富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十二月初二日(月)曇。S氏より電話あり雑談にて余の放出した書籍を獲た、と。書籍拙家に残すには場 所が足りず読了の本多く処分するがバザー等に出す本も少なくなし。S氏バザーにて三島由紀夫書簡集と美輪明宏『紫の履歴書』の二冊を獲て自宅に戻り開いた ところ三島書簡に余の不覚ながら紀伊国屋の伝票入っていたそうでその伝票には偶然にも『紫の履歴書』も書かれており『紫の履歴書』の奥付には富柏村の蔵書 印まであり、と(笑)。きちんと本を調べぬまま迂闊にバザーになど本を供するものでなし。富柏村が著名でもあれば本に価値でも出ようが。S氏曰くどちらも 貴重なる本にて放出は勿体ない、と。確かにそうだが読了の本を全て手許に置いては拙家に厳しくせめてこの日剩に忘備を認めた書籍は処分するがS氏これらの 本はもう手放さず、と。それもまた好事。S氏、谷保にお住まいにて偶然にも余が89年頃寄寓せしN兄の谷保の邸にも近く偶然にもこのサイトをお知りになり 作者がS氏と係り浅からぬ余と察せられ、今度はこの本を2冊入手されるなど奇縁なり。書籍といえば紀伊国屋より連絡あり注文せし『北京の中江丑吉』の書籍 について裏表紙の汚れあり美麗本の手配をしたが出版社においても品切れ・重版未定との事でつきましては1割引きにて提供と。謝まられても寧ろこの本が入手 できることだけでも幸い。謝辞送る。この本、10月に北京にて護国寺のあたりいくつか中江丑吉の生活せし周囲を歩き10年以上前に『中江丑吉書簡集』読ん だのみだったためふと検索して見つけた書籍。暮時に尖東のホテル日航、楼上のバーにてA氏と密談。いくら黄昏の夜景をお楽しみくださいとて店内一切明かり 灯さず開業前かと一旦引揚げかかり薄暗き店内に人影あり営業中と知った次第。麒麟麦酒の秋味なる麦酒飲み風味合わず。このバーの給仕、麦酒の注ぎ方など香 港にてはかなり秀逸。晩に尖沙咀星光行の金島燕窩潮州料理にて会食。竹笙海蝦丸湯、川椒鶏、豆苗と鮑、潮州什会炸麺で主菜は当然のことながら季節の終わり の上海大閘蝦。今年は上海蟹の当たり年にてしかも不景気にて比較的廉価、確かに旬の黄油蟹にはかなわぬが紹興酒に酔いつつ肉厚の雄蟹は美味。給仕頭のL氏 の仕切りも紹興酒に糖梅入れるか否かなどと野暮なこと尋ねぬ女給もご立派。風邪直らず終って湯治。賈英華『最後の宦官秘聞―ラストエンペラー溥儀に仕え て』日本放送出版協会読み始める。