富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

一月初一日(水)曇。久しぶりに日本の実家に電話、妹より地元の江戸時代の呉服屋時代から創業270 年を越えた老舗の百貨店が来月閉業と知らされる。子どもの頃、豊かさと賑わいの象徴の如き客があふれた百貨店。百貨店前の傷痍軍人、七味を売る老夫婦、正 面玄関横に設置されたテレビから吉田茂国葬の様子が流れ、そこにのちにマクドナルドが初めて開業。この頃が最盛期か、百貨店前のバス停は百貨店の客、マ クドの客、バスを待つ者と歩行者。この頃の市民は何処に消えたのか今では休日とて閑散とした百貨店。屋上にあがれば当時の屋上遊園地の賑わいなど嘘の如く 何もなし。見下ろす街もなんの喧騒もなし。広州で風邪をひき元旦恒例の長洲島での10kmに参加できず。午後テレビ中継見ながら競馬。R7より最終R10 まで好戦。R7(三班1000m)はSize厩舎の五月初戦から1冠1亜2負のForte(父Snippets/母Salamore)と10月の初戦で冠 軍のSuper Brose、実力伯仲だが調教の時計とSnippers系ということでForteとして接戦で勝ち。両馬ともダービーに向けてかなりの期待。R8(香港 G3、1200m)は期待のAnabank(父Anabaa)が退出してしまひ韋達騎乗の喜望峰Cape of Good Hope、両馬とも12月の香港Sprint参戦馬だった、とするがSize師のGrand Delightが132磅背負てまさかの一着、結果論だが1400mを得意とする先行馬の1200mでの初戦で外したのが間違いだが12月の香港マイルで も11着。Size師にただただ感心。R9(二班1200m)は今季四班より登ってきた飛鷹(告東尼厩舎)か原居民の陰に隠れてしまっているが九歳にてま だ活躍する彩色時代(華)か、で飛鷹にして見事一着。本日、告東尼師、高雅志騎乗で四勝目。今季は独走するSize師に告東尼がどこまで追い上げるか、が 見物。R10(一班1400m)、侵略(東)、名前はイヤだがKiddyland(Woods)、Clement Supreme(Hynes)に時代巨星(Size)と面白い組合せ、注目は時代巨星が三月からの7戦で5冠1亜1負と好成績で四班からついに一班まで昇 りつめ初戦、本日はハンディは116磅と軽いが一班戦に立ち向かえるかどうか、告東尼師と高雅志の本日四勝目かSize師とDyeの三勝目かということも あり最後まで悩み時代巨星がSize舎にしては調教の時計が振るわず侵略としてQは侵略と時代巨星、結果二馬の競り合いとなり時代巨星が勝ち。Qのみ取 る。現場で見たかった競馬日。夜、K氏とT夫妻来宅し酒処Zといわれるほど酒の肴が美味いと評判のZ嬢のおせち。K氏持参の越之寒梅(金無垢)と福井の黒 龍という大吟醸4合ずつをさらさらと飲み干してバランタインの21年で歓談。
▼テレビの新聞報道では昨晩の午前零時のカウントダウンの様子、とくに尖沙咀に群がった若者どもが聖誕前夜 の混乱を再現したかどうかの様子が繰返し流される。広場の樹木、塑像の類には厳重にサランラップがまかれ噴射塗料での破壊から守り警察だの民安隊だの政府 が応急で組織した公共物愛護大使といふ名のボランティアだのが秩序維持に乗出す、と。ただ群がって時間を共有すること以外に何もなき若者ども手にした午前 零時になると蛍光棒を投げて新年の到来を祝し落ちてきた蛍光棒を今度は誰彼ともなく投げつける遊戯始まり無数の蛍光棒が放られる狂乱。とくに警官とテレビ のカメラに向って投げられる蛍光棒は何を意味するか。反権力? 公共物破損の場合、口頭注意でなく即検挙というお触れが功を奏したのか大きな混乱も破損も なく何人かが連行され粗野なる群衆が去ればけして大量とはいへぬゴミが散乱した程度。若者のこういった行為が悪烈になるにつれ警察など官憲の治安維持叫ば れ公安装置が強大となる。その時の被害者はなんら自立も自律もなきままただ貪る如く「自由」を謳歌する自らであることも解せぬ若者たち。不憫。
