富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

一月二十七日(月)晴。寒波再襲。先週末よりスパムメール世界中を席巻したそうでかなりの数のスパム メール受取り削除も面倒であったがついに余が生業に使う某機関のサーバーもスパムメール大量に蓄積し不能に。管理会社にスパムメール除去依頼。迷惑千万な 話だがウイルス対策はソフトにしろ人材にしろ電脳インターネット産業において重要なる商売の一つとなっており、これを生業にする者も多し。すでにウイルス との「もちつもたれつ」の産業基盤が成立してしまっている、と認識。いずれにせよ世の中が間違っていること、それは世界中がマイクロソフトのヰンドウズで 作動している、といふこと。27日に米国がイラク攻撃開始か!と思っていたら実はウイルスがマイクロソフト社製の企業向けデータベースソフトを狙って攻 撃、(朝日)、 またもテロリストの勝ち、か。だからテロなんて防げないんだって……テロの復讐心を起すような社会システムであることが問題。だけどここまでくると美学だ なぁ「企業向けデータベースソフト」だけ襲撃、一般市民無差別攻撃せず、企業=資本だけを狙っている。これまで最近は日に150ヒットほどになっていたこ の富柏村サヒト先週、金曜日に突然50件弱にヒット件数激減し「飽きられたか」とか「突然のURL変更でサイト見つからぬか」などと思案、URL変更はお 知らせが旧址にあり、飽きられたといふのも突然すぎ、もしかすると日に150ヒットといふのも実は旧址virtualave.netの接続に問題ありつな がらず何度も進入試みた方が失敗し再度進入でカウンタだけ上がっていて、実は日に50弱のヒットこそ実態だったのか、と悲観的観測。だが実は自宅でなんて 時間もったいなく暇潰しに「仕事中に富柏村日記読む」方多く、会社のサーバーがダウンしているところ少なからず、もっと凄いのはウイルス侵入に警戒し会社 のサーバーのアクセスを中断して自衛する企業まであり、とわかり納得を通り越して安全保障の極端さに唖然。わずか10数年前に富士通のFMなんとかといふ 小さなパソコンにてパソコン通信始めインターネットは9年ほど前だか香港科学技術大学が香港にて初めて開いたhksuper.netだかで加入、 world wide webとは何か、朝日新聞もasashi.comだかでニュースが見えるとかと新聞にあり畏友M君と「どうしたら見れるんだ?」と手探りで勉強、少ない資 料からモ ザイクなるブラウザをダウンロード、初めて画像を見た日からわずか7、8年……あっという間に世の中インターネットとなり今こうしてインターネッ トの災害に世界中が戦々恐々右往左往。すごい世の中にいつのまにかなっていた。こういったインターネット世界で何事か発生するたびに書棚に眠ったままの Manuel Castells "The Internet Galaxy" (Oxford, 2001) 邦訳ありかどうかわからず……読まねば、と思いつつ未読。これは書名示す通りマクルーハンの『グーテンベルグの銀河 系』(みすゞ書房)を意識しているのだが、この "The Guthenberg Galaxy" すら実は未読のまま書棚に。どうしようもない。晩に豆乳下味にした汁で野菜メインのしゃぶしゃぶ、どうしても朝刊にあった人乳鍋がアタマ過るが目の前で美 味しそうに頬張るZ嬢に人乳鍋の話できず。ニュースにバクダッド市街で茶を啜りつつ水煙草吸うオヤジたちの憩ふ姿あり、あヽして憩いたいと思いつつオヤジ たちの独特の体臭の強烈だと思うと、ふと体臭がキツイから香辛料だの芳香料だのが発達したのか香辛料など多くとるため体臭もキツクなったのか、いずれかか と思ふ。わからぬ。ニュース10で健やかに育つ愛子様の映像あり愛子さまが歩き始めヨチヨチ歩いて雅子さまに抱かれたところで映像は突然、車を下りて足早 に建物に入る雅子さま、一瞬何事かと思えば映像は曽我ひとみさんが運転免許取得のため教習所へ、というニュース。お顔立ちが似ている、とか、それもある が、何が似てたって車を下りてマスコミが待ち受ける玄関を伏し目がちに、でもちゃんと笑顔を見せて、といふその仕種一挙一動が雅子様と酷似。どういふこと かといへばこの拉致被害者の「方々」のお一人でいらっしゃった曽我ひとみさん、日本に帰った時のあの緊張感と驚きに言葉なかった時からわずか数カ月でマス コミ取材に囲まれた日々の中で皇族と同じ「ニン」になったといふこと。それくらいのマスコミの凄まじさ。ビートたけし曰く「あれだけさらしものにしておい て『(北朝鮮に)帰すな』もないよ。あんなに日本中に顔を知られたら、ゆっくりと暮らす余裕なんてないだ ろう」と。御意。同じニュース番組で「いま入ったニュースです」ではエアジャパンのソウル発の便、成田空港にてオーバーランした、と。しかし滑走路の先に 設けられたオーバーランエリアにわずか10m入っただけで怪我人もなし、香港の旧・啓徳空港であれば僅か10cmのオーバーランでも海に突っ込んでいるわ けで(実際に91年だかに中華航空機のオーバーラン、海に突っ込み機体切断の事故あり)、そういう事故で ないかぎり「いま入ったニュースです」と伝えるほどだろうか。