富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十月一日(火)国慶節なり。余に国家を祝賀するほどの知性はなし。 H夫妻の主催で10名ほどにてMcLehose Trailの3段15kmほど歩いての山登り下り。中野のY君より最近ジムにて大流行りとチタンネックレスなるもの贈られそれをH夫妻に見せると実はこのファイルドなる会社がH夫妻の京都の家のすぐそばにて数年前からH夫妻はファイ ルドマニアであることを知る。何事も信じ易き性格にて、昨日よりこれを首にして確かに肩凝りが軽くなった!と言いたきところながら馬鹿にされるのを知って おり躊躇。晝に3段終わり4段に進むH夫妻らと別れバスにて馬鞍山、タクシーで沙田の競馬場。国慶盃、正蝦王(Allan、Marwing)が一番人気な がらどうしても兄蝦に比べるとこの正蝦と快蝦は線が細く見え赤胆福星(Size/Dye)に賭け、有本銭とW氏の持ち馬・新力軍と組合わせるが結局、蝦が 一着、二着に有本銭、赤胆福星は三着。順当といえば順当か。他後半レースには御林軍、緑色世紀、自家飛、祝福など今年注目株が出て安定した力を見せ本格的 なシーズンに入ったことを実感。あまり荒れず久々にどうにか回収。晩に国慶節祝賀の花火。折からの雨空に、また引っ越してかつては自室から花火一望したも のが方角が異なり今後花火見えず。深夜、橋本治の三島本(三島論とはいふまひ)読む。
▼昨日の信報の専欄にて林行止、日本経済の厳しい現実の数字を密に挙げて 結論として曰くは景気回復を図るべく産業再編など構造的な体質改善、抜本的改革が提示されぬままデフレで産業経済が萎縮してしまっているなか「今回の小泉 内閣改造によって公的資金導入による銀行不良債権処理「だけ」がなされても景気が上向くはずもなく唯これが(再建困難と判定された企業の)倒産狂潮と80 万人から180万人の失業を生じさせ社会は恐慌状態となり与党自民党は支持を失い小泉の存続も在りえず」と。このような見せかけの改革では拙いことを香港 政府は見習え、というのが林行止の主張。ではそうなった場合に政権交代か。民主党はといへば朝日夕刊の地球防衛家のヒトビトしりあがり寿)にて学芸会の 舞台にて劇演じる出演児童二人が「誰も見ていないぞ」「よっぽど劇がつまらないんだ」と気がつき舞台で喧嘩となったら観衆が盛り上がり「ウチワもめになっ たら注目された」「まるで民主党だ」と揶揄される始末。朝日の社説は「人事権をもつ首相が古臭い手間を省き一気に決めてしまう。年功序列や派閥順送りの人 事を排するために、こうした手法がこれからも定着することが望ましい」といふが若しこの手法は失敗した場合にもはや自民党的な年功序列や派閥順送りにも戻 れず、かといって議院内閣制の中で英国的な不文律のConstitution(政権がいずれの党に移行してもけして変わらぬ国のかたち、とでも云おうか) があるわけでもなく米国型の大統領交替による一掃人事に適うだけの人材登用ができるわけでもなし。お先真っ暗。
▼昨日のSouth China Morning PostにBob Allcockなる香港政府のお抱え御用弁護士論説を呈し基本法23条の法制化によって言論の自由は侵害されぬという主張するが一読して驚愕せしは、言論 の自由がこの法令により制限される例として「中国が他国と戦争状態になった時に香港永久居民がその敵のプロパガンダを扇動した場合は敵を支援したこと」つ まり国家転覆に寄与したこととなり、この法の対象となる、というような例を挙げる。国家が国家の名の下に戦争などといった集団的狂気に走る時こそ言論、思 想信条の自由が確保されるべきであり、米国ですらチョムスキー先生のように政府の軍事行動を糾弾しても罪にならぬが、これではまさに昭和20年までの日本 と形相を同じくするものなり。民主党党首・李柱銘は本日の『信報』とSCMP紙とに投稿し、そもそも今回の基本法23条による起草の問題は立法会の委員会 の席上、議員より保安局長・葉劉淑儀に何度も質問がされたようになぜ白紙草案(White Bill)として市民に意見を聴く提案とせず保安局が強引に藍紙草案(Blue Print)にしたのか、ということにて、葉はそれに対して「青色の何がいけないのか。青色でもみなさんが読むことはできる。重要なのは内容であり紙の色 ではない」と宣い「内容のわからないタクシー運転手、ウェイター、マクドナルドの店員とこの23条について私と討論しろ、というのか。草案は議員、法律家 や学者など専門家がすでに内容に通じている」と応えている。李柱銘この施政に対してこそ市民は自らの自由を守るため意見を言うべき、と。明らかに<帝国> なるものが社会を覆う現実なり。