富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十二月初三日(火)壬午年十月廿九日なり。晴。かなり久々にNHKプロジェクトX視る。イトーヨーカ ドーの社員がセブンイレブンを日本にて開く物語。緻密な製作のようでいて粗いところは昭和43年のピンキーとキラーズ恋の季節」を 昭和46年を描いた映像で使うようなところ。いつものノリに白けてといいつつ、つい開店したものの多くの難問を江東区での12店による集中展開にて問屋か らの卸の細分化などで乗り越え軌道に乗せたといふ物語の山場ではつい涙腺緩む(笑)、が、結局最後は平成 2年に合州国にて本家セブンイレブン経営破綻しそれをセブンイレブンジャパンが救う、という、その劣等感から優越感という展開、今から 12年前のバブルまだ絶好調の時代「めでたし、めでたし」で終わる「もっていきかた」にやはり嫌だ、と思う。セブンイレブン・ジャパンのサイトはかなり見応えあり。全国に8000店以上ありながら東北は青森、秋田、中 部は富山、石川、福井、岐阜、三重、山陰の島根、鳥取、四国4県、そして鹿児島と沖縄にセブンイレブンがないこと。もちろん他のコンビニとの経営圏の問題 だろうが全国を網羅しているようでいて富山から岐阜を経て三重に到る分水嶺にて天下分目の関ヶ原鈴鹿峠か東と西のセブンイレブンは分裂されているのであ る。また東京都の1,258店に対して岩手7店、愛知11店など県によって極端に少ない、等々。『最後の宦官秘聞』読む。
▼日曜日朝、中環の著名なる陸羽茶室にて発生せし客の銃殺事件、被害者は土地成金にてゴルフ場造営や不動産 下落などにて佳からぬ噂も少なからぬ林某なる富豪、この陸羽茶室の常連にて(余も週刊香港K氏と早茶のおりこの「葉巻」 林氏を見かけたことあり)それを知る殺し屋、客のふりして茶を服して待つこと一時間、林某現れ早茶する間機会を狙い殺し屋埋單して席を立ち 洗面所に向って出てきて林某に近づき鬢に拳銃当てて脳を直撃し逃亡。未だ捕まらず。日本でいえば麻布の野田岩にて蒲焼きを待つ間にバブル成金が鰻の串脳に 一刺され即死するが如し。また陸羽茶室に泊が付き歴史に名残。昨日平常通り営業開始するもののこの18番の卓は凶と忌み嫌われ誰も客坐らずただ興味津々と 客だの隠れた新聞記者の眼差集まる午前10時、そこに現れたは我ら日本人同胞。今年4月に「内部に多数のパレスチナ人が立てこもりイスラエル軍が包囲して 緊迫した事態が続くべツレヘムの聖誕教会」を観光旅行してしまい世界を唖然とさせた日本人で あるが、今回も周囲の眼差を浴びつつ何も知らず、恐らくは「この茶室は常連の有名人とか金持ちばかりで観光客とか入れないって噂だよ」などと呟きつつ男2 女3の仲間にて店内を覗けば中央奥に空いている卓あり。給仕恐る恐る案内すれば忌むどころか喜んで卓につく。周囲の視線のなか香港の著名なる茶室にて早茶 点心楽しむ。本日の新聞に報道される。旅行者であるからしてこの茶室での殺害事件を知らぬであろう、不知是無事、不知是好事かもしれぬが、この<まなざ し>の異常さを感じず「凶卓」に坐っていられたといふことは感性鈍きこと。
▼女優・范文雀心不全にて逝去、享年54歳。サインはVのジュン=サンダース役にて当時のドラマが偉かっ たのは子供でもなぜジュンが黒人とのハーフで辛い子ども時代を送ったのか、そこに日米安保があり黒人差別があることを知ることができたこと。ウルトラマン シリーズのなかでウルトラセブンだけは差別、公害といった問題を子どももじゅうぶんに考えることのできた教材。赤塚不二夫の漫画に見える貧困、それを覆す ほどの明るさ……昭和40年代のすばらしきテレビ、漫画の世界。