朝青龍らモンゴル力士の大活躍では「なぜモンゴル出身の力士がこんなに強いのか、その秘密を 探ります」とか、って、実は「柏戸はモンゴル人だった!」とか特ダネでもあるならいいが、「モンゴル相撲が源流」だって……そんなことくらい小学生でも 知ってるだろうが……ホントにテレビ制作陣、バカかもしれぬ。相撲といへば吉報と思ったのは横綱審議委員会の委員長・渡辺恒雄の引退(朝 日)。溜飲下ル思いだが後任が石橋某なる共立女子学園理事長、で77歳、ナヴェツネが76歳で辞任理由を「かねてから委員の(在任期間を限る)定年制を主張してきたから」と宣ふが、そんな一筋縄でいかぬがナヴェツネ、何を企むかと思えば、 さもありなむ、委員長代行なる職を新設、これにナヴェツネ子飼のNHK史上最悪の会長と誉れ高き茨城の田吾作・海老沢某(68)が 就任。つまり石橋某は傀儡にて海老沢が実質的な会長、近い将来会長にするための布陣にすぎず。ナヴェツネ05年まで委員として残留、石橋某、海老沢と続く 時代に院政、もちろん狙いは読売グループの将軍様に飽足らず海老沢NHKへの食い込みに他ならず。それにしてもナヴェツネ、朝青龍について「好感を持てた のは初場所千秋楽、国歌吹奏の時に一緒に歌っていた姿。敬意を表すのを忘れていなかった」と。バカである。鍋常がモンゴル力士君が代歌うのに感動するのは 野暮だが自由、だが横綱審議委員会委員長なる者、立場としては国家、国歌など措いてまず横綱になるこの力士の相撲に共感すべし。「本当なら日本人力士に頑 張ってほしいがモンゴル人でも君が代歌ったんだから可愛い奴」といふ程度の発想、これが日本のマスコミの将軍様、世も末。
▼宮台氏の「田吾作」による天皇利用を終焉させ近代個人主義を確立させるために天皇個人への尊崇を通過する ことを戦略的に選択した、といふ思想展開、築地H君曰く「アンタ今さら北一輝?」と。確かになぁ。それにしても問題は「援交から革命へ」を選択していたに してもH君のいふ通り革命で「やはり日本史上、成功したヤツはいない(笑)」と思えば、宮台理論に拠って も「すべての社会運動は成功してナンボ」だと思えば「負けてもその闘いが次の世代へと引き継がれるのだ」などという白土三平流は無意味なのか、と。これは たんなるロマンなの? そういへば白戸三平『カムイ伝』だって、あれだけ熱く読まれた時代あったわけで、あれを読んで大人になった人たち世の中を担う年代 となっているわけだが、あの作品で得た精神が血となり肉となったのか、たんに若い頃の漫画で終ってしまっているとは思いたくないもの。
▼先週の新聞読んでいると24日の朝日「夕日妄語」にて加藤周一氏のお得意な「ふと居眠りしていて私は芝居 の夢を見た」といふ書出しにて、題して「初夢軍逆波(はつゆめいくさのさかなみ)」。夢芝居の筋はおいと いて米国のイラン征伐に正当性なく「爆撃すればバクダットの廃墟から「民主主義」がたちあらわれそうな気配もない」のであり石油目当ては戦争目的にはなら ず(これは強盗以外の何ものでもなし)。で加藤氏の読むLe MondeであるとかLa Republicaなどには反戦を支持する市民の多さが報道されローマ法王による戦争は危機解決にならず国際法の尊重呼びかけが載る。が、そういう世界の 風潮のなか世界=米国と勘違いした東洋某国は最高法規たる憲法に「武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄 する」とありながらその政府は明かな違憲行為に当るのに戦争の現場へとイーズス艦派遣することで世界のなかで役割果たしていると誤解。世も末日なり。
▼狂っているのは日本政府ばかりでなし。新聞読めば些細なことながら日頃その健脚自慢、家族の再三の注意に も反して香港でも有数の交通危険地帯となった北角の狭く交通量多き英皇道の横断歩道、信号無視し、暴走するバスの隙間縫って渡るを得意自慢とする老人あ り、遂にバスに轢かれ死亡。これこそ自業自得、哀れむ言葉もなし。中国湖南省長沙のレストラン、奇を衒って「人乳宴」売りだすが人道的見地から非難多く中 止(蘋果日報)。滋養強壮に、と胎盤だの胎児食す奇食あり、それに倣ったか。母乳提供す「栄養師」、 20〜30歳の哺乳期にある「山区村婦」にて「工業汚染なき辺鄙」ゆえに母乳も栄養高、と。この婦女6名にて毎日2,400ccの母乳を産出。名菜は人乳 鮑魚(鮑の人乳煮)、人乳肚花(魚腑の人乳煮)、乳香蘋 片(蓮根の人乳煮)、人乳魚頭火鍋、人乳豆腐湯にデザートは人乳黄瓜。強いていへば野菜足りず、料理が煮 物ばかりなのは乳の栄養分毀さぬには油での炸炒モノ避けた結果か。商業発展も盛んだが繁盛狙い奇を衒うこと甚だしきは中国、この人乳宴も人辱宴(いずれも発音はren-ru-yanと同じ)と非難される。
蘋果日報の看板エッセイ・蔡瀾氏数回にわたり60年代文化懐古。さすが当時謳歌せし氏の内容と感心して読 んでいたが本日、その最後に「もし60年代形象を見たければKonemann出版の中英日対訳の"1660S"をご覧あれ、と。これがネタ本か。それにし ても香港代表する随筆家、ネタ本見てただ書いてはいけないし、反対に親切にネタ本バラすか、普通。よくわからぬ。