富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十二月三十日(月)薄曇。Z嬢と朝のT820直通列車で広州。肇慶だの従化温泉だのの途中立寄りが続 き広州だけに来たのは何年ぶりか。列車のなかでずっと同行の者、しかも通路はさんだ側に坐る者と大声で語るか携帯で誰かに電話するかずっと続ける乗客あ り。本人に興奮しているといふ自覚症状なし。こんな奴の隣にならなかった、会社の同僚ではない、家族でもないことを幸せに思わざるを得ず。広州東站に到着 して入境の列に並ぶと目の前の日本人八名ほどの団体、入境カード誰も全く記載しておらず列より外され当方はかなり早く入境。入境カードは列車内で車掌から 配られており誰か気がつかぬものか、誰か書かぬものか不思議。八名でカウンターに並び記載するを見るに興味深きことは一斉に記載始めるではなく、まず八名 のなかではある程度そういうことに慣れているオバサンが記載始め、それを見本に隣の者が記載しそれをまた隣が写す、伝言ゲームの如し。性別のSexに週1 回と書いたという笑い話もあるが、氏名、生年月日、旅券番号など英語と漢字で書かれていて解せぬものか。周囲の者が興味深く眺めるなか純朴なる表情で記載 続ける八名、混雑していたら近寄って貴重品を窃盗してもバレないね、と話しつつホテルの送迎バスにて沙面の白天鵝賓館White Swan Hotelに投宿。このホテル、いつ来ても中国の赤ん坊を連れたアメリカからの夫婦多し。中国の孤児の里親計画らしく里子を授かったばかりで満悦な表情。 これから中国の孤児が米国に連れて帰られる、というそういう筋。いろいろ考えさせられる。まさに赤い靴履いてた女の子、異人さんに連れられて行っちゃっ た、である。異人さんが偉人さんかいい爺さんであることを望むばかり。昼に出街。WWFなど動物愛護団体から悪魔の如く罵られる清平市場、野生動物から犬 猫まで食用に売るわけだが、久々に来たら市場の外の清平路にまで可愛らしい犬猫を路上で売る者多く広州でも外国人観光客の多いこの路上では惨たらしと感じ たがよく見れば餌皿だの首輪だの犬用の服まで売っており愛玩用。ペット飼育がかなりブームであることを知る。散歩しつつ長寿東路の老舗堅記にて雲呑麺と炸 醤撈伊麺。香港の洗練された湯と麺に対して限りなく素朴な味、秀逸。長寿西路より燿華街の古い町並みを抜け逢源街。市街はどんどん古い町並みが壊され商業 ビルに高層住宅の乗っかった複合建築物が彼方此方に現れ古風な路地を懐かしみつつ、実際に見てみれば1920年代の隆盛の頃に建てられた華南式の低層建築 群はかなり老朽化激しく下水だの居住環境を考えれば保存することも難しく、殊に煉瓦造の住宅など危険なほど。実際に燿華街などは伝統的建造物の保存地域に 指定されているが改修された様が寧ろ映画のセットの如く味気なし。逢源街の路地など美観のため?どの建物にも原色など関係なく白の漆喰の如きものを雑に塗 りたくってしまひ、というより寧ろバケツにはいった漆喰を投げかけた如し。茘湾博物館参観し茘湾湖公園。龍津路をまわり康王中路裏の翡翠玉器市場。千を越 える翡翠屋、翡翠屋、翡翠屋。広州の古刹・華林寺参拝。清平路よりホテルに戻る。流花湖公園にある唐苑酒家にて晩餐。湖のなかに築島ありそこに第三京浜沿 いのラブホテルの如き「札幌時計台をのせたベルサイユ調の宮殿」、それが1998年に高級食材専門料理屋としてバブルの鳴り物入りで開業した唐苑。味も じゅうぶんに及第だが格別といふほどではないのだが鱶鰭(ふかひれ)であれば名物の天九翅が138元/両でも香港の半額近いのに優待価格は68元。二人で 四両(約200g?)上湯で食しても272元。魚頭の煮物、金切鶏、潮州粥など食す。気温は14度ほど、でもZ嬢ともども朝から風邪気味で午後の長距離散 歩が響いたのか悪寒。ホテルの、設計から照明、環境まで寛ぎ空間として評価に値する健康中心のスパにて一浴。ホテルの一角にGame Centre兼ねたPool Barあり。米国の総領事館職員か多国籍企業かに親が所属し聖誕節も広州にて過ごす憂鬱そうな毛唐の小僧どもがビリヤードして遊ぶ。なんの苦労もなくただ沈鬱としたまま育つ様もまた哀れ。珠江対岸もすっかり美麗といふよか沿岸にパチンコ 屋とラブホが林立してネオン意匠競いあうが如く巨大な飲食店だの酒場だのの都市開発?が進み、ホテルの客室よりそれを眺めつつ日記綴り上網。
▼客室のテレビでNHK World Premium、CNBC、国家地理雑誌(National Geographic)、ドイチェベレ、伊RAIなどが広播電影総局のお達しにより12月5日より受信停止、と。何か政治的な思惑?と思ったが香港の地上 波4局からCNNまで映るわけで単に受信料を課す衛星放送の勝手な不法受信(とくに個人視聴でない点だろう)について中国も政府がそういったことに敏感に なった証拠か。客室に夕方、官報China DailyでなくSouth China Morning Postが配られていたことも一驚。SCMPも親会社が親中系であり、法輪功であるとか六四であるとかよっぽど中国政府が嫌う記事でも大きく出てない限り は広州での購読も可、という感じでしょう、きっと。