必要な理念は「社会の形成に主体的に参画する『公共』の精神、道徳心、自律心の涵養」「日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養」を基本法の前文か条文に盛り込むよう提言。何度でも繰り返すが、21世紀にもなって「日本人」に拘るを得ぬ後進性、公共心だの道徳だのといふものはお題目では育たず先達の生きる様を見て学ぶものにてダラシナイ君たち見ていてどこでそれが育つものか、伝統だの文化なるものは官がとやかくいふものに非ず自然といいもの美しいものは敬称され育まれる、伝統と文化といえばカラオケと漫画だけで古典はいふに及ばず鴎外、一葉の文語体すら解せず馬琴西鶴など遠き彼方、それでいて何が文化か伝統か、所詮、明治に空想されし国体を以て有史以来の伝統と誤解しそれを育む程度の無教養、嗤ふばかり。郷土を愛せ、国を愛せと……恋こがれる相手に「愛してくれ」と言ったところで自らに魅力もなければ愛されもせず。無残。どうせダメなんだからとことんダメになってみたほうがいい。
▼大丈夫だろうか、イラク情勢ぢゃなくて我が外務省は。海外安全相談センター(URLはこの富柏村サイトでは有名は「パブ安全」だ、良かったな「スナック安全」じゃなくて……笑)の情報で「20日付外電によれば、同日、タリバーン最高指導者オマル師がイスラム系ウェブサイトに掲載された声明(本物かどうかは未確認)の中で、イラク国民に対しジハード(聖戦)を呼びかけていることが伝えられています」と。ふだんほとんど役に立たない情報だがそのイスラム系ウェブサイトのURLまでご丁寧に掲載されていて(こちら)「ほぅ」と思ってこのイスラム系ウェブサイト、しかもyahooにこんなのが存在してるのはかなり興味深く覗いてみたら、おいおい、これってただのyahooの書き込み掲示板サイトだよ(笑)、オマル師本人かどうか未確認ってIPアドレスででもオマル師本人かどうか確認でもするのか。こんなの誰でも匿名でもどんな名前でも書き込みできる。今すぐブッシュの名でも書き込みできる。しかもせっかく外務省がこのサイトのURL教えてくれてもですね、このサイト、アラビア語なのだ(笑)。最高だぜ、でもこんなのいちいち外電で流した通信社は何処だ?(笑)、お願いだからどこかの国がそんなの政府情報で流しちゃうからお願いだから配信止めてください。マジに、外務省も、この外電ちゃんと検討していたら、そのイスラム系ウェブサイトも見てるわけで、そしたらアラビア語のサイト、紹介しないよな、普通。それともアラビア語くらいに閉口しないのかな、外務省は。嗚呼、香港の肺炎心配するより日本の脳炎のほうが憂慮される現実。
▼連日山のように送られてくるジャンクメールのうち大部分はnetvigator.comのフィルターで防御されているのだが、正式にこちらのアドレス宛で送信されてくるメールは残念ながら拒否できない。その一つが、もともとはこっちが申し込んだのだから仕方ないのだがアップル社(香港)のApple Clubの会報。あれだけMac機愛していながらWin機に乗り換えたのは大政翼賛会への「転向」だが、それにしてもMac機にかつてのような魅力がないのが事実であって、いずれにせよ毎日のように送られてくるメールは無味乾燥、これまでに何度かunscribeをウェブ上でしたが完了されず電話をする。大きな会社ゆえ自動的にテープが答えるかと思ったらちゃんと人間が出た。おっ、さすがユーザーフレンドリーな会社だ、と感心。そこで「Apple Clubのことで」と言ったら転送されたのはいいが、ここでテープにまわされた(笑)人間が出るのは上客であるとか内輪のためだけらしい。そしたらセールス1番、故障2……と続き人間とも話せないしApple Club はどこにも該当もせず。もう一度電話したらまた人間が出て「Apple Club はどこかわからない」と言ったら「8のプロテクションプランだ」と言われて電話を切られた(笑)。もう1度電話して「テープにまわせ」と。それで8にしても誰も出ず、あとからまたかけろ、とメッセージで切られた。何度かけてもこの繰り返し。ようやく電話が混雑しているのでメッセージを残せ、とあって残したが案の定電話はかかってこない。ダメだな、あの会社。晩に再度電話して最初に電話にでた人間に事情を説明してようやく担当者に伝えるから、と。しばらくして返答あり。ようやく用件伝える。だいたいコンピュータ会社でありながらウェブ上での登録、取り消しがうまく作動していないのだからどうしようもない。
▼昨日の日剰にて述べた、1921年に民族も宗教も異なるバスラ、バクダッド、モスルといふ三州が英国によって「イラク」と人工的に創り出されたという事実、昨日書き忘れたが、これを考えるとかりにイラクが「解放」された場合、この無理やりな建国で彷彿するのはチトーのユーゴスラビアであり、チトーの死と共産主義の瓦解によって発生したユーゴ内戦と混乱が、このイラクの地に起きはしまいか。パンドラの函を開けたようなもの。