▼昨年は<アフガニスタン戦場となりて>
 カブールの戦終わりて人々の街ゆくすがた喜びに満つ
と謳われた陛下、今年の御製は葉山御用邸にて、と
 年まさる二人の孫がみどり児に寄りそひ見入る仕草愛らし
と詠まれる。国の文化だの伝統などと宣ふ代議士官僚の諸君が「みどりご」を「みどりじ」などと読まぬこと を、また「緑色の子ども、って何だ?」と嬰児(これは字は若葉の如くで「緑児」でもよいのだが)を怪奇映画的発想せぬことを祈るばかり。
かりに陛下、アフガンに続けて今年詠まれたら
 アメリカを悪むテロとて人の世の幸を願ひて過ちを為す
とでもお詠みになってしまふからか(御製を偽作は不敬なり)、 視線をお近くに御座す孫宮らにお配りになったか、とお察し申し上げる。
陛下の新年のご感想には「振り返ると,平和条約が発効して初めて迎えた新年がちょうど50年前になります。 この50年間に今日の日本を築くために人々が払った非常な努力に思いを致し,より良い未来を求めて皆で力を尽くしていきたいと思います」と。歴史の見直し だの世界平和への軍事的貢献だのと吐く輩にかぎって陛下への敬意を払ふが如き態度を見せるが、明らかに陛下のご感想は戦後の日本の憲法とそれに基づく平和 主義へのご威徳の念に他ならず。余談であるが宮内庁サイト、気持ちはわかるが雰囲気だそうとIEにてMSのだろうか何か明朝体など使ったがため Netscapeでは文字化けあり、配慮足りず。
▼SCMP紙、C.K.Lau氏が編集主幹となってからの紙面改革でできたInsight頁、掘り下げた論 説記事に読ませるもの多いが日本についての記事少なくなし、いや多い。一昨日日剩に綴った三扁もそうであるし本日はRichard Halloranなる紐育時報の元アジア特派員で現在はワシントンで軍事関係を担当する記者が、マレーシアの首相マハティール博士の12月の来日でマハ博 士は日本に対して欧米のイスラム対峙姿勢に対して日本は第三者の立場で欧米がイスラム諸国を理解するために国際政治の場において独自の立場で働きかけるこ とを期待、と述べたことを取上げ、Halloran氏はルックイーストなどマハ博士の日本をアジア諸国の発展の目標としてきた経緯もあり(でも知日派のマ ハ博士はちゃんと「日本の失敗から学んだことも多し」と言及)日本の役割への期待の大きさを紹介。マハ博士の期待はわかるが、余はこのマハティール首相の 来日とこの発言、日本の新聞で読んだ記憶なし。国防キッズの独走であるとか都知事石原の宣ふ「強い日本」など放置するまえにこういった非常に有効な外交政 策が紹介されるべき。だが、紹介されたところでそれじゃ日本政府、外務省がそういう立ち回りをできるかどうか期待できぬ、か。
東証は大晦日の締めくくりの大納会長嶋茂雄を招き長嶋の手締めで来年の景気回復を祈願。誰か縁起のいい 人を、という長嶋起用か、時代錯誤。まだ長嶋に頼りたいといふ発想じだいが来年も景気低迷の予感。なぜアントニオ猪木ではなかったのか、長嶋と猪木という 選択の思考に差異はあるまひと思うが、猪木の場合、わけのわからぬ怪しい投資歴などあり長嶋のほうが株式という仕組みを理解できていない可能性すらあるぶ ん潔癖か。
農林省はアイガモ農法の合鴨など特定農薬に指定し利用合法化を、と。管理上のこととはいへ感性の問題とし て田に遊ぶ合鴨を農薬とできる恐ろしさ。こういふ人たちが官僚。