民主党党首鳩山君辞任。少年探偵団だの自民党よりも存在意義なし、と揶揄されては鳩山君辞任したところで どうしようもなし。社会主義の瓦解による冷戦構造の崩壊などいろいろ要因あるが諸悪の根源は細川殿の日本新党。気侭な殿に全く思慮なきまま雰囲気で踊らさ れる。こうなったらもう一度55年体制復活しては如何か。民主党だの自由党だのもう一度、自民、社会、民社、公明、共産という政党に戻ってみる。どうだろ うか。この戦後政治の建設なき混乱状態で、ふとテレビのニュースにてフィリピン大統領来日にて懇談される天皇陛下のお姿を見る。高円宮様のご逝去の悲しみ もあろうが公務に復帰し、通訳も通さずアロヨ大統領と和やかに懇談される姿を見て、わけのわからぬ総理などに比べ、この天皇陛下の存在こそ日本の戦後民主 主義の最大の成果ではないか、と痛感。この陛下を頂いたことは日本の唯一の救済かも知れぬ。
吉右衛門播磨屋芸術院会員に。朝日は「役柄に格調や品位があり、心の陰影をきめ細かく表現する能力に 定評がある」と。役柄に格調や品位があるのではなく播磨屋なりの格調や品格が良くも悪くも強すぎるのだが……。まぁいいか。
▼新聞各紙、昨日の読売新聞の台北電を報じて靖国神社が台湾にて賛助組織設立準備、と。同社の崇敬奉賛課長らが台湾 入りして台湾人戦没者遺族にこの崇敬奉賛会へ の参加を促し台湾支部設立の意向あり。首相小泉君の靖国参拝に加えこの動きがさらに中国、支那人社会を刺激するもの。ちなみに靖国神社には旧日本軍の台湾 人軍人と軍属約三万人のうち二万八千人が合祀されている。確かに合祀に積極的な台湾人の存在もあったろうが60年近くが経過するなかで遺族らの無関心、靖 国離れどころか反合祀の気運すら高まるのは必至でそれに歯止めをかけたい、というのが神社側か。宗教ゆえに信仰の自由もありこの靖国神社の台湾での動きな りそれを支持する台湾人の存在もけして否定されるものに非ず。しかしこういった活動と同時に合祀を希望せぬ遺族の意を汲んで合祀中止も積極的に受入れるべ き。靖国神社のサイト見ていつも思うことは純粋に神道のお社として霊を祀 るのであれば、A級戦犯を含むというに非難もあるが万霊を祀るという意味では故人の罪を赦しという解釈も可能でないわけではなし。ただし何故に資料のペー ジで神拝の方法、出産から厄払い人生儀礼に続き、神道の基礎知識として「国歌と国旗の知識」が出てきてしまふの か、まことに残念。崇高なる自然崇拝の宗教が国家主義などといふ偏狭なる思想に囲われてしまふことの悲しさ。
▼上述の記事読もうと珍しく読売新聞読めば社説にて「言論妨害は芽のうちに摘み取れ」と読売何を血迷ったか と思えば立川にて開催された国際交流行事にて予定されていた台湾出身の評論家金美齢の講演が中止された、と。中国人の反対あり混乱 を恐れた民間の主催団体が応じる。読売は言論の自由は民主主義の原点であり台湾問題も意見が様々あり議論し考えることが大切、と真当だが、金美齢となると 台湾独立主義者であることはいいとしても李登輝訪日の実質的フィクサーであり小林よりのりだの新しい歴史教科書など政治的背景あり、今回の講演中止が単に 中国側の反発恐れたものなのか、金美齢の講演を予定したものの金美齢参画することによりその背景にある政治勢力にこの国際交流行事が利用されることを恐れ ての配慮だったのか、かなり微妙なところ。ただし読売社説は「こうした言論封じ込めはこれまでもあった」として列挙するのは92年に護憲勢力の反対による 上坂冬子の新潟公演じゃなった講演、97年の櫻井よし子の従軍慰安婦についての公演じゃなかった講演が「人権」を掲げる団体により妨害されたこと(やっぱりすごいなぁ、讀売、こんな新聞とてもカネ出して読む気にはなれず)。護憲勢力と人権団体は読売のいう言論 の自由を脅かす危険な存在なのだ!。でこの社説は「金さんは、今回の事件について「自立していない日本の象徴ではないか」と厳しく指摘している」として 「小さな綻びも放置してはなるまい。そのまま見過ごしていけば全体主義につながることになりかねない」と警句。ごもっとも。ただしこの金美齢だの小林よし のりらとともに「新しい歴史教科書」のノリにて自立してゆけはそれこそ全体主義