富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

九月二十日(金)薄曇。稚内のI先生より67年発行の『香港台北いい店うまい店』(文藝春秋)のカバー写真、奥付などファイル受領。数日前日剩に綴りし女男爵なる異称につき蛙鳴さんより「Baronessは日本では男爵夫人と故意に誤訳されることが通例であるようです」と報せあり。「不正確ではありますが「女男爵」じゃあ小説などの文章のなかではうきますもんね」と。確かに。調べればやはり具体的あり。明治の日本に於て女性が爵位給わることなど想像に難し、で男爵かと察するが何事にも正確期すべきと広辞苑査べれば男爵は「公、侯、伯、子、男爵の五等爵の第五」と誰でも知る記述しかなし。困った時の大言海見でばこの爵位はシナにて周!の時代に制定されたる爵位。それを明治に華族の階級化のために輸入、と。「本朝ニテモ近年華族ニ五等ノ爵ヲ給ハリ」と明治が近年たる大言海誠に愉快。周の時代からの爵位とあっては二十世紀の末に英国政府から女性一人がBaronessなる称号給わりしところで称号改めるは今更か。ちなみにサッチャー夫人も女男爵なり。湯浴みしつつアロマ焚きつつ酒を飲みフジ子ヘミング弾くリスト聴きいて荷風の日記読む。
▼Far Eastern Economic Review誌今週号(26Sep)に中国のインターネット弾圧に関する興味深き記事あり。GoogleAltavistaなどの検索につながらぬ現状一昨日の本日剩にても述べたるが同記事によれば七月にYahoo.com中国政府とのPublic Pledge on Self-Disipline for the China Internet Industryなる項目締結しYahoo中国にて閲覧可能とする代価として中国政府の意向に沿うことを確約せしものなり。北京に会社をもつ西側の電脳専門家によれば中国政府のこのインターネット統制のためのコストも膨大にて今後中国国内にてインターネット利用者増大するに比例してこの統制コストも激増せざるを得ず、と。また数カ月前北京にて多くの焼死者だしたるインターネットカフヱ火災を契機にインターネットカフヱの統制も急務。ちなみに中国政府どのようにインターネット統制するかといえば基本はMicrosoft社のProxy Server2.0或いは他の企業用firewallソフトと同程度のものにて、本来はサーバーにおいて黒客(ハッカー)などの侵入防御する機能ながら多少の創造力あらばこれを用いて国家公安に関する内容を統制することも可能なり、と。では現実にはどのようなサイトが中国にとって国家騒乱の元凶とされるかといえばハーバード大学の研究者によるフィルターにてその反革命的サイトの検索が可能にて法輪功Playboyアムネスティ(見てふと思ったがこの本部サイトに比べアムネスティ日本のサイトちょっとノリが白夜書房っぽくないか?)、チベット独立運動などが不可、されどCIA傘下のサイト、米国に本部のある人権団体Human Rights in Chinaや米国政府のプロパガンダ放送であるRadio Free Asiaなどは放免。つまり統制も徹底できておらぬ、といふこと。それならば意固地に莫大なる資金と労力を浪費し統制にあたり寧ろ北京政府反感をかうのなら止めたほうがマシ。中国共産党の最大の敵はインターネットによる情報流通なり。いずれにせよこうして中国政府が弾圧せしサイトがすべて閲覧可能であるだけ香港はまだ自由か……。
▼昨年の中秋に中国国内で重さで実に30万屯の月餅が製造されたそうでいったい幾つに当るのかと手許にあった月餅を量れば185gにて、つまり30万屯は16億余個。月餅の習慣なき民も少なからず人口の凡そ1.4倍とは恐れ入るが中国も香港同様に月餅の鵞鳥のヨード卵身体に悪しと避ける風潮あり実際に贈答のみで食されぬ量もかなり、と。かつて栄養足りなき時代は年に一度中秋に滋養にと有難がられた月餅が忌み嫌われし飽食の時代。