富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十二月十七日(火)曇。百年ぶりにジム。昨晩に引続き中野のY君、それに湾仔在住のY君とジムにいた C君誘い尖沙咀の金島燕窩潮州料理にて晩餐。
自衛隊イージス艦「きりしま」世 界平和の一翼担おうと出港す。これまで自民党にも戦前戦中派のいくらタカ派でも実際の戦争の惨禍は御免といふ平和ストッパーあったものが戦後生まれの戦争 の悲惨さなどトルストイどころか漫画でしか知らぬ国防キッズらの暴走に歯止めきかず「きりしま」太平洋を勇ましく南下。それを見た国民もかつては「戦争は 御免」だったのが恐れるどころか出口なき不況と梗塞感のなかでこの「きりしま」の航海をどこか晴れ晴れとした気持ちで眺める者もおり、ただし大部分の国民 はこの出港すら関心なし。陛下はこの様をどのようなお気持ちでご覧になっているものか。余はこれは真剣に菊の御紋章の旅券を放棄した場合さて何処の旅券を 得ようか、海外に逃亡したまま日僑として東アジア反日武装戦線の結成もありか、などと茫然と思うばかり。
▼教職員組合の全教は岐阜での教研集会にて右翼の妨害を理由に自治体に会場使用断られ続け全体会開催断念。 思想信条の自由を憲法に掲げながらこの国家の実態は極めて民度低き寄合い社会。たかだか革新系の教員組合の会合がなぜにここまで敏感になるのか。右翼の実 際の妨害などけして被害甚大にあらず、ただ「アカ」を避ける発想は戦前の水準より更に低し。
イージス艦イージス艦といふかイージスなる言葉自体このカナ書きでは不明だが、これはAegisにてギ リシア神のアイギスにて庇護とか加護の意、under the royal aegisなら「王室の庇護の下」だが、キョービの現実はunder the aegis of the Unieted States of America というわけか。
▼今月の歌舞伎座は三島先生の「椿説弓張月」再演。月本氏より歌舞伎座特製の来年の暦とともに筋書き頂く。 築地のH君より見物の報せあり。三島先生入魂の二大見せ場。高間太郎の切腹玉三郎の「琴責め」いずれも血糊がドバーッと噴き出す悪趣味な演出でケレン味 たっぷり。両方とも三島先生の願望? 「こうやって死にてえ…!」って、マジで悩んだか。どうして人は一回しか死ねぬ、って死ぬほど悩んだかも。切腹は介 錯人さえ確保すればイイが「琴責め」の方は人員が確保できないと無理。「琴責め」とは源為朝のかつての家臣でありながら寝返って今は為朝の命を狙う裏切り 者・武藤太が為朝の妻・白縫姫(玉三郎)が隠れ住む雪深い肥後山中の屋敷に引っ立てられ、白縫姫は武藤太の処刑を即決、裏切り者にふさわしい凄惨な処刑法 として肥後国につたわる仕置「琴責め」の断行。武藤太を引っ立てていた警護の武士は「しばらくさがって休んでおじゃれ」ということで、武藤太のみぐるみは いで褌一丁にしたところで退席。姫とお付きの女房4,5人、女ばかりが残り姫が優美に琴を奏でると、その音色に合わせるように女房たちが手に手に鑿をもち 木槌でもって武藤太の体中にうつつけ、そのたびに鮮血がほとばしり武藤太は激痛に絶叫をあげ姫はその叫びを聞きながら眉一つ動かさず琴を引き続けトドメは なかなかささないが頃合いを見ておつきの女房が心臓にうちこめと合図を送り長い苦痛の末に心臓に鑿を打ち込まれた武藤太ひときわ高い絶叫をあげると口から 大量の血をゴボゴボと噴き出してついに絶命、姫、顔色一つかえず「屍は狼の餌食とせよ」と宣う、という壮絶なもの。H君気になるところはこの仕置きのあい だ武藤太は「須く」無抵抗にて後ろ手に縛られてはいるものの柱や木に縛り付けられてるわけでもなし寧ろ自ら進んで刑罰を受けてるようにも見え、これでは雪 中の深山に潜伏するアジトで裏切り者を処刑……アイスピックで同志を「総括」した「連合赤軍」の如し、と。連合赤軍榛名山の山岳ベースで凄惨なリンチ事 件を起こしたのは三島の死後わずか一年ばかり後、この事件、三島先生に見せたかった、と。三島先生ならできれば自分の演出でなく処刑されたいが楯の会、三 島先生と隊員との格差がありすぎとても三島先生を総括し断罪するまではするところまでは成長しきれず壮絶なる最期に期する先生、楯の会を育てた末に「ボク も処刑してくれ」ってブントに入党、これには盾の会も先生の裏切に怒り心頭し先生を処刑、先生本望を成就……という最期もおおいに夢想できたかも、と。た しかに。