富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十二月十九日(木)曇りから雨の予報に反して好天。今週香港に滞在するY君と深センに遊ぶ。改装で多 少見栄えのする中国側の通関にて外国人に対して内地居民台胞(Resident of Mainland China & Taiwan Resident)といふ表示見てこの表示は見慣れているものだが考えて みれば台湾は中国に属すと主張する中国も現実としてはこうして台湾を内地(Mainland)と区別して おり台湾居民は内地居民と別と認めているわけで、いくら政治的には一国といっても現実的にこうして対応しているのだから季登輝に象徴される中国を煽る分離 主義は一利もなきもの、と思う。市街を散策して昼に重慶火鍋屋が並ぶが摂氏30度近い暑さにて火鍋屋が閑散とする嘉賓路に一軒、かなり賑わう雪花なる名の 回教料理屋あり(この「雪花」なる店の名と回教料理とのギャップ、「菊花」という名のケジャン料理屋の如し)。 食感働き食してみると豚肉を使わぬだけの中華なのだが肉巻、飽子、牛肉麺など廉価にてかなり美味にて殊に甜酸大白菜は秀逸。午後、按摩。余がY君と話して いるところ見た按摩師に「日本語が堪能だな」と讃められこそばゆい思い。余を何処の者と察す?と質すと「白話(口語)が 上手いのだから」と(=つまり普通話のnativeとは思っていない……)「新疆ウイグルか」と(御意)。按摩師、余が日本人と「真相」を語ると凝りを揉み解しつつ日本経済について言及し日本が不況に陥ってから 十年以上か、日本は本当に経済回復する意思があるのか、とくに日本政府が全く有効な手段を用いれず、日本の不況はアジアへの波及効果も多く周辺他国にまで 負荷となっていることを理解しているのか、と。全くもって御意。深センの按摩師に疑問呈される日本政府とは何ぞや。香港ばかりか深センにも珈琲専門店あり TT'sなる店にて本格的な珈琲、ただし22元は昼飯より割高。深センに来るたびに18年前独りリュック背負って極度の緊張でもって深センの国境の橋を渡 り「竹のカーテン」の向こうの中国に入境した夏を思い出す。そこにこうして気軽に半日遊とは。
▼そういえば深センよりの帰路読んでいた『噂の真相大槻教授の「反オカルト講座」に、18年前の余の中国 旅行で思い出したが当時、吉林より二日かけて訪れた北朝鮮との国境のカルデラ湖・長白山天池にこの夏、テレ朝の番組が「チャイニーズ・ネッシー」を探しに ロケと。この池、中国側は観光地化しているが(18年前の話だが)北朝鮮側には噴火口の岩肌にスローガン彫られ国境警備の兵士が数人監視するばかりの殺伐 とした風景、そこで水中に生息する恐竜探しとは……。
▼『噂の真相』といえば、日本青年社の構成員を名乗る人士が噂の真相編集部を襲撃し岡留編集長に怪我を負わ せたことがあったが今月の同誌一行情報に「本誌を襲撃した日本青年社の名誉総裁に有栖川宮識仁殿下が正式に就任」とあり。『噂の真相』誌でしかも一番信憑 性乏しき(笑)一行情報、調べたら本当……。有栖川様はよくご存知 あげなかったが広島原爆の日天皇皇后両陛下をお招きすることを主旨とした団体の主催する会合にて日本ペトログラフ協会なる団体の方の「天皇地球市民  古代日本は地球のヘソだった」なる講演会にご臨席さ れたりと、かなり精力的にご活躍と識る。
▼独逸の映像作家レーニ=リーフェンシュタールが百歳の長寿でまだ健在にて而も新作映画『海中の印象』が公 開されたと知り目覚める(朝日、瀬川裕司(独文)明大教授による)。実に48年ぶりの新作。ただ余は『ビックリハウス』誌が榎本了壱編集 長の頃、渋谷が今のように街頭少年少女に占拠されずまだ美しくパルコが<文化>のように思われ頃、パルコの書店にて(も しくは原宿のオンサンデーズだったか……いやパルコだ)このレーニの撮影した写真集『ヌバ』を見てその画像の美しさに圧倒され、それから映 画『民 族の祭典』にて圧倒された次第。まだ健在でしかも映画制作とは……。更に驚くことはナチ時代の映画『低地』(公 開は54年)にて収容所に暮らすロマを エキストラとして映画に動員したことでレーニが戦後「彼ら(ロマ)らは全員、生きて終戦を迎えた」との言 及を繰り返し、その「言及が」「大量虐殺の否定」罪!に当るとされフランクフルト地検敢えてこのレーニ百歳の誕生日当日に捜査を開始と……大量虐殺の否定 という言及すら有罪となる独逸の徹底ぶり。瀬川教授曰く、ナチ関係の犯罪には時効なき独逸において少なくともロマを(映 画撮影に)強制労働させた件はレーニは金銭的補償を免れない、と。レーニは「過去」から解放されず、而も徹底して美の追及だけが宿命である レーニは「自分に問われている「罪」の本質を彼女が正確に理解することも永遠にないだろう」と。
▼『ビックリハウス』に触れ当時を回想す。当時はこれと雑誌『面白半分』が愉快。この『ビックリハウス』に 読者参加型のジャパベン合衆 国なる企画あり投書が採用されて晴れて国民になれる仕組み。余は確か専門熟語講座なる造語コーナーに「景品興行地帯=パチンコ屋密集地」なる造語 掲載され421番だかの国民になる。この専門熟語講座はのちに『大語海』というベストセラーの辞書本となり、これに「景品興行地帯」も掲載あり。それと同 じ頃にパルコ出版の「エンピツ賞」なる文芸賞?もあり、これに二度応募して二度とも佳作だかに選ばれたが中学で教師にバレて(今にして思えば何がマヅいの か)勉強に集中しろ、と。
マクドナルド1965年の株式上場以来初めての赤字転落(祝)。 競走激化と安価競走に加え米国ですら消費者の健康思考と肥満回避が現われ店舗閉鎖、「敵国の」中東や「火薬庫」中南米からの撤退などリストラで約4億ドル の特別損失と。願わくば次はディズニー。