富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

二月六日(木)曇。朝刊見ると中島らも先生「大麻、禁止キノコ所持」と朝日。禁止キノコって何 だ?……キノコは菌糸だろーが、あるのは。禁止といふのは日本政府が法令で禁止しただけであって、キノコの名称のように使うな、こういう使い方をするから キノコ蔑視、偏見が生まれる。読売は「幻覚キノコ、大麻」と、まだこちらのほうが「え、食べると幻覚があるのかぁ」とまだ夢みがちでマシな表現。月曜日の 昼に美味い焼酎と泡盛飲んで以来、その夜より一滴も酒を口にしておらず。16日に香港マラソンありハーフで4度目の出場となるが今季鍛練全く足りず而も途 中棄権二度続き、鍛練できぬならせめて体調維持と多少の減量くらいして精進の上臨むべきか、と覚悟した次第。すでに四晩。16歳くらいで毎晩酒を飲むよう になり今までいちばん酒長く断ったのですら昨春とその二年前の二晩の入院であったはず。つまり僅か四晩ながら断酒最長不倒距離にすでに至る。手に震えでも あろうかと疑ったが実に快適。月本さん、聞いてますか?(笑)、予想以上に断酒効果はありますよ。夕方に 珈琲など飲むと刺激快適。夜、書を読めば眠くもならずよく読めて(当たり前だ)、快眠のうえ目覚めもよ し。気のせいと笑われようが、事実、四日で腹まわりがわずかながら痩せて多少きつかったズボンはける。深更『民主と愛国』読む。
▼陸羽茶室にて11月末に商人L氏銃殺し犯人その日のうちに大陸へと逃げもはや10数億の民より見つけ出す は不可能かと思いきや湖南省にて逮捕される。犯人の親から親戚までカメラに映像とらえられるだけでも驚きだが、その画面に向って悲しみだの怒りだの「きち んと」顕にする、マスコミの暴力に遭う被害者のはずが出演者と化しているこの「一般人」こそ驚きに値す。狙撃した主犯は人民解放軍の旧軍人にて銃器扱いは 軍で学んだとあっては軍とんだイメージ墜落。この香港で発生せし殺害事件、本来は容疑者香港に送還され香港にて裁かれるべきところ中国側それに応じる構え もなく、通常こういふ場合は沖縄での米軍兵による傷害事件のように犯人が軍内部で庇護されるのだが、中国の場合は逆で香港ならせいぜい懲役10数年が終身 刑か下手したら、この場合は元軍人、軍の威信を大きく傷つけた、と極刑の可能性も大。それじゃこれと逆に香港居民の大陸での犯罪となると香港に送還されも せず。この不均衡こそ中国と香港の関係そのもの、か。
▼世田谷のT君より突然、今月末から十日ほど泰西を旅せぬか、とお誘いあり。20年来の畏兄N氏も同行、 と。日本古典のT君初の遊西にてヴェネツィアとヴィーンに滞在、オペラ三昧。ヴェネツィアはサン・マルコ脇大運河畔のホテル・エウローパ・レジーナ、 ヴィーンはオペラ座隣のホテル・ブリストル。かなり行きたいが2月には父母来港の予定もあり惜しくも諦観せざるを得ず。
田原総一朗といふ人どうしても生理的に好きになれず。ただ『週刊読書人』の氏の連載にて珍しく「そういう 見方もあるか」と思えた記述あり。首相小泉三世の公約守れぬこと非難され「大したことではない」発言、これをマスコミ袋だたきにするが「わたしにはどうし ても理解できない」そうで、理由は民主党菅君は小泉三世が八月十五日に靖国に参拝すること、ペイオフ解禁に賛成なのか、と田原氏。国際発行を30兆円以下 に抑えるべきだと本気で思っているのか?と。答えはいずれも「否」のはず。「小泉首相の措置に反対ならば責めるべきだが、措置に反対でなくて責めるとはど ういうことなのか。こういうのはいいがかりというのではないのか」と指摘。なるほど、そういう見方もあるか、と私も思う。「小泉首相はそのいいがかりに腹 を立てたのだろう」「それをメディアがこぞって(略)小泉首相のいいかげんさが浮き彫りになったと評する」ことはおかしい、と。挑発だったのかもしれない し、それに答えた小泉三世も大人げないが、「実はほとんどのメディアが首相の“変節”に賛成しているはず」と。うーん、たまにはなかなか面白いこと言うで はないか、田原君は、と思った。が、よくよく考えてみれば、どうであれ守れもせぬことを公約とし、その公約も我々が小泉三世が守れなくて安堵するほど内容 であったわけで、つまりいずれにせよ小泉公約は一理も一利もなし、小泉先生を評価するも弁護するも値せぬこと。変節に賛成している、などと言うにもおこが まし。そして結果的に田原氏やっぱり生理的にダメだ、と思ってしまふ。
▼広州の常宿 White Swan Hotel が開業20周年、と。今でこそ珍しくもなき五星酒店なれど開業当時は全国天気予報の絵面にて「広州」はこの酒店の白亜の写真が出たほど全国に名を馳せた中 国開放経済象徴するが如き建物。あれから20年。このホテルの開業から数ヶ月後に初めて中国訪れた折、余の身なりの見窄らしさにホテルへの入館すら断わら れたことも懐かしき。