富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十二月初六日(金)朝は寝室より眺めれば真っ白な濃霧ながら天気予報外れ久方の心地よき快晴。晩に拙 家に戻り食材も作り置きもなく外食すべきことをすっかり忘れていたことにふと気づく。老痴なり。近所の超級市塲にて即席の杯麺(カップヌードル)と公仔炒 麺王購い何れも三分にて同時に熱湯を注いだ場合にどう食せば麺伸びずかと一考しまず杯麺を先に主に麺を食し大略麺を食したところで炒麺急ぎソース絡めて熱 くもなければ一気に食し少し冷めた杯麺のスープを飲む、といふのが最も効率よいかなどと考えつつニュースを見れば日本にては道路公団民営化にて委員長辞任 での民営化答申といふ結果に代議士らの醜悪なる面見るほどに気分悪し、小泉の数日前の「結論が出てから……考えます」コメントが何度も繰返されるがあの 「出てから……考えます」のあの0.8秒の間が、ブッシュの如き失語症かと思うがさにあらず尋常な演出力のある映画監督なら間違いなくダメ出しするであろ う、三流役者のどうしようもない芝居での間のとりかた。確かに「結論が出てから考えます」と一気に言ってしまったら何を意味ないこと言うてんねん「アホ か!」と言われるのも「出てから……考えます」とすれば苦渋の選択とでも映る、か。同じ鈍言でも故大平正芳君には言葉に誠実さあり。いずれにせよ小泉改革 などといふものが幻想であることがまた一つ明らかになるが、自民党は下手な素人芝居がいい芝居など見たこともなき野暮な客に親近感としてウケる小泉といふ お神輿を背負って実は旧来の利権屋がどろどろと欲を貪るばかり、野党は自民党のほうがまだマシといわれるほどの不甲斐なさ、あまりの為体に呆れれば、あと に続いたニュースにてニュートリノ発見に挑む学者らの姿に清々しさあり。ゴ ダール監督の日本初記者会見三週に渡り週刊読書人にあり最終回にてグリーンスパンFRB議長の「私が言ったことを皆さんがわかったのは私が下手な 表現で自分を語ったからだ」を引用し会見を終わるあたりは憎たらしいが聴くに値する話も多く「ソニーのカメラを持っているとスピルバーグと同じくらいうま く撮れると思ってしまう」のだが「まさにスピルバーグじたいがとても悪いのであって、それは間違い」と嫌みも言いつつ、よく学生に映画を作るには何をすれ ばいいのか?という質問も受けるが「ソニーでもパナソニックでもいいけども小さなカメラで」「最初は本当のあなたの一日を語るように撮ってみなさい」と答 える、と。「カメラを使って、映像と音を採って、本当の一日を果たして語ることができるかどうか。語ってみたら本当の一日は語れないということがわかる。 自分にはできない、本当の一日がこのカメラで語ることができないとわかったら、ハリウッドに行きなさい。ハリウッドなら受入れてくれるだろう」とまたハリ ウッドをコケにして「しかし、もしも自分が本当の一日を撮れたと思うなら、友だちやお母さん、或は身近な人に見せなさい。見てもらって、果たして映画館の 入場料と同じ10ドルを、これに対して払うことを受入れてくれるかどうか聞きなさい。おそらく観客は自分に本当に近い人であっても、あなたの本当の人生に は全く興味がないことがわかるでしょう。そうすれば、本当の映画とは何かという問題提起を始めることができるから、二本目では少し成功する機会が出てくる かもしれない」と。いい言葉だ。何度も読む。荷風の日記の面白さはこれと同じ。本来、誰も荷風の人生になど興味もないのだがどう書くかにてそれが作品とな る。明日のトレイルレースの用意。
▼築地のH君より笑話あり贈収賄で逮捕の八千代市長、週刊新潮によると新宿2丁目の常連にて自らホモバーの ママをしていたこともある、と。2丁目といへば靖国通りの旧・八千代信金八千代銀行)の対面が2丁目なのも偶然か(笑)。新宿は吾母の生まれが四谷三栄 町にて西新宿の常圓寺に墓あり健脚の祖母は昔のまま新宿から四谷など人込み甚だしき新宿通りを避けて靖国通りを歩き、それによく連れられたもの。信心深く 通りすがる寺社にては門前でも拝礼欠かさずこの八千代信金の向かひには内藤新宿の遊女の墓多き正受院あり、まだ子ど もにて遊廓も赤線も知らぬ我に無縁仏の多い寺ほど拝んであげないと、と解いた祖母。十二、三年ほど前だかに故・実川延若の「すしや」の渾身の舞台を見たの が八千代信金の裏を入った新宿文化センター。Z嬢とその芝居が跳ねて四谷荒木町にあった馴染みのバーまでこの界隈から富久町にかけて歩けば乱歩の舞台にな りそうな風情あり。新宿のこの界隈には馴染み深